キモは“攻め”の意識改革! 富士フイルムが取り組むIT運用の極意とは

ビジネスのデジタル化が急速に進み、IT部門が担う役割は、ビジネスへ一層貢献することが期待されている。IT部門には従来からの「守り」に加え、新たな成長に直結する新事業などのための「攻め」の施策も強く求められるようになった。こうした要請にどう応えるか、富士フイルムICTソリューションズの取り組みを紹介する。

» 2017年01月16日 10時00分 公開
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 ITmedia エンタープライズ編集部が12月9日、今後のIT部門のあるべき姿をテーマにしたセミナー「ビジネスのデジタル化を進める『攻め』と『守り』のIT活用」を開催した。攻めのIT活用は長年にわたり必要性が叫ばれながら、実践に悩むIT部門は多い。攻めのITと守りのITの両立を実践している企業は、日々の業務から経営課題を解決するためのIT施策の立案までをどうこなしているのか、先進企業がその取り組みを披露した。

デジタルビジネス対応を急ピッチで推進 行動変革の動機づけが“鍵”に

富士フイルムICTソリューションズ システム事業部 ITインフラ部 兼 IT企画部 部長 柴田英樹氏 富士フイルムICTソリューションズ システム事業部 ITインフラ部 兼 IT企画部 部長の柴田英樹氏

 基調講演に登壇したのは、富士フイルムグループにあって、IT戦略の立案からシステム運用までを一手に担う、富士フイルムICTソリューションズだ。同社のシステム事業部 ITインフラ部 兼 IT企画部で部長を務める柴田英樹氏が、攻めのITへの取り組み方を紹介した。

 柴田氏によると、同グループではビジネスのデジタル化に対応すべく、現在ビッグデータ分析のためのインフラ整備や技術獲得に加え、全社での情報活用に向けた人材補強と体制作りなどを急ピッチで進めているという。

 ただし、IT部門のリソースに限りがあることはIT部門にとっての共通課題だ。そうした中、IT部門の責務を果たすために必要とされることとして柴田氏が挙げたのが、「ITによるコスト削減」と「ITによる競争力の強化」を両輪としつつ、両者への取り組み具合は状況に合わせて容易に変えられる組織作りである。

 「そのために不可欠」と柴田氏が断言するのが、現場との日頃からの密なコミュニケーションだ。現在、同社ではアジャイル開発等による開発スキルの修得に力を入れているが、これも現場の意見を聞くことで、今後のシステム整備にあたり、開発とテストの両面での期間短縮がより強く求められると判断されたからこそ。

 「営業部門や業務部門、経営層からの要求はいくつもあり、また、その時々によって重みは変わります。だからこそ変化の兆しをいち早く捉え、必要なリソース獲得に事前に動くためにもコミュニケーションが大切になるのです」と柴田氏。ひいては、頼もしい味方としての評価が高まり、より多くの相談が現場から寄せられるようになるのだという。

 だが、実現への道のりは険しい。背景には、IT部門はとかく忙しく、また、長年続いた“受け身”の仕事で、率先して動くことに多くが慣れていないことがある。こうした中、柴田氏が必要性を強調したのが、IT部門の意識変革を通じた「行動変革」だ。そのために柴田氏が提示した心得は、「自社ビジネスに貢献する」から「すべてを自分の責任として捉える」まで10か条にも及ぶ。

必要とされるIT部門の価値観
必要とされるIT部門の価値観 IT部門の意識変革を通じた行動変革が必要だと説く

 「我々は昨今、重点施策として、CRM、SFA、消費者への行動レコメンド、ワークスタイル改革などの各種の仕組みを相次ぎ取り組んできました。これらは、単に人やIT基盤が優れていから成し遂げられたわけではありません。活動の原動力は、何より現場の立場に立ち、目的・ゴールを共有し、最適なプロセス・システムに反映させようとする強い意欲。そして、意欲に火を付けるためのIT部門改革こそ、攻めの施策を実現するための“鍵”にほかならないのです」(柴田氏)

 意識に火が付けば、当然、ITスタッフの動きも変わる。その結果、IT投資の適正化や、開発により力を入れるための運用の自働化、グローバルも含めたIT機能強化のための動きが、現場から生まれるのだという。

