カスタマーサービスはまだこれから Genesys・セグレCEO
Alcatel-Lucentと袂を分かち、独立企業として再出発したコンタクトセンターベンダーのGenesys。今後の経営の方向性などをポール・セグレCEOに聞いた。
現在、コンタクトセンターにおけるカスタマーサービスは、消費者行動の多様化によって、従来のような音声通話だけにとどまらず、メールやチャット、ソーシャルメディア、モバイルアプリからのアクセスなど、さまざまなチャネルに対応したものでなければならない。
そのようにビジネス環境が過渡期にある中、コンタクトセンター大手の米Genesysは、親会社であった仏Alcatel-Lucentが投資ファンドの英Permiraと米Technology Crossover Ventures(TCV)に事業を売却したことで、今年2月から独立企業として新たなスタートを切った。
これから先、Genesysはどのような事業戦略を推し進め、マーケットシェアを高めていくのか。ポール・セグレCEOに話を聞いた。
すべての力をGenesysの事業に
ITmedia Alcatel-Lucentから独立して半年が経ちました。現在の事業状況は好調と聞きますが、その要因は何ですか。
セグレ Genesysは戦略、ビジョン、製品などさまざまな側面で、カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)に注力しており、その点がユーザーから評価されていると考えています。
売り上げに関しては、競合と比べて、ソーシャルメディアやWebサービスなどのノンボイスソリューション、データ分析サービスが伸びており、それが好調を支えています。
これまで10年以上にわたり、GenesysはAlcatel-Lucentの子会社としてビジネスを展開してきました。当初の7年ほどは親会社としてGenesysの事業成長を支援してくれましたが、最後の3年間はGenesysからAlcatel-Lucentに貢献することの方が多くなりました。私自身も、GenesysのCEOという職務に加えて、Alcatel-Lucentのエンタープライズ事業、キャリア事業、IMS(IP Multimedia Subsystem)事業などの責任を負っていました。
このたび独立したことでGenesysのビジネスだけに最大限の力を注ぐことが可能になったのです。
ITmedia 今後、研究開発やM&A(企業の合併・買収)への投資を加速させると表明しています。具体的な投資分野などを教えてください。
セグレ 研究開発や企業買収などによって、特にモバイルやソーシャルメディア、Webサービス、パフォーマンス分析など新しいソリューションに関しての拡充を図ります。新規顧客の獲得による市場拡大も目指します。具体的には、中堅・中小企業(SMB)に対して、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)のようなシンプルかつ短期間で導入可能な製品やサービスを提供していきたいと考えています。
買収については明言できませんが、Genesysの経営戦略を推進する上で必要な技術や製品、あるいは特定のマーケット地域に強みを持つ企業があり、その企業を買収した方が良いと判断すれば、実際の行動に移していく可能性はあるでしょう。
今年7月に買収を発表した、音声セルフサービスアプリケーションを提供するブラジルのLM Sistemasもそうした観点からの買収でした。
カスタマーサービス企業としてやるべきこと
ITmedia ソーシャルメディアやモバイルといった新領域に注力することで、これまでとは異なる企業が競合になる場合もあるはずです。現在どの企業を競合ととらえていますか。
セグレ 確かにおっしゃる通りで、競合になり得る企業は増えています。従来からのコンタクトセンタービジネス全般においては、引き続き、米Cisco Systemsや米Avayaがライバルとなりますが、人材リソースなどを管理する「Workforce Optimization(WFO)」ソリューションに関しては米Nice Systemsや米Verint、eサービス分野では米Oracleなどが競合してきます。
ITmedia Genesysはコンタクトセンターベンダーという企業から変わろうとしている印象を持ちます。今後の展開を教えてください。
セグレ コンタクトセンターソリューションなどを通じた総合的なカスタマーサービスの会社として、まだやるべきことはたくさんあります。例えば、保険会社の業務ルーティングについてもGenesysとして提供できる価値は多いですし、流通・小売業などではスマートフォンと連動した顧客サービスを提供することも可能です。
また、官公庁や自治体など政府系でのカスタマーサービス導入も進んでいます。これまでは単に納税者としてしか見ていなかった国民を“顧客”として扱う動きが出ています。
このように、カスタマーサービスという概念が社会の中でより広がっていくように支援することがこれからの目標といえるでしょう。
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