新規ビジネス創出を加速するIoT時代に最適化したプロトコルとアプライアンス

ITの技術革新が急速な進展を見せる中、モノとモノとのデータ通信が活気を帯びている。いわゆる「Internet of Things」や「M2M」の時代が本格的に到来しつつある。こうした中、競争力強化に向け、既存システムとM2Mテクノロジーとの連携に多くの企業が本腰を入れ始めた。ただし、M2Mは無数のデバイスが多頻度で通信するため、一般的な通信プロトコルであるHTTPでは課題が多い。そこで今、新時代の通信プロコトルとして脚光を集めているのが「MQTT」であり、その利用を後押しすべくIBMが専用アプライアンス製品の提供に乗り出した。

» 2014年02月24日 10時00分 公開
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MQTTとは何か?

 今、企業のシステム部門は大きな変革に迫られている。これまで、企業システムはさまざまな業務目的の下で個別に整備され、運用も独立して行われてきた。だが、近年のSNSなどの登場と急速な普及を背景に、情報活用やビジネス強化の観点から、それらと既存の基幹システムとの密な連携がシステム部門に強く求められるようになっているのだ。すなわち、基幹システムだけの面倒を見る時代は終わったのである。

 さらに現在、注目を集めているのが、センサデータやマシンデータによるデータ増大を背景に登場した「Internet of Things(IoT)」、「M2M(Machine to Machine)」といったトレンドである。その中核を担うモバイルは今後、成長が見込まれる分野であり、自動車をはじめネットワークに接続されるデバイスは飛躍的に増加すると見込まれている。そうした中、M2Mの秘める可能性は極めて大きく、無数のデバイスによる相互連携を通じた新ビジネスの創出も多くの企業から期待されている。

 ただし課題もある。M2Mでは、場合によっては数百万ものデバイスが多頻度でデータをやりとりするため、大量データの処理が必須要件となる。また、リアルタイム性が求められる用途も多く、通信の信頼性の向上が不可欠だ。だが、現状で一般的な通信プロトコルであるHTTPでは、これらの要求に応えることは技術的に困難な場合がある。

 この課題解決に向けた技術が、M2Mのためのプロトコルと呼ぶべき「MQ Telemetry Transport(MQTT)」だ。では、果たしてMQTTとはどのようなものなのか。また、MQTTによってM2Mの現状課題がどのように解決されるのか。

通信の効率性はHTTPと桁違い

 MQTTはIBMが開発した通信ソフトウェアを源流とする、通信プロトコル標準である。その一番の特徴は、通信の圧倒的な軽さだ。Android端末を用いたHTTPとMQTTの通信テストの結果を見ても、受信メッセージ数ではMQTTがHTTPを2桁も上回るほどというデータがある。メッセージ送信数でもMQTTが圧倒的な優位性を誇る。

日本IBM ソフトウェア事業 WebSphere テクニカル・セールス&ソリューションズ ICP-エグゼクティブITSの鈴木徹氏 日本IBM ソフトウェア事業 WebSphere テクニカル・セールス&ソリューションズ ICP-エグゼクティブITSの鈴木徹氏

 では、MQTTの通信はなぜこれほど高速なのか。理由の1つは、MQTTの通信パケットはヘッダーが2バイトしかなく、同じパケット長であればHTTPより多くのデータを送れることだ。また、2つ目として、通信自体の効率の良さもある。HTTPでは通信開始時にリクエストを送信するが、相手の返事がないために何度もリクエストを送ることもしばしば。だが、MQTTでは相手と接続後に、サーバに蓄積したデータを一気に送り届ける方法を採用。通信効率の良さ故に消費電力もHTTPより大幅に削減されているのである。

 また、非同期かつ双方向通信である点でもHTTPと一線を画す。日本IBMのソフトウェア事業 WebSphere テクニカル・セールス&ソリューションズでICP-エグゼクティブITSを務める鈴木徹氏は、「確かにリアルタイム通信よりもデータの到着が遅れるのは否めません。だが、その差はわずかであり、ビジネスへの影響はないことが多いのです。MQTTはHTTPに代わる通信プロトコルの選択肢に十分なり得るのです」と解説する。

 M2M向け機能がプロトコルレベルでいくつも実装されている点もメリットだが、とりわけ主要な機能といえるのが、柔軟な情報のプッシュ型伝達を可能にする、「パブリッシュ/サブクライブ型メッセージ通知」である。そこでキーとなるのは情報の流れを管理する「トピック」という概念だ。

1度だけの情報発信ですべての端末に漏れなく配信

 従来、HTTPでは大量のデバイスすべてに情報配信する際に、各デバイスと個別に通信を行っていた。対して、MQTTでは、まず情報の発信側である「パブリッシャー」がMQTTサーバに階層構造化されたメッセージを配信。これを受け、受信側の「サブスクライバ―」が事前登録したトピックを基に、MQTTサーバが受け取ったメッセージのすべてについて、受信すべきデバイスを判断し情報を転送する。トピックの指定は、ワイルド・カードのように、一部の情報を含んでいれば、受信するといったような指定が可能である。つまり、発信側は1度の送信で、メッセージを要求している端末すべてに情報を配信できるのである。これにより、受信者側の要求に応じた対応が、受信者ごとに行うことなく、一度に送信できるメリットがある。送信側と受信側の立場を、いわば逆転させることももちろん可能だ。

 無線通信はセッション断が発生しがちだが、その際にはMQTTサーバがクライアントを記憶しておくことで、再接続時には各種設定を基に、該当クライアント宛に配信されるはずであった全メッセージや、最新メッセージだけを送信することもできる。メッセージの送達保障レベルを、「1回だけ送信する」から「必ず正確に1回だけ送信する」まで段階的に設定でき、HTTPでは難しかったサービスレベルの指定も実現されている。

 標準仕様のため、デバイス開発コスト、ひいてはシステム導入コストの削減も見込めるとともに、各種ライブラリが充実している点も喜ばしいところ。それらの品質の高さはIBM自身が手掛けたことからも容易に理解できよう。JavaやCによる開発にも対応。シンプルなコードで実装できる点を評価する声も多い。

 「例えば、1秒に10回もメッセージが配信されるような株式売買用プログラムの場合、通信はMQTTで、表示はWebソケットを利用することで、得意領域の相互補完も容易に行えるのです」(鈴木氏)

パブリッシュ/サブクライブ型メッセージ通知とトピック パブリッシュ/サブクライブ型メッセージ通知とトピック

MQTTに関するIBMの知見をアプライアンスで一括提供

 MQTTのメリットはこのように多岐にわたるが、HTTPと同様、セキュリティや可用性などへの配慮は欠かせない。不特性多数のデバイスからのアクセスを社内のシステムに繋ぐため、これらの要件を満たすことの重要性は周知のことであるが、これらをきちんと実装していくためには、ノウハウと作り込みが必要となる。

 これに対するIBMのアプローチが、MQTT通信に必要とされるハードウェアと運用ノウハウなどの一体提供である。2013年6月にIBMが発表したMQTTメッセージ処理に最適化されたアプライアンス製品「IBM MessageSight」がまさにそれだ。

 MessageSightはMQTTの通信の軽量さが高いレベルで具現化されている。1台で100万台のクライアントの同時接続に対応でき、秒間1600万ものメッセージを処理できる。

 「HTTPSと比較しても93倍高速で、消費電力は10分の1に、通信効率の良さから帯域使用量を8分の1にまで削減できます。M2Mでは通信バーストが発生しやすいことが、容量設計を困難にさせていますが、MessageSightであれば十分に対応可能。その処理能力の高さから、OSSとサーバで独自に環境を整備するよりも、導入コストを抑えられることも多いのです」(鈴木氏)

 ファームウェアとして実装されたノウハウも多岐にわたる。「セキュリティ」はもちろん、「構成管理」、「バックエンド接続」、「高可用性」、「運用管理」など、構成や運用に必要とされるノウハウを、IBMの長年の知見を基にポリシーベースの機能としてまとめ上げた。また、デフォルトでの事前設定やチューニングにより、稼働に要する時間はわずか約30分とセットアップも極めて容易だ。さらに、IBMが各種アプライアンスの開発で蓄積してきたセキュリティのノウハウも製品に反映されていて、DMZ(DeMilitarized Zone)への設置により、製品が到着したその日から安心して利用できる。

IBMのメッセージング・テクノロジー IBMのメッセージング・テクノロジー

IT部門はMQTTの先導役として挑戦を!

 一方、既存システムとの連携を抜きには、M2Mの価値が大きく削がれてしまう。そこで、MessageSightではバックエンドシステムとの接続にもこだわって、高い品質での連携を提供していている。さらに、情報システム間での循環を堅持すべく、冗長構成によってQoS (Quality of Service)を基にしたメッセージの確実な到着にも配慮を払った。これにより、OSSとサーバによる構成と比べて、はるかに高い可用性が実現されているという。

 日本IBMはMQTTやMessageSightの良さをより広く周知すべく、各種セミナーの開催など啓蒙活動に精力的に取り組んでいる。また、開発目的には無償で仮想アプライアンスを提供、同社の開発者向けサイト「developerWorks」で解説などを行っている。こうした地道な努力により、ここにきて業種/業態を問わず、MessageSightへの問い合わせがいくつも寄せられるようになっているという。

 「“MQTTとは何か”、“MessageSightの詳細を知りたい”、“すぐにでもビジネスに応用したい”など、企業により温度差は確かにあります。ただし、MessageSightの情報提供を継続することで、需要が開花すると確信しています」(鈴木氏)

 MQTTを活用したM2Mの成功事例は既に海外ではいくつも存在する。1万7000kmものパイプラインの管理にも活用したケースでは、衛星経由で収集される3万個のセンサー情報から、万一の場合は数秒で元栓を閉める仕組みを実現した。また、医療機関におけるペースメーカーの事例では、装着している患者の体調を病院から検知できるようにし、異変があった場合にはすぐに対応できるようにする、といった取り組みなど、その内容もバラエティに富む。

 「MQTTは技術的なボトムアップに加え、ビジネス視点からのトップダウンで普及する可能性も大きいです。もちろん、利用に際しては従来からのITの経験は大切な要素。だからこそ、IT部門には社内的なMQTTの先導役として、勇気をもって各種のチャレンジに取り組んでほしいです」(鈴木氏)

 MQTTとMessageSightが切り拓く新たな情報活用の世界。企業ビジネス、そして社会のあり方を大きく変革する可能性を秘めているといえるだろう。

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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2014年3月23日

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