活気を帯びる企業ソーシャル コミュニケーションの多さが“気付き”を生む
コンシューマー世界におけるソーシャルメディアの台頭によって、企業のコラボレーションツールにも新たな動きが見られている。
スマートフォンやタブレット端末、ソーシャルメディアなど、主に一般消費者が先行して利用してきたテクノロジーやITサービスを企業が業務の中に取り入れようとする、いわゆる「ITコンシューマライゼーション」がますます活気を帯びている。
そうした中、従来から各ベンダーが提供している企業向けコラボレーションツールがソーシャル機能を実装したり、モバイルに対応したりするという動きが加速度的に広がっている。
日本IBMが3月に発表したコラボレーションソフトウェアの最新版「IBM Notes/Domino 9.0 Social Edition」もその1つ。ユーザーインタフェースを企業向けソーシャルソフトウェア「IBM Connections」と統一したことで、ユーザーがConnections上で行うつぶやきやさまざまな活動状況をタイムライン表示できるようになった。加えて、SAPの基幹業務パッケージやBIツール「IBM Cognos」、TwitterやFacebookといった外部の複数システムから承認や返答を求める作業依頼の通知も1つのタイムライン画面に表示する。
このNotes/Domino 9.0 Social Editionは2010年にIBMが発表した「Project Vulcan」を製品化したもので、「Innovation(革新)」「Convergence(統合)」「Opportunity(機会)」「Continuity(継続)」という4つのキーワードを実現した。
では、競合製品と比べた強みは何か。日本IBM ソフトウェア事業 Collaboration Solutions事業部 第一テクニカルセールス 部長の松浦光氏は、「タイムラインの情報から気付きを得てアクションするだけではなく、それを熟成させて大きなプロジェクトに発展させていくこと」だという。新しいアイデアを募るためのアイデアブログ機能やチームで作業を整理できるアクティビティー機能などを実装することで、単にコミュニケーション上の情報を流し続けるのではなく、プロジェクトの芽を育て、運用するための“器”を用意。この仕組みによって、ソーシャル上から仕事を作り、PDCAを回すことが可能になるとしている。
情報共有をお手軽に
こうしたソーシャル製品が企業にもたらす価値とはどのようなものか。松浦氏は、「ユーザーが見たいもの、見たくないものを含めてソーシャルを活用すると情報量は飛躍的に増える。その結果、おのずと知識が身に付いたり、関連情報からトレンドや気付きを得ることができたりするのだ」と説明する。
これまで主流だったメールや掲示板といったコミュニケーションツールだと、顔を知っている者同士のやり取りには適しているが、ソーシャルを用いれば、1対1のやり取りだけでなく、相手のウォールに書き込むことで、たとえ知り合いでなくてもその相手のフォロワーに情報を伝達できる。
「ソーシャルは、情報共有にスピード感と幅を持たせ、しかもお手軽にできるというのが強み。わざわざ通話やテキストで返事をせずとも、“いいね”をクリックするだけでコミュニケーションを成立させることも可能だ」(松浦氏)
働き方の多様性を支援
今後、企業ソーシャルはどのように進展していくのか。「究極的には、必要な人に、必要な情報を、必要なタイミングで届けられるようになるだろう」と松浦氏は述べる。その背景にはワークスタイルの多様性があるという。
多くの企業がビジネスをグローバルで展開しており、例えば、北米、ヨーロッパ、アジアで同時にテレビ会議をすることも珍しくない。そうすると、今までのように、決められた時間帯にオフィスで仕事をするといったスタイルだけでは限界がきており、より柔軟な働き方が求められるのである。そうした業務環境を支援するのが、ソーシャルだったり、モバイルだったりするのだ。
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