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» 2014年05月15日 10時00分 UPDATE

IBM Cloud Vision 2014 レポート:ビジネス価値の創造と果敢な一手への原動力になる「ダイナミック・クラウド」とは

昨年にIaaS事業者の米SoftLayerを買収し、クラウド事業のさらなる強化に向けて大きく舵を切ったIBM。そしてこのたび、PaaS基盤の開発環境「BlueMix」を日本でも発表するなど、着実に事業のポートフォリオを広げている。本稿では日本IBMが主催したイベント「IBM Cloud Vision 2014」から、同社が推進するクラウド戦略をひも解いていく。

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170億ドルが期待されるクラウド市場

日本IBMのマーティン・イェッター社長 日本IBMのマーティン・イェッター社長

 日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は4月16日、クラウドでビジネス変革を目指す企業のIT部門およびビジネス部門に向けたセミナーイベント「IBM Cloud Vision 2014」を開催した。オープニングに登場した日本IBM 代表取締役社長のマーティン・イェッター氏は挨拶の中で、「現在、3つの変化に注目している。まずデータの活用によるビジネスのやり方の変化。次にクラウドによるビジネスモデルの変革の加速。最後にエンゲージメントであり、モバイルやソーシャルによる人やモノのつながりの変化である」と語った。

 中でも重要なのがクラウドで、クラウドによるビジネスモデルの変革により約170億ドルの効果が期待できるという。イェッター氏は、「既存のIT資産とクラウドを連携させたダイナミック・ハイブリッド・クラウド、オンプレミス環境と変わらないセキュアなクラウドの管理、ビジネスモデルの変革の促進の3つが重要であり、IBMではお客様に必要な支援を提供していく」と力を込めた。

IBMクラウドが企業の変革を支援

 続いての基調講演に登場したのは、米IBM ソフトウェア&クラウド・ソリューション 上級副社長のロバート・ルブラン氏だ。ルブラン氏は、「クラウド:成長と変革の原動力」と題した講演の中で、IBMのクラウド・ソリューションが企業の成長と変革を支援することを強調した。

 現在、多くの企業が求めているのは、モバイルやソーシャルのさらなる活用、顧客にリーチするアナリティクス、そして、リアルタイムの即答性である。IBMでは、いつでも、どこでも、知識や情報を共有し、接点を広げていく新しいモデルを「システム・オブ・エンゲージメント(Systems of Engagement)」と呼んでいる。

米IBM ソフトウェア&クラウド・ソリューション 上級副社長のロバート・ルブラン氏 米IBM ソフトウェア&クラウド・ソリューション 上級副社長のロバート・ルブラン氏

 一方で、ERP(統合業務パッケージ)やCRM(顧客情報管理)、データベースなど、ITインフラやデータ蓄積、ビジネスプロセスを最適化するための従来型のモデルが「システム・オブ・レコード(Systems of Record)」である。ルブラン氏は、「Systems of EngagementとSystems of Recordをクラウド上で組み合わせたハイブリッド環境により、ビジネスモデルの変化を促進できる」と話す。

 IBMでは、IaaSからPaaS、SaaS、BPaaS(Business Process as a Service)まで、企業が必要なクラウド環境をすべて提供しており、それらを最適に組み合わせたり、組み立てたりすることで新たな価値を創出する。これを「コンポーザブル・ビジネス」と呼び、継続的なプロセスの変革や改善、洞察に基づく迅速かつ最善の意思決定、市場投入スピードの加速などを可能にするとしている。

 コンポーザブル・ビジネスを実践したオーストラリアのデジタル広告会社であるThe Loft Groupでは、モバイル対応のデジタル学習プラットフォームを新たなグローバル市場に展開するために、3〜5年かかると見込んでいたが、IBMのクラウド基盤「IBM SoftLayer」を活用することでわずか数カ月に短縮した。

 ルブラン氏は、「コンポーザブル・ビジネスの成功のカギとなるのが、ダイナミック・クラウドである。ダイナミック・クラウドにより、変化し続けるビジネス環境に適応し、変革のスピードを加速できる。このとき、あらゆる種類のクラウドとITをダイナミックに連携し、それらをオーケストレーションすることが必要になる」と述べる。

 またクラウドの活用により、開発者、事業部門、ITマネジャーそれぞれの仕事の進め方も変化する。例えば、開発者は、利用できるサービスメニューからアプリケーションの設計と組み立てをアジャイルに行うことが今求められている。そうした彼らにとって新たな可能性となるコンポーザブルな開発環境が「BlueMix」である。

 クラウドで提供されるBlueMixは、Javaをはじめとする複数の言語に対応し、開発したアプリケーションをさまざまなサービスと組み合わせることが可能なもの。ステージで行われたBlueMixのデモでは、仮想のスポーツ用品店の店員が、タブレット端末を利用して、商品の説明から在庫の確認、支払い、そして担当営業への通知までを可能にする仕組みを、短時間かつ容易に構築してみせた。

 実際の先進ユーザー事例も紹介。米国の郵便関連機器メーカーであるPitney Bowesは、BlueMixを使って新しいハイブリッド型クラウド位置情報サービスを開発。位置情報サービスやEコマースの業務処理、インターネット郵便料金、小荷物管理などのソリューションを、開発者エコシステムに公開した。これにより、世界の市場で同社のソリューションを活用した新しいサービスの実現を加速している。

 BlueMixの開発者エコシステムには、400万人以上のIBM developerWorksメンバーが参加。日本固有のコンテンツも公開され、起業家支援プログラムでスタートアップを支援している。

 ルブラン氏は、「IBMはクラウドにコミットしている。2013年にSoftLayerを約2000億円で買収し、約1200億円をかけてデータセンターを拡張した。既に7000億円以上を投資し、100以上のソフトウェアをSaaSで提供している。IBMクラウド・サービスを4万人以上のエキスパートが利用している。クラウドはビジネス成長の原動力になる」と意気込んだ。

クラウド・ファースト時代に突入、クラウドが社会インフラに!

 次に行われたパネルディスカッションでは、総務省 大臣官房審議官 情報流通行政局担当の渡辺克也氏、東芝 執行役常務の下辻成佳氏、日本IBM 取締役副社長の下野雅承氏の3人が登壇し、「ビジネスの成長エンジンとしてのクラウド」をテーマに議論した。モデレーターは野村総合研究所 情報技術本部 先端ITイノベーション部 上級研究員の城田真琴氏が務めた。

左から、城田真琴氏、渡辺克也氏、下辻成佳氏、下野雅承氏 左から、城田真琴氏、渡辺克也氏、下辻成佳氏、下野雅承氏

 東芝では、ICTの活用で社会インフラをスマート化するスマートコミュニティ事業を推進している。その一環として、事業横断的な共通基盤にクラウドを採用。下辻氏は、「2009年からクラウドに取り組んでいる。例えば、家電の付加価値サービスの提供にクラウドを活用していた。ビッグデータだけでなく、クラウドでも3V(Volume、Variety、Velocity)が重要。ICT分野において日本が世界をリードできる分野を考えることが必要であり、国境を越えた価値提供をドライブするのがクラウドになる」と話す。

 総務省では、2013年6月に現内閣が発表した「世界最先端IT国家創造宣言」に基づき、日本としてのICT戦略を策定。このICT戦略の実施責任者である渡辺氏は、「以前のIT戦略はITインフラの構築だった。現在はICTを活用した新しい価値の創造が重要。日本の知見を生かし、クラウドで高齢化や社会インフラなどの問題を解決していく。また2020年の東京オリンピックがクラウドによるICT活用のショーケースになる」と展望を示す。

 日本IBMの下野氏は、「クラウドは、単に所有か利用かではなく、アプリケーション開発の基盤となっている。これまでのICTは企業の合理化に使われてきたが、これからは企業や社会そのものを変革させる新しい活用方法が主流になる。それがクラウドやモバイル、ビッグデータを組み合わせて実現され、社会に広がっていく。一方、現場を直接的に支援できる仕組みをパートナー企業とともに確立していきたい」と強調する。

 ディスカッションの総括として城田氏は、「クラウドはもはやバズワードではなく、今や社会インフラとして定着してきた。今後、クラウド上で何をやるかを考えなければ企業の成長は見込めない。単純なコスト削減や情報系、基幹系システムでの活用から、新しいビジネスをダイナミックに創造するためのインフラ、社会をより良くするためのインフラへと、クラウドの活用は新たなステップに向かっている」とまとめた。

SoftLayerを軸にダイナミック・クラウドを実現するIBMクラウドの全貌

 変化とスピードへの対応には、コンポーザブル・ビジネスの実現が必要である。コンポーザブルとは、「組み合わせる」「組み立てる」という意味であり、多様な選択肢から最適な組み合わせを可能にするクラウド・インフラストラクチャーが重要になる。米IBM クラウド・サービス ゼネラル・マネジャーのジェームズ・コンフォート氏は、次のように述べる。

米IBM クラウド・サービス ゼネラル・マネジャーのジェームズ・コンフォート氏 米IBM クラウド・サービス ゼネラル・マネジャーのジェームズ・コンフォート氏

 「IBMでは、IaaSからPaaS、SaaS、BPaaSまで、完全なクラウド・サービス・ポートフォリオを提供する。またITマネジメント要件に対応するIBMクラウド・マネージド・サービスを統合。多彩なサービスと使いやすさを兼ね備えたクラウド・サービスを実現している。IaaSの中核技術となるのがSoftLayerとIBMマネージド・クラウド・コンピューティングサービスである」

 SoftLayerは、2013年7月にIBMに統合されたことで、データセンターの数を増やし、ネットワークを拡大している。

 米SoftLayer チーフ・ストラテジー・オフィサーのジョージ・カリディス氏は、「IBMとの統合により、ほかのクラウド・サービス・プロバイダーにはない、技術力、専門性、信頼性を提供できる。また理想的なクラウド・サービスを提供するための投資を継続し、大胆な取り組みでクラウドをビジネスとして成長させていくことができる」と話す。

クラウド&ビッグデータでビジネス変革を遂げた先進企業たち

林千晶氏(左)と江口康二氏 林千晶氏(左)と江口康二氏

 イベントの最後を飾ったのは、クラウドを活用してビジネス成果を上げている企業によるリレー・トークセッションだ。ナビゲーターであるロフトワーク 代表取締役 MITメディアラボ 所長補佐の林千晶氏は冒頭、「クラウドは、企業のみならず、都市や国家までも変革する原動力になる。クラウド活用やビッグデータ分析が日々の業務にどう貢献できるかを考えていくことが大切だ」と話す。

 最初に登場したのは、ボディケアなどのリラクゼーションサービスを提供するリラク の江口康二代表取締役だ。クラウドを導入した背景について、江口氏は、「お客様の健康管理情報のセキュアな管理と人員配置にクラウドを活用している。複数の店舗を利用するお客様に各店舗で最適なサービスを提供し、来店状況に併せて人員配置を最適化するためには情報の一元化が不可欠だった。将来的には収集したビッグデータを分析して、来店予測や空いている店舗への誘導を実現したい」と考える。

林千晶氏(左)と友澤大輔氏 林千晶氏(左)と友澤大輔氏

 2人目は、ヤフー マーケティングソリューションカンパニー マーケティングイノベーション室 室長の友澤大輔氏。ビッグデータへの取り組みについて、「ヤフーの売り上げの約半分が利益率。これを実現するのがデータ活用による日々の業務改善である。例えば、トップページの検索窓を6ピクセル拡大したり、トピックスの記事本数を増やしたりするだけで年間数億円の売上増になる。変化にはリスクも伴うが、何もやらないよりデータに基づきやってみることが重要」と友澤氏は力強く話す。

 同セッションのまとめとして、林氏は、「クラウドでコスト削減するのではなく、攻めのツールとして、いかにビジネスを強化するか、売り上げを伸ばすかが重要。またデータを活用できる人や組織の実現がこれからの企業経営のポイントと感じた」とした。


 IBMのクラウドが目指すもの、それは変化し続ける企業のビジネス環境に対して柔軟かつ迅速に適応し、経営変革のスピードをより加速していくためのプラットフォームである。そしてまた、そのプラットフォームの核となるのが、今回新たに発表されたBlueMix、およびSoftLayerであるということが、本イベントを通じて改めて示されたといえよう。

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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2014年6月14日

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