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Chapter 4:DNS(Domain Name System) 〜委任と内部ルート〜

4.4 DNSのレコード

 これまでは,主にDNSの仕組みや挙動などを説明し,具体的にどのように設定するのかについてはあまり説明してこなかった。DNSは分散データベースであり,DNSの設定は「リソースレコード」と呼ばれる設定行の集合によって表現される。

 これまでの解説のなかでも,DNSのリソースレコードとして,ドメイン名またはホスト名からIPアドレスへの対応を指定するAレコードや,DNSサーバーを指定するNSレコードなどについて紹介してきた。しかし,ほかにもリソースレコードは存在する。ここでは,代表的なリソースレコードについて説明しておこう。ただし,ここで説明する以外にも,リソースレコードは存在する。たとえば,ホストの情報を表すHINFOレコードは,その一例である。しかし,ここで説明する以外のリソースレコードはほとんど利用されることがないので,ここでは説明を割愛する。

 これらのリソースレコードをどのように設定するのかについては,Microsoft DNSの場合は「Chapter 8 MS DNS 〜Windows 2000のみでの構成〜」で,BINDの場合は 「Chapter 9 既存DNSとの統合 〜BINDとの相互運用〜」で,それぞれ例示する予 定である。

Table 4-1 DNSにかかわる設定項目

レコード名 意 味
SOA start of a zone of authorityの略で,そのゾーンに対する権威を表す。このリソースレコードを設定するときには,(1) そのゾーンの管理者の電子メールアドレス,(2) セカンダリサーバーがゾーンの情報を更新する頻度,(3) このゾーンのリソースレコードをキャッシュさせておく期間(TTL:Time To Live),を記述する。DNSサーバーは,自分が解決した情報をキャッシュして以降の問い合わせに対して利用するが,指定されたTTLを過ぎると,そのリソースレコードのキャッシュを破棄する。TTLは,SOAレコードで指定することも可能だが,各リソースレコードで個別に指定することもできる(各リソースレコードで個別に設定した場合,SOAレコードの指定よりも優先される)。
A host Addressの略であり,ドメイン名やホスト名からIPアドレスへの対応を示すレコードである。たとえば,「biblo.dsl.localは192.168.1.254である」ということを指定するために用いられる。下記のように,同じホスト名に対して複数のIPアドレスを指定すると,192.168.1.1〜192.168.1.3のあいだでラウンドロビンを実現できる。

www.dsl.local. IN A 192.168.1.1
www.dsl.local. IN A 192.168.1.2
www.dsl.local. IN A 192.168.1.3
CNAME Canonical NAMEの略であり,エイリアス名を指定する。wwwやftpなどのホスト名は,エイリアス名として設定されていることが多い。たとえば,次のように設定した場合,www.dsl.localやftp.dsl.localを名前解決することで,lily.dsl.localというホスト名が回答される。

www.dsl.local. IN CNAME lily.dsl.local.
ftp.dsl.local. IN CNAME lily.dsl.local.
PTR PoinTeRの略であり,IPアドレスからドメイン名やホスト名への対応を指定する。逆引きに利用される。
MX Mail eXchangeの略であり,ホストやドメインに宛てた電子メールをどのサーバーに転送するかを指定する。電子メールサーバーを構築する場合,MXレコードは非常に重要な役割を担う。今回の連載は電子メールサーバーの構築手法を解説することが主眼ではないため,MXレコードについて詳しく説明しない。必要であれば,参考文献として挙げた『DNS&BIND 第3版』などを参照していただきたい。
NS Name Serverの略であり,そのドメインを管理するDNSサーバーを指定する。「4.1 委任」で述べたとおり,管理を別のDNSサーバーに委任する場合は,NSレコードを記述する必要がある。
SRV SeRVice locatorの略であり,ネットワークサービスを提供するサーバーを指定する。Active Directoryでは,ドメインコントローラの検出にSRVレコードを使用する。このレコードについては,次章で詳説する予定である。

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