“キーボードレス”の運用管理に近づく「自動化」への道すじとは?運用のスピードと質を向上せよ!

仮想化技術やクラウドコンピューティングの導入が進んだ今、企業システムの運用管理手法は複雑さを増している。そうした中で運用の質を落とさないためには、人手の必要がないオペレーションを自動化することが重要だ。本稿では、運用の標準化から自動化にいたるまでの「成功の方程式」を順を追って紹介しよう。

» 2013年10月03日 10時00分 公開
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 サーバ仮想化技術の普及により、企業システムの運用管理は大きく様変わりしつつある。従来なら、管理者は自分が担当するシステムを構成しているハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどを見張っていれば十分だった。しかし複数のシステムが仮想化された1つのITリソースに“相乗り”するようになった今、従来の運用手法で対応するのは難しくなりつつある。

 そうした中で運用の質を落とさないためには、システムの運用監視状況を「見える化」し、これまで個々の管理者のスキルに依存していた運用管理のノウハウを社内で共有して標準化することが求められる。そのうえで、人手を必要としない運用管理プロセスを「自動化」すれば、オペレーションミスによる障害発生リスクを最小化できる。

 ここまでは、前回の記事でも紹介した通りである。今回はその具体的なステップについて掘り下げて見ていこう。

運用の質を向上させるには「ノウハウの共有」が必要

 人手を必要としない運用管理作業――例えば各機器のパラメータ入力などは、自動化によってオペレーションミスを減らすことができる。とはいえ、企業によって異なる業務システムの運用をいきなり自動化するのは現実的ではない。自動化に向けた第一歩は、システムの運用監視状況の「見える化」だ。

 システム監視を例に説明しよう。仮想環境と物理環境が混在している複雑なシステムの監視では、機器やソフトウェアごとに異なるメッセージログを読み解いて重要度を判断するのに高度なスキルが必要となる。そこで、統合監視サーバによってメッセージのフォーマットを統一し、運用に合わせた基準で重要度を設定すれば、管理者ごとのスキルに依存することなく重要度をすばやく判断できるようになる。

 また、監視だけではなく運用の見える化も重要だ。システム運用には定常運用のほか、障害時運用、災害時運用、メンテナンス運用などさまざまな形態がある。それらのインシデントを統合監視サーバで一元管理すれば、オペレーションの仕方を社内で共有できる。

 ここまで行えば、管理者ごとに異なっていた運用管理のノウハウを共通の手順書にまとめ、社内で標準化できる。すなわち、管理者のスキルや経験を問わず同じ品質で対応できるようになるわけだ。そのうえで、人手を必要としない一部のオペレーションを自動化すれば、オペレーションミスに悩まされないシステム運用管理体制を実現できる。

photo 運用自動化までのステップ(出典:日立製作所)

 こうした「見える化」から「共有化」「標準化」「自動化」までを統合的に支援するのが、日立製作所の統合システム運用管理「JP1」である。JP1なら、システムの事象管理からインシデントの一元管理までを実現し、さらにはインシデントに対する作業手順をナビゲーションで共有化し、定型的なオペレーションを「JP1/Automatic Operation」(JP1/AO)で自動化できる。これら一連の流れを製品間でシームレスに連携することで、IT運用を効率化できるのである。

photo 運用プロセス間の連携によりIT運用を効率化(出典:日立製作所)※クリックで拡大できます

 実際、日立製作所が自社のデータセンターの運用管理プロセスに運用手順のナビゲーションとオペレーションの自動化を適用した結果、ジョブの実行予定を作成してオペレーターが実行結果を確認するまでのオペレーションを自動化し、作業時間を1カ月当たり約43%削減できたという。

どこまで自動化できるのか――カギは“要件定義”

 とはいえ、ユーザー企業にとっては「うちの場合はどこまで自動化できるのか分からない」といった不安の声もあるだろう。そもそも「自社で自動化製品を組み込むのはハードルが高い」と感じる企業も多いはずだ。自動化システムを構築するにはどのようなステップが必要なのか――JP1/AOを用いた運用自動化ソリューション「JP1テクニカルサービス@AOplus」(AOplus)を提供している伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の渥美秀彦氏に聞いた。

photo 伊藤忠テクノソリューションズの渥美秀彦氏(ITエンジニアリング室インフラソリューション技術第1部ITシステムマネジメント技術課)

 AOplusは、CTCグループ内で顧客企業の運用関連事業を専門に扱うCTCシステムサービス(CTCS) が提供している。「いわばCTCの製品販売力とCTCSの運用ノウハウ・スキルを融合させたサービスだ」と渥美氏は説明する。

 渥美氏によれば、ユーザー企業がシステム運用自動化製品を導入するに当たって、最も気にするのは「事前に成果が見えづらい」点だ。そこでAOplusではデモンストレーションのほか、導入前に「自動化できる点」と「できない点」を明確するアセスメント(要件定義)サービスも提供している。

 「JP1/AOのような自動化製品の導入では、顧客にとって要件定義が最重要プロセスとなります。顧客の中には『全てのシステム運用管理業務を自動化できる』というイメージを抱いている場合も少なくありませんが、実際に業務の切り分けを行ってみると、自動化できるのは多くてオペレーション全体の3割程度という場合が多いのです」(渥美氏)

 ただし、こうした要件定義プロセスは、徹底しようとすればいくらでもコストと時間をかけられてしまう難点もある。そこでAOplusは、JP1/AOによって自動化できる業務を一覧にしたヒアリングシートを顧客に埋めてもらうことで自動化する点を決定し、想定される成果とコストの目安を事前に提示しているという。

 「AOplusは、自動化できるポイントが定型化されている分、お客様の要望に対して事前に成果をコミットできるのが強みです」と渥美氏。一連の要件定義にかかる期間は顧客のシステム環境によるものの、多くの場合は2週間から1カ月程度で完了するという。

自動化コンテンツの作成から運用までサポート

 要件定義の次のステップは、ヒアリングシートに基づき実際に自動化システムを構築することだ。AOplusではJP1/AOのセットアップのほか、自動化したオペレーションを各機器やソフトウェアなどに指示する「自動化コンテンツ」の作成サービスも提供している。

 「JP1/AOにはもともと複数の自動化コンテンツが用意されていますが、当然のことながら全ての業務システムを網羅しているわけではありません。ユーザー自身がGUIで自動化コンテンツを作成できる機能もありますが、独自ツールなどを自動化したい場合は、本格的な開発が必要となるケースもあります。当社はAOplusの提供を通じ、そうした複雑な自動化コンテンツの作成も代行しています」(渥美氏)

 渥美氏によれば、AOplusによる運用自動化が特に効果的なのは(1)ITインフラの定期的/定型的な運用作業、(2)ITサービス/インフラに関する障害対応――の2つ。これらのオペレーションの“属人化”を排除し、オペレーションミスを減らして運用品質を向上させたいというニーズが高いという。

photo 運用自動化が効果的な業務領域(出典:CTC)

 AOPlusは、要件定義からセットアップ、自動化コンテンツの作成だけにとどまらず、リリース後も同社のエンジニアによる運用サポートも用意している。価格も最低60万円からと、海外産ツールなどを使ったシステム運用自動化ソリューションなどと比べて安価な設定となっている。

「キーボードレス」で運用品質を向上へ

 CTCSはAOplusを提供する中で、顧客から運用自動化に関するさまざまな要望を受けているという。中でも「『キーボード操作を極力なくしてオペレーションミスを減らし、運用の品質を上げたい』といった声が多く寄せられています」と渥美氏は話す。

 「AOplusは“キーボードレスの運用”を目指したサービスですが、100%の形での実現は現実的ではありません。ただし、AOplusでは自動化の手順を『Web手順書』として顧客に納品するオプションがあります。このサービスでは、自動化できない部分の運用手順もWebブラウザ上でのナビゲーション機能を通じてCTCSが提供するので、ユーザーはマウス操作を中心としたスムーズな運用オペレーションを実現できます」(渥美氏)

 同社は今後、AOplusの機能をさらに拡張した後継サービスを2013年度内にリリースする考えだ。新バージョンでは「プライベートクラウド環境における全てのオペレーション業務をAOplusのユーザーインタフェースで一元的に管理したい」と渥美氏は話す。その背景として、マルチベンダー環境での仮想マシンの運用管理なども自動化できるようにしたいという。

 「昨今、ITベンダーはいわゆる“垂直統合型製品”を提供しており、各社ともSI業務を含めた運用自動化を訴求しています。ただ、顧客にとっては『ハードウェアからソフトウェアまでの全てを特定のベンダーに縛られたくない』というのが本音だと思います。当社の提供するAOplusは、マルチベンダー環境における運用自動化を提供しており、近い将来においては主要なSI業務の自動化までをも網羅したパッケージとして提供する予定です」(渥美氏)

 マルチベンダー環境での運用自動化に当たっては「オープンなミドルウェアであるJP1が最適でした」と渥美氏。加えて、JP1が運用管理製品として持つ知名度や実績、信頼性なども自社ソリューションのベースとして採用する理由になったという。

 AOplusは2012年10月のリリースから約1年たち、「想定以上の引き合いがある」と渥美氏は話す。同社は自社のコンサルティング体制とJP1を組み合わせたAOplusの提供を通じ、顧客のシステム運用自動化を強力にサポートしていく考えだ。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年11月2日

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