NR●ACCSはP2Pソフトに対してどういう立場を取られていますか? 久保田●P2P技術自体には違法性はありません。でも、現状流れているものはほとんどが他人の著作物。ビジネスとしてP2Pサービスを始めるのならば、まずそこの問題の議論をするべきでしょう。ノーティスアンドテイクダウン※だけでは、著作権侵害には対応できません。 ※著作権者から依頼があった場合、ファイルをサーバから削除する手続きのこと
NR●昨年ACCS主導でWinMXのユーザーが逮捕されましたが。 久保田●逮捕に関しては「一罰百戒」「見せしめ」といわれていますが、そもそも法律そのものが一罰百戒的なものです。われわれもたまたま接続していたユーザーが捕まるということは避けようとして、違法性の高いユーザーを追いかけていたし、逮捕するぞと公言していました。
NR●今後も逮捕はある、と? 久保田●もちろん、今後も摘発活動は続けます。ですが、それ以上に「違法行為をやめよう」という啓発活動にも力を入れていくつもりです。「ルールはルールでしょ」というのがわれわれの基本スタンスなんです。
NR●著作権法そのものが、ネット時代に対応できないという指摘もありますが? 久保田●著作権法自体に特に問題はありません。「2ちゃんねらー」に言いたいのは、まっとうな場所で声を上げろということ。本当に著作権法に問題があると思うのなら、堂々と国会議員に立候補して「著作権法のここが問題だから俺が改正する」と主張すればいいんですよ。法治国家である以上、決められたルールに従うのは当然のことです。P2Pもビジネスとして展開するのなら、きちんとルールを守れるようなシステムを確立してから参入すべきでしょう。
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会の専務理事である久保田裕氏。「著作権法に問題があると思うなら、まっとうな場所で声を上げるべき。文句があるなら俺はいつでも正々堂々と議論するつもりだ」と力説
今、数あるファイル交換ソフトの中で、最も「匿名性が高い」といわれているのが「フリーネット」(Freenet)だ。フリーネットの歴史は意外と古く、基本的な設計はナプスターとほぼ同時期となる98〜99年に確立されている。99年の6月にはオープンソースのソフトとしてだれでもダウンロードできるようになり、本格的な運用が始まった。
フリーネットのシステムも基本的にはP2Pを使っている。だが、ナプスターやグヌテラとは仕組みが根本的に違う。フリーネットの最大の特徴は、フリーネットのネットワークに参加したすべてのコンピュータを、仮想的に「1つのハードディスク」としてまとめるところ。つまり、接続したコンピュータの個々のハードディスクは共通のファイル交換領域として扱われ、常にそのネットワーク内を共有ファイルが“流れる”ことになる。絶えずファイルがネットワーク内を流れているので、どのコンピュータにどのファイルが記録されているかということは把握することができない。しかも、各コンピュータ同士はIPアドレスや、DNSといった身元が明らかになりやすい情報で接続しているわけではないので、ほぼ完全な匿名性を確保することができるのだ。イメージとしては、フリーネットネットワークという大きな「湖」の中に魚(ファイル)を投げ込んで放流し、ユーザーが好きなときにそれを“釣る(ただし、魚自体は湖に残ったままになる)”と考えればいい。たとえ湖の中にワシントン条約に抵触するような「魚」が泳いでいたとしても、“だれが投げ込んだのか”ということは分からないのだ。