“中国のGoogle”、「Baidu」のサービスはどう使われているのか(1/3 ページ)
中国の検索最大手「Baidu」(百度:バイドゥ)は単なる検索サイトという規模を超え、次から次へと新サービスを打ち出して利用者を増やしている。「中国のGoogle」ともいわれるBaiduには、どんなサービスがあるのだろうか。
Googleなど“海外”Webサービスの利用に制限がかかっている中国。だがその分、独自のサービスが次々と生まれている。多くの中国の消費者はそれら国産サービスを日々利用しており、海外のメジャーサービスに頼る必要性は薄まっている。
中でも検索エンジンの最大手、「Baidu」(百度:バイドゥ)は単なる検索サイトという規模を超え、次から次へと新サービスを打ち出して利用者を増やしている。「中国のGoogle」ともいわれるBaiduには、どんなサービスがあるのだろうか。
検索エンジンを超えたエコシステムを構築
「中国でBaiduを使わない人は1人もいない」といわれるほど、Baiduのサービスは中国中で使われている。Baiduは今や検索サービスだけではなく、Googleのように幅広いサービスを提供しているのだ。たとえ他社の検索サイトを使っていたとしても、それ以外のサービスで何かしらBaidu関連のサービスを使っているといえるほどだ。
ここ数年はスタートアップ企業への出資や買収も続けており、共同購入や動画配信などサービスの幅を大きく広げている。2014年には世界各国で配車サービスを行うUberに出資するなど、国を超えた投資も行っている。
Baiduの数あるサービスの中でも、基本サービスである検索エンジンのシェアは圧倒的だ。中国の検索サービスランキングサイト「51.La」(我要La)の2015年10月末時点のデータで比較してみよう。シェアトップはBaiduの64.8%と7割近い数値だ。2位の「haosou」(好捜)は15.8%、3位「sogou」(捜狗)は11.9%とBaiduに大きな差をつけられている。中国の検索エンジンはBaiduの1人勝ちと言っていい状況で、シェアも年々拡大している。
これだけシェアが高いと、最新OS「Windows 10」の普及をもくろむ米Microsoftにとっても無視できず、新型ブラウザ「Microsoft Edge」はBaiduを標準検索エンジンとして採用したほどだ。Baiduが標準で使えないブラウザやOSでは中国で戦えないということなのである。
ここまでBaiduが中国で利用されているのは、単なる検索エンジンを超え複合的なサービスを提供し、しかも中国のインターネット利用者が必要とする情報を的確に提供しているからだ。BaiduはGoogleと似たような検索ワードを入力するレイアウトである。しかし検索結果からそのままWebやニュース、画像、動画だけではなく、音楽、文書データベース、百科事典、文書共有サービス、そして知恵袋的なものまで「知りたい」と思えるあらゆることが検索できる。GoogleとYahooを組み合わせたようなサービスをBaiduは提供している、と考えるのが分かりやすいかもしれない。
例えば歌手名を検索すれば、その歌手の最新ニュースや画像が表示されるだけではなく、「百度百科」(ウィキペディアに類似したもの)も表示され、プロフィールなどをすぐに見ることができる。また「百度音楽」のその歌手のページも表示され、Baiduの音楽配信サービスを利用してその歌手の最新ヒット曲などをそのまま聞くことも可能だ。検索だけではなくその先のサービスを自社で持っていることから、Baiduのサービス内だけで全てを完結させることが可能なのである。
しかもそれに加え、資本提携や傘下企業のサービスとの連携も進めている。旅行関係のポータル&コミュニティーサービス「百度旅游」からは、同社傘下のオンライン旅行代理店の「Qunar」を利用して簡単にホテルの予約などが行える。「TVで日本の北海道の旅番組をやっていたので、Baiduでちょっと検索。いろいろ見ているうちに景色のきれいな温泉のリポートに見入ってしまい、気が付いたら北海道旅行を決めて代金もすぐに決済してしまった」という体験談も実際にあるのだ。検索エンジンとコミュニティーサービスやソーシャルサービス、そしてそして傘下のサービスがシームレスに利用できるのである。
ちなみに百度旅游には2015年2月に京都府が日本で初の公式提携を行いコンテンツを提携、またJALやバニラ・エアなど日本の航空会社はQunarからの予約に対応している。今や日本の旅行関連企業も中国のWebサービスは無視できない存在であり、中国人の日本観光を大きく後押ししているのだ。なおQunarはライバルの「Ctrip」(携程)との合併をこの10月に発表したばかりで、中国国内でのオンライン旅行代理店のシェアを圧倒的なものにしている。
他の例では、動画検索サイト「百度視聴」の検索結果から傘下の動画配信サービス「Iqiyi」へ誘導し、月額課金制のサービスに入会するよう促している。Baiduで動画を検索すればそれこそ著作権に問題のあるものから画質の悪いものまでさまざまな動画の検索結果が表示される。だがIqiyiならば、著作権も画質もクリアなコンテンツが全編アップされており、PCやスマートフォンからストレスなく動画を楽しめるという訳だ。スマートフォンの大画面化が進んだこともあり、中国では「無料で質の悪い動画を見るくらいなら、月数百円を払ってきちんとした動画を見たい」というニーズが高まっている。Iqiyiの有料サービスは2015年10月時点で500万人を超えている。
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