ガン研究に従事するIBM Watson、医師免許獲得に向けて猛勉強中?:IBM Information On Demand 2013 Report(2/2 ページ)
コンタクトセンターを中心とする企業のカスタマーサポート分野でも、その活躍の場を広げつつあるコンピューティングシステム「IBM Watson」。カンファレンス2日目の基調講演では、既に実用段階に入っている医療領域での進ちょく状況も紹介された。
Watson、医師を目指す
基調講演では、米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」のチャンピオンとして一躍有名になったコンピュータ、Watsonの開発進ちょく状況についても触れられた。ステージに登壇したWatsonソリューションズ ゼネラルマネジャーのマノイ・サクセナ氏は「これから10年、20年先はIT業界全体でWatsonのような自ら学ぶシステムが一般的になっていくだろう」と意気込んだ。早くも2014年にはWatsonを基盤としたクラウドソリューションを提供することも明らかにした。
IBMでは、コンピューティングシステムの進化を3段階で説明している。1段階目は、1950年代までの集計システムの時代。2段階目は、1950年代以降のプログラムが可能になった時代。そして3段階目が、意識的にシステムが学習する時代で、Watsonは第3世代のシステムと位置付ける。
Watsonの大きな強みは自然言語処理技術を持つことであり、これがビッグデータ時代に不可欠なシステムになるという。現在、全世界で1日に生成されるデータ量は250京バイトで、世の中の総データ量の90%が過去2年間で作られた。さらに、その中の80%が非構造化データである。「Watsonは構造化および非構造化データの両方を認識して、確実な回答を返してくれる。データが増えれば増えるほどWatsonの性能は向上し、世の中に貢献していくのだ」とサクセナ氏は力を込める。
既にWatsonは医療分野で実用化が進んでいる。現在までに医療に関するケースシナリオを2万5000件、医学文献を200万ページ分習得し、トレーニングは1万5000時間に上る。また、米国最大手の医療保険会社であるWellPoint、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターと共同で、ガン治療に向けた取り組みを推し進めている。
「Watsonは国家試験に向けて猛勉強している。近い将来、Watsonが医師免許を取る日が来るかもしれない」(サクセナ氏)
加えて、今後はコンタクトセンターなど企業のカスタマーサポート領域にも本腰を入れていく。今年5月には企業向けの顧客サービスおよびマーケティング支援システム「IBM Watson Engagement Advisor」を発表している。同システムの主機能である「Ask Watson」を用いて、ユーザーは不動産投資の相談や保険プランの確認などをWatsonと直接会話あるいはテキストによってできるようになる。ユーザーの質問に対して、膨大かつ多種多様なデータの中からWatsonが最適な解を導き出してくれるというわけだ。
サクセナ氏は「これまでエキスパートが意思決定していたような分野でWatsonを活用すれば大きな効果が出る」と話す。製品化を待たずしてAustralia and New Zealand Banking(ANZ)や米Nielsenなど11社から受注契約を得たという。
「実際にWatsonが量産され、商業製品になれば、世界は大きく変わり、もっとエキサイティングになるはずだ」(サクセナ氏)
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