この特集のトップページへ
Chapter 2:Windows NT 4.0のTCP/IPサービス 〜WINSとDHCP〜

2.6 DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)

 DHCPは,ホストを動的に構成するためのプロトコルである。システム上は,DHCPサーバーとDHCPクライアントから構成される。DHCPを使用しない場合には,IPアドレスやDNSサーバーのIPアドレスなど,TCP/IPを構成するパラメータを各クライアントごとに指定しなければならない。これに対してDHCPを導入すると,各クライアントごとの設定作業が不要になる。DHCPクライアントは,起動時にDHCPサーバーを探し出し,DHCPサーバーから割り当てられたIPアドレスなどのパラメータを使用するようになる。Windows NTで採用されているDHCPサーバーは,RFC1533/RFC1534/RFC1541/RFC1542に準拠している。

 DHCPを導入すると,ネットワークの管理コストを低減することができる。具体的には,次のようなメリットが挙げられるだろう。

 まず第一に,各ホストのIPアドレスを管理しなくてもよくなることが挙げられる。多数のコンピュータが存在するLANでは,IPアドレスの割り当て作業だけでも,かなりの労力を必要とする。単に機械的にIPアドレスを割り当てるだけであれば,管理コストはさしてかからないが,IPアドレスは無限にあるわけではないので,必要なくなったIPアドレスを回収しなければならない。この作業が,意外に管理コストを上昇させる。DHCPを利用すれば,使用しなくなったIPアドレスは自動的に解放されるので,管理者がこれらの作業に煩わされることはなくなる。

 第二に,TCP/IPの構成パラメータを管理者側で設定できることが挙げられる。TCP/IPの構成パラメータを間違えると,TCP/IPネットワークが混乱してしまうこともあるため,このメリットは重要である。クライアントでDNSサーバーの指定を間違えたぐらいであれば,そのクライアントがほかのホストと接続できないだけであり,たいした影響はないのだが,IPアドレスを重複させてしまったり,WINSサーバーの指定を間違えたりすると,サーバーやほかのクライアントにまで影響が及ぶおそれがある。その点,DHCPサーバーを導入すれば,これらのパラメータを管理者側で指定できるようになるので,トラブルが発生するおそれも少なくなる。何らかの理由でDNSサーバーを変更しなければならない場合でも,クライアントの管理者に通知して設定を変更してもらう必要はなくなり,サーバー側でクライアントに割り当てるパラメータを変更するだけですむのである。

 ところで,Windows 2000では,DHCPとDNSが連携するようになる(詳しくは後述する)。しかし,Windows NTのDHCPサービスは,ほかのネットワークサービスと連携することはない。DHCP単体で動作するため,仕組みも挙動も非常にシンプルなものとなっている。そこでここでは,DHCPの仕組みと挙動を十分に理解してもらうため,Windwos NTのDHCPサービスについて説明する。

PREV 12/16 NEXT