仕事の満足感を高める人工知能を開発、日立が実証実験へ:1日の行動を指南
仕事における幸福度を高めるような行動を人工知能が提案してくれる技術を日立製作所が解説。社内の営業600人を対象に実証実験を開始した。早ければ2016年度内にも実用化するという。
「明日、同僚のAさんとお話しする時間をとってみては?」「上司のBさんと会うのは午前中がオススメです」「今日は20時までに帰りましょう」
仕事の満足度が高まるようなアドバイスを人工知能がしてくれる――。6月27日、日立製作所が600人の社員を対象に、人工知能が社員の幸福度を高めるためのアドバイスを与える実証実験を始めたと発表した。
日本航空(JAL)などで実証実験が行われている、名札型のIoTデバイスで体の揺れやうなずきなどの動きから仕事に対する心理状態(幸福度)を推定しつつ、周りのどの社員とコミュニケーションをとっているかというデータを取得する。
装着してから1カ月はデータの収集期間で、各行動と幸福度の関係を示すモデルを作成。その後、人工知能「Hitachi AI Technology/H」からスマートフォンのアプリを通じてアドバイスが届くようになる。時間帯や会話相手などの項目で細分化された提案で、幸福度の向上のほか、組織の活性化、それに伴う企業の生産性向上を支援するという。
今回実験に参加する600人は営業担当者で、組織の活性化が営業成績に反映するかという点も検証するそうだ。プライバシーにも配慮し、個人の幸福度や行動データ、そしてアドバイスの内容は本人以外は閲覧できないようにした。
「これまで、三菱東京UFJ銀行やJALなど13社で実証実験を行い、レポートとコンサルティングを行ってきたが、従業員の幸福度が高いと生産性や成果に結び付きやすいという結果が出ている。今回の技術は幸福度や組織活性度の数値化から一歩踏み出し、そこから得られる知見をシステム化、自動化する点に重点を置いている」(日立製作所 研究開発グループ 人工知能ラボラトリ長の矢野和男氏)
AIで個人個人の特性に合わせた生産性向上を
幸福感の測定は、加速度センサーで測定した体の動きで推定しているが、アンケートなどとの組み合わせたところ、動きのパターンが多様である場合は幸福感が高く、動きに一定の傾向があるほうが“不自然”で、幸福感が低いという分析結果が出たという。しかし、この体の動きに影響を与える要因は人それぞれだと矢野氏は話す。
「さまざまな会社のチームを分析して分かったのは、仕事における幸福度を左右する要因は千差万別ということ。リーダーがメンバーの面倒を見るといい影響が出たり、休み時間が充実していると集中力が高まったり。これまでは、同じようなベストプラクティスを実践すればうまくいくという風潮があったが、1人1人に合わせた提案やアクションをした方が効果が高い。そのためにも人工知能というアプローチは有効だ」(矢野氏)
今後は実験結果の検証からソリューションをブラッシュアップし、2016年度内の実用化を目指すという。今回は個人単位での行動分析だが、将来的には集まったデータを基に「20代男性における傾向」などクラスタごとの傾向を出したり、それをAIに生かす構想もあるそうだ。
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