日本の警察は「ITオンチ」「ハイテク犯罪には全く無力」などと思われていないだろうか。確かに、もしも不正アクセスやウイルスの被害に遭ったと仮定して、それを最寄りの警察署または派出所へ届け出ても「お巡りさん、そういうのよくわかんないんだよね」と言われてしまいそうな気はする……が、それはあくまでイメージにすぎない。果たして、実態はどうなのだろう? 各都道府県警察を束ねる警察庁に取材を申し込み、ハイテク犯罪への対応を全般的に担っているセキュリティシステム対策室の立崎正夫氏から話を聞くことができた。
「犯罪捜査など現場での具体的な活動は各都道府県警の仕事で、警察庁はそのバックアップをしています。ハイテク犯罪に関しては技術的な支援なども行っていますが、基本的には全体的な連絡・調整・指導が私たちの役割です」
警察ではハイテク犯罪を
の3つに大きく分類している。問題なのは、これらのハイテク犯罪が旧来の犯罪のカテゴリに収まりきらないことが多い点だ。
「警察の部署は犯罪ごとの縦割りになっているんですが、ハイテク犯罪は横断的。そこで、各部署を統括していくのがセキュリティシステム対策室の仕事になります」
ハイテク犯罪が横断的であれば、警察庁やセキュリティシステム対策室の役割もまさに横断的である。部署の垣根を越えるだけでなく、市民や企業、外国への働きかけも行わなければならない。
「私の部署で力を入れているのは、まず“情報セキュリティ意識の向上”。これはID・パスワードの管理やウイルスへの対策など、セキュリティに対する市民の意識を高める活動です。講演を行ったり、こうやって取材にお答えしたりするのもその1つです。次に“産業界との連携”。ハイテク犯罪の捜査ではたとえばプロバイダにログを確保してもらうなど、産業界の協力が不可欠なんです。『総合セキュリティ対策会議』ではプロバイダ・パソコンメーカーの方などに参加してもらい、いかに連携を取るかを話し合っていただいています。また、ハイテク犯罪は簡単に国境も越えますから、国際的な会合で対応を議論したり、サイバー犯罪条約(昨年末に日本を含む32か国が署名)を日本にどう取り入れていくかを考えたりもしています」
警察庁生活安全局生活安全課 セキュリティシステム対策室 課長補佐 警視 立崎正夫氏
■ハイテク犯罪の検挙件数 ※警察庁調べ