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MVNOの深イイ話:

「フルMVNO」と「ライトMVNO」の違い (1/3)

2018年春の「フルMVNO」のサービス開始に向けて準備を進めているIIJ。ではこの「フルMVNO」とはどんなMVNOなのでしょうか。既存の「ライトMVNO」とは何が違うのでしょうか。

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 筆者の所属するIIJは、2016年8月に日本初の「フルMVNO」を目指すことを発表し、現在、その準備を進めています。それでは、この「フルMVNO」とは一体何なのでしょうか? 普通のMVNOとは何が異なるのでしょうか? 今回は、MVNOのさまざまな形態と、そのある種の進化形でもある「フルMVNO」について、皆さまにご紹介しましょう。

MVNOの代表的な類型

 世界各地で2000年前後に始まったといわれるMVNO(仮想移動体通信事業者)は、各国の移動通信市場の特性、例えば利用者のニーズや、政府機関の思惑等により多様な発展を見せました。日本におけるMVNOの状況については、これまでもこの連載を通して述べてきましたが、世界ではこのような日本MVNOの成長とは全く異なるMVNOの発展(→バックナンバー)を見ることができます。

 一方、その多様性を一般化して、MVNOの類型を作る試みもさまざまになされてきました。その中の1つが、移動通信サービスを提供するために必要な機能を並べて、どこまでをMVNOが自ら備え、どこまでを携帯電話会社(MNO)から借りているのかによって、MVNOの概念的なビジネスモデルを定義するというものです(図1)。

フルMVNO
図1

 「ブランデッドリセラー」(Branded Reseller)は、日本ではディズニーがソフトバンクと提携して提供している「ディズニー・モバイル・オン・ソフトバンク」などに近い形態で、日本ではMVNOの一形態として識別されていますが、各国によりその制度上の位置付けはさまざまです。

 「ライトMVNO」は、ブランドに加え販売(ショップ等)、課金、顧客管理をMVNOが持ち、認証、コアネットワークなどネットワークの機能をMNOに依存するビジネスモデルです。そして「フルMVNO」は、無線アクセス以外の全ての機能をMNOに依存せずMVNOが運営するビジネスモデルとなります。

 あくまでこの分類はMVNOの機能に注目した1つの例に過ぎませんが、このような分類法は広く業界内で定着しており、ここから「フルMVNO」と、それに対比される「ライトMVNO」「ブランデッドリセラー」の違いが導かれることとなります。それでは、日本のMVNO(ブランデッドリセラー以外のMVNO)は、このチャートのどこにマッピングされるのでしょうか?

MVNOの類型と日本のMVNO

 業界内では広く定着している分類法とはいっても、図1はやはり概念的なもので、世界各国のMVNOには正しく当てはめることができない、あるいは正しく当てはめようとすると難しいケースも存在します。

 日本では、法制度上ではフルMVNO、ライトMVNO、ブランデッドリセラーの区別はありません。日本におけるMVNOは、電気通信事業法施行規則や電気通信事業報告規則(いずれも総務省令)により制度上の定めがなされていますが、その中にはMVNOが備える機能によるMVNOの分類はなく、どのような事業者を「フルMVNO」「ライトMVNO」と呼ぶかについては決められていません。業界団体(テレコムサービス協会MVNO委員会)でも、「フルMVNO」「ライトMVNO」の定義は決めていません。

 特に現在、日本で多く見られる「レイヤー2接続」のネットワークアーキテクチャを持つMVNO(→バックナンバー)では、認証サーバや、コアネットワークの一部(PGW等)をMVNO側で運用していることから、まさしく図1の「ライトMVNO」「フルMVNO」の中間とも考えることもできる状況です。

 ただ、これまで海外のMVNO関係者とも意見交換をした経験から、日本の「レイヤー2接続」のMVNOは、分類としては「ライトMVNO」とするのが適切だと筆者は考えています。ではなぜコアネットワークの一部とはいえ、自前で運用する日本のMVNOを「ライトMVNO」だと考えるのか、次にそれを説明しようと思います。

「フルMVNO」とは何か?

 フルMVNOの最も重要な要素は「独自のMNCを持つ」ことです。MNCとはMobile Network Codeの略で、移動体通信において、事業者のコアネットワークを識別する固有の識別子となります。

 そのため、コアネットワークを運用しているMNOは全てそれぞれのMNCを保有しています(さまざまな事情により複数のMNCを運用しているMNOもいます)。このMNCは、携帯電話会社が他社の契約者に電話やSMSをつなげるために、あるいはローミングのために、必要なコアネットワーク間の接続の際に、互いを技術的に識別するために用いられるものとなります(図2)。

フルMVNO
図2

 それではMVNOについてはどうでしょうか。MVNOでは、ライトMVNOであるか、フルMVNOであるかによってMNCを本来持つのかどうかが分かれます。コアネットワークを持たない「ライトMVNO」では、コアネットワークの識別子であるMNCは不要です(持っていても意味がなく、持つこともできない)。翻って、自らのコアネットワークを持つ「フルMVNO」では、MNOと同様に固有のMNCを持ち、他事業者のコアネットワークと接続する必要がある、ということになります(図3)。

フルMVNO
図3

 図2では事業者間のネットワーク接続の役割として(1)電話・SMS、(2)ローミングの2つを挙げていますが、図3のフルMVNOのケースