”あの人”は都内の大学に通う大学生で、ここでアルバイトをしている。実は"あの人"を見かけたのは今年の春。そのときは挨拶もできなかったんだけど、いまはひとことふたこと話をするまでになった。
ある日ふたりでお茶しながら、音楽のお話をした。彼はわたしが持ってきたMDプレイヤーにとっても興味を示したので、おとうさんがエニーミュージックにすごくはまっていることとか、夢中で家族の話をした。彼に「おとうさんとおかあさんが好きなんだね」と言われた時に素直に「はい」って答えたら彼にクスクス笑われてしまった。でも、すぐに「そういうのっていいよね。家族が好きな人ってステキだな」と言ってくれた。
音楽の話は彼の方が一所懸命だった。ひとつのイヤーフォンで一緒に聴いた時にはドキドキしてしまった。彼が持っている携帯電話がメモリースティックDuoに対応していたので(※10)今度はメモリースティックDuoに音楽を入れてきて、音楽を交換してみる約束までしちゃった。マスターが戻るまでほんの一時間ほどだったけど、わたしにとってはものすごく長いような、とっても短いような時間だった。
翌朝、おとうさんのメモリースティックDuoをこっそり持ち出し、HDDに入っている彼が好きそうなR&Bとかソウル系の曲をおとうさんのCDコレクションから拝借して、チェックアウトして持って行くことにした(※11)。
おとうさんが持っている曲は古い曲ばかりだから心配だったんだけど、逆に彼には新鮮だったみたいで、とっても喜んでくれた。なかでもEric Claptonの「Money And Cigarettes」が気に入ったみたい。そんな風に彼とは毎日、音楽の話でもりあがった。