業務を外部へ切り出す際の心得とは

SCSK ソリューション事業部門 AMO第一事業本部 エンタープライズサービス部 第三課 課長の瀬田直樹氏 SCSK ソリューション事業部門 AMO第一事業本部 エンタープライズサービス部 第三課 課長の瀬田直樹氏

 「人材やコストをITの企画やデザインに充てるための策として、運用業務のアウトソースは格好です」と話したのは、ITの総合サービスプロバイダーであるSCSKのソリューション事業部門 AMO第一事業本部 エンタープライズサービス部 第三課で課長を務める瀬田直樹氏。ただ、単純にアウトソースするだけでは、逆にコスト増につながるケースも少なくないという。

 コスト増を招く一つの要因は「フルアウトソーシング利用時のブラックボックス化」だと瀬田氏は指摘する。煩雑な作業の一切を外部に切り出せる反面、アウトソース先が、どの作業にどれだけ時間を費やしているかの把握が困難になり、コストの高止まりを招きやすいことが原因だ。

 では、問題が顕在化した際にどう脱却を図るべきなのか。一番の近道は、当然ながらより低いコストで済むアウトソーサーへの切り替えだ。だが安定稼働するシステムの運用に手を加えることは、IT部門にとって大きなリスクにもなるので踏み込みにくい。

 「だからこそ、切り替えは安心安全が基本。そこで重要となるのが、切り替えに向けたアセスメントと、そこで作成する各種ドキュメントの品質なのです」(瀬田氏)

 アセスメントが的確なほど、プログラム数や障害発生率などを基に、目指すべきサービスレベルや必要な業務量、さらに引継ぎまでの期間などの算出精度が高められる。つまり、ドキュメントの内容が切り替え先の選択を測る基準になるわけである。

 ただし、十分な対策を講じながら、既存のアウトソーサーから引き継ぎの協力が得にくい場合もある。対してSCSKでは、引継ぎを抜きに早めに運用に加わり、仕様をより深く理解したり、EOL(Eod Of Life)によるシステム刷新を機に総合テストに加わったりという手法で、「あらゆる事態に対応できるメニューを用意しています」と瀬田氏。

 また、瀬田氏が運用コストのさらなる削減に向け、利用を強く訴えるのがシェアドサービスだ。

 「我々のサービスであれば、リモートに専任技術者を配置するため、万一の際にも十分な対応が可能です。加えて、多技能化した技術者が複数工数の作業にあたるため、技術者の数、ひいてはサービス料がそれだけ抑えられ、かつ、情報システムの品質も維持されるのです」(瀬田氏)

AMOサービス導入事例 SCSKのAMOサービスを利用することで、対象システムが増えてもなお、常駐スタッフを減らせ、コストが下げられる事例を紹介

 SCSKでは、これらの包括的な取り組みを通じ、他社から切り替えて引き継いだ案件で、面倒を見るシステムが1.3倍に増えてもなお、運用コストを削減できた実績があることを紹介した。

プログラミングレスで業務アプリが作れる環境の重要性

 「攻めの経営を実現するには、目まぐるしく変わる社内外の環境に、迅速に適応できるシステム開発も不可欠です」

SCSK ソリューション事業部門 AMO第二事業本部 先進開発部 第一課 課長の松本妙子氏 SCSK ソリューション事業部門 AMO第二事業本部 先進開発部 第一課 課長の松本妙子氏

 こう力説したのは、SCSKのソリューション事業部門 AMO第二事業本部 先進開発部 第一課で課長を務める松本妙子氏。その“現実解”としてSCSKが提供するのが、「迅速な開発」「容易な運用」「柔軟な改善」を実現するクラウドサービス「FastAPP」だ。

 FastAPPの最大の特徴は、アプリケーション開発に必要な認証などの機能が標準部品として幅広く提供され、プログラミング不要で開発ができる点だ。開発環境であり実行基盤の「FastAPP基盤」や運用基盤のIaaS、プロビジョニングやサポートデスクなどの機能も包括的に提供する。

 従来のシステム開発は、サーバやネットワークなどの専門技術者が協働で行っており、協業のための要件定義が開発期間を長引かせる一因となっていた。だが、FastAPPでは、開発ツールで設定した設計情報を基に標準部品が組み合され、画面まで自動作成される。見直しも同様の感覚で可能だ。こうした開発の容易さから、アプリの動作を確認しながらの「作りながらの要件開発」が促され、要件定義に要する時間を格段に削減できるのだ。

 導入トレーニングから、高度な技術サポートを目的とした活用コンサルティングも、同社で用意。松本氏は「FastAPP基盤にメタデータとして格納された設計情報を、Excel形式でダウンロードし、ファイル上で項目を追加するといったメンテナンス作業も行えます。変更を反映させるためにはファイルをアップロードするだけ。加えて、独自開発したアドオンの埋め込みによる、ハイブリッド開発にも対応しており、多様な要望への対応を通じた長期利用に耐え得るアプリも実現できるのです」と力を込めた。

SCSK FastAPP クラウドサービスで迅速な開発、容易な運用、そして柔軟な改善を実現する「FastAPP」
SCSK FastAPP デモの様子

 すでに同サービスを採用する企業は50社に上り、開発されたアプリも100を超える。その種類も多彩で、通信会社での契約管理アプリ、アパレル会社での与信管理アプリ、不動産業での原価管理アプリなど、多様なデータを抱える企業にとって、活用法はアイデア次第だという。

 今後はエコシステムやコミュニティの構築を皮切りに、利用環境や機能面の向上をさらに推し進める計画だ。

業務基盤の改善にむけた“障壁”を取り除く

Panaya Japan 代表取締役 山岡英明氏 Panaya Japan 代表取締役の山岡英明氏

 最後のセッションに登壇したのは、ERPの移行支援ツールを提供するPanaya Japanの代表取締役を務める山岡英明氏だ。

 企業の業務基盤であるERPは、企業の競争力の源泉である。そこに長年にわたって刻まれた業務フローは、今後もシステムの“器”を変えながらも、見直しを含め継続的に利用され続ける。

 ただし、SAPをはじめとするERPパッケージの移行には大きな課題も残されている。「中でも特筆されるのが、標準化されたパッケージに、自社固有の業務を盛り込むためのアドオンです。それらは、業務に独自性を付加し、攻守両面でのIT施策を実現するために欠かせぬ存在でありながら、バージョンアップにより使えなくなることも多いのです」と山岡氏は指摘する。

 この問題を抜本的に解消するためのクラウドサービスとして山岡氏が披露したのがPanayaの「Panaya CloudQuality Suite」だ。

 同サービスは、SAP ERPといったERP製品の変更時の問題を洗い出すツール。その特徴は、システム全体の行動データを基に、極めて短い期間で、未利用や、障害発生が見込まれるアドオンの可視化が可能な点。これにより、システム変更時の影響範囲が早期に特定でき、改修によるテストの効率化も実現できる。

 「Panayaのダッシュボードを見れば、個々のアドオンの検証結果を一覧で確認でき、例えば、もう使われなくなったアドオンは検証しない、といった判断をすることで、作業効率の向上とコスト削減が可能となります」(山岡氏)

 テストフェーズでは、証跡のために取得するログやスクリーンショットの管理も必要とされる。だがPanayaでは、画面の指示マニュアルに従って操作をすることで、各種データが自動収集され管理される。オフショアで作業を行う場合にも、コストを半減させられるという。事例紹介ではNECがSAP ERPからSAP on HANAへの移行にPanayaを活用し、改修範囲を約2割にまで絞り込み、当初見込まれたコストの半分で移行を完了させたことが披露された。

NECのPanaya導入事例 NECではSAP on HANAへの移行の際にPanayaを活用し、当初見込まれたコストの半分で移行を完了した

 守りのITの一部を、効率よく運用してくれる外部に託し、自身は攻めのITに注力する――。そのための考え方と、実際に役立つソリューションを紹介するこれらの講演に、多くの参加者が聞き入っていた。

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提供:SCSK株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2017年2月15日

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