「やっぱりヒカリだよね」。先日NTTの光ファイバー「Bフレッツ*1」を導入した知人が漏らした言葉だ。彼はそれまでADSLを利用していたのだが、光ファイバーの快適さにいまさらながら驚いているという。気持ちはワカル。光ファイバーこそ、現在手に入れることのできる究極のラストワンマイルなのだから。彼の場合、当分の間ネット接続の回線に関してアレコレ悩まなくていいということになる。ウラヤマシイ。今年はそのFTTH*2に大ブレークの予感が漂っている。
これまでFTTHを広域展開している事業者は、事実上2社(NTTと有線ブロードネットワークス)に限られていた。だが、今年に入って、九州、中国、関西、関東の各地区でいわゆる“電力系*3”と呼ばれる電力会社系列の通信事業者が続々とFTTHサービスに参入している。電力会社は送電設備などの保守点検用に古くから光ファイバー網を広域に構築している。電力系事業者はその光ファイバーをバックボーンなどに利用してサービスを行うのだ。そのためNTTに次ぐ有力なFTTH事業者としての期待がかかっている。これからのFTTHは電力系に注目! という理由がここにある。
電力系の中でも最大の事業者である東京電力(以下東電)が3月29日から「TEPCOひかり」という名称でFTTHサービスを開始した。ちなみに、関西、中国、九州といったほかの電力会社は系列通信会社による参入なのに対し、東電は自らがFTTH事業を開始するという方式をとっている。
「TEPCOひかり」の特徴はホールセール*4(卸売り)型のサービスであるということ。ADSLのアッカ・ネットワークスやイー・アクセスといった事業者と同じ事業形態での参入となる。そのため一般ユーザーが東電に直接申し込むのではなく、プロバイダ経由で申し込むことになる。本稿執筆時点では、TTNet、So-net、@nifty、BIGLOBEの4つのプロバイダがTEPCOひかりを利用して自社メニューにFTTHコースを新設した(詳細は225ページの表を参照)。今後も提携プロバイダ*5は続々と増えるようで、東京電力情報通信事業部・田代哲彦課長は「現在二十数社と具体的な話をしている」と語る。高速回線からモバイル系のアクセスポイントまで豊富な品揃えを要求される現在のプロバイダにとって、光ファイバーも重要なメニューの1つになろうとしている。
TEPCOひかりの通信速度は上り下りともに100Mbpsだ。ただし、速度はこの1種類のみでBフレッツのような料金を抑えた10Mbpsコースが用意されているわけではない。また、同様にマンション専用メニューも用意されていない。これに関して田代氏は「マンション専用メニューは現在検討中であり、なるべく早い段階で提供できるようにしたい」と意気込む。また「マンションデベロッパー系プロバイダ*6からは、既存マンションに導入したいというオファーが来ている」と打ち明けてくれた。