定番アプリの消費電力を専用ツールで「見える化」してみた:LINEにGoogleマップ、パズドラ(1/2 ページ)
「あのアプリを入れたらバッテリーが持たなくなった」という経験、ありませんか? おなじみの定番アプリがスマホのバッテリーをどのように使っているのか、専用ツールで見える化してみました。
スマートフォン最大の特徴と言えば、さまざまなアプリをインストールできること。新しい機能やサービスに対応することで、ユーザーは今までとは違った使い方ができるようになる。ではアプリによってバッテリーの消費に違いはあるのだろうか?
そこで、Androidスマホの消費電力を測定できる「TRYGLE POWER BENCH」を使い、いくつかのアプリがどのようにバッテリーを消費しているのか調べてもらった。前回、前々回に続き、TRYGLE POWER BENCHを開発したトライグルの冨森健史氏に測定と解説をお願いした。
- スマホのバッテリーはなぜ“持たない”――開発者用測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」で分かること
- 動画の撮影と再生、バッテリーを多く消費するのはどっち?――開発者用測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」で分かること
冨森氏によると、アプリによるスマホのバッテリー消費にはある前提があるという。「それは常に起動している『常駐アプリ』の存在です。常駐アプリの消費電流は小さいかもしれませんが、使われている時間が長いため、消費電力に大きく影響します」(冨森氏)
常駐アプリ(常駐タスク)はその名の通り、常に起動してサービスを提供している。ユーザーからすれば「使わないアプリは終了しておきたい」ものだが、常駐アプリをいちいち終了していると利便性にも影響してしまう。そのため、アプリを開発する側に電力消費についての工夫が求められる。
「アプリがバックグラウンドになった際、不必要なプロセス(処理)をすべて止めるようにしないとバッテリーが早く減ります。例えば描画処理のプロセスが、画面表示が不要なバックグラウンドになっても残り続けている――というケースですね。ユーザーが使っていない待機時でもどんどんバッテリーを消費してしまい、機能やサービスとは違う次元でレビューなどに影響します。最も、そうしたアプリは最近減りましたが」(冨森氏)
またスマートフォンのプラットフォーム、具体的にはOSの違いもあるとのこと。「バックグランドのアプリがバッテリーを多く消費していたのは、Androidの古いバージョンで多く見受けられました。Android 4.x以上ではOS側のタスク管理機能も随分進化して、ユーザーが気を使うことは少なくなったと思います。iOSは(タスク管理による)省電力性が前から優秀でした。これはiPhoneのバッテリー容量が大きくできないのも関係しているかもしれません。iOSアプリを開発する方はすでにアプリによる消費電力への配慮していると思いますし、これからも重視するべきポイントだと思います」(冨森氏)
「LINE」の消費電流を分析する
こうした点を踏まえて、まずは利用者が多い「LINE」がどのようにバッテリーを消費しているのか、LINEをインストールした2台のAndroidスマートフォンを使って、TRYGLE POWER BENCHで“見える化”してみた。
LINEなどのメッセージアプリは常に起動していて待受状態にあることが多い。アプリを起動する/終了させるという使い方をしないため、典型的な常駐アプリといえる。「LINEはさすがによくできていて、アプリがアクティブな(前面にある)ときとバックグラウンドのときの差が小さい。消費電力はメッセージを通信するときだけ高くなり、通信が終わればまた低くなります。かつては通信が終わっても処理が残り、バッテリー消費が続いていました。最近のバージョンはかなり改善されています」(冨森氏)。
何も操作しないときの消費電流は、2台とも約200mA台。LINEを呼び出すとこれが400mA台になり、通信が発生するピーク時には600mA台になる。通信を開始する/終了するタイミングでまとまった電流を使っており、少なくとも「トーク」機能では、その中で流れるデータの種類はあまり消費電流に関係しないようだ。
「トークではテキスト以外にスタンプやカメラで撮った画像を送受信できますが、テキストとスタンプでは消費電流に大きな差はないようです。画像はファイル容量が大きくなれば送信時にそれなりの電流を使います。受信側は画像を拡大したときに大きな通信が行われますから、トークの画面にサムネイルが表示されるだけなら、あまり消費電流は増えません」(冨森氏)
ではLINEで音声通話をした時はどうだろうか。測定中の2台で通話を開始したところ、1台は約560mA、もう1台は約470mAの電流が発生した。トークの時と同じ様に、通信が発生する際に大きなピークがある。
「この数値はLTE接続の場合です。面白いのはWi-Fi接続だと消費電流が減ることですね」(冨森氏)
そこでWi-Fi接続に切り替えてみると、消費電流は310mAと386mAになった。これは通信規格の違いが影響していると見られ、冨森氏は「LTEの場合は基地局と接続し続けるために信号のやり取りがありますから、その分、多くの電流を使っているのではないでしょうか。これは通話に限らず、LINEでの通信はWi-Fiのほうがバッテリー消費が少ないようです」(冨森氏)。
関連記事
- スマホのバッテリーはなぜ“持たない”――開発者用測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」で分かること
多くのユーザーが不満に感じている「スマホのバッテリー持ち」。省電力技術や大容量バッテリーの採用でもなかなか解決されない理由とはなにか? メーカーも使うスマホ向け電力測定ツールを開発したトライグルに聞いた。 - 動画の撮影と再生、バッテリーを多く消費するのはどっち?――開発者用測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」で分かること
なにかと“バッテリーの持ち”が取り沙汰されるスマートフォン。トライグルが開発した測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」を使って、普段の操作でどのように電力が使われているのかを計測してみた。 - スマホ用電力測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」がバージョンアップ
トライグルは、スマホの消費電力を測定する開発者向けツール「TRYGLE POWER BENCH」をバージョンアップした。スマホの動作ログも取得できるようになり、アプリごとの消費電力も測定できるようになった。 - リフティング王・土屋健二の学習アプリ第2弾「極意リフティング 〜目指せ100回! ジュニア編〜」
ハイスピードカメラ映像や動画・テキストで正しいリフティングを学べる学習アプリ第2弾が登場。解説は第1弾に続き、リフティング王・土屋健二氏だ。 - スイング映像と練習ドリルで「左重心スイング」をマスターする、ゴルファー向けレッスンアプリ
慈恵医大ゴルフ部のコーチが教える「左重心スイングで行こう! 60日習得プログラム」がリリース。スイング映像と練習ドリルで左重心スイングをマスターできる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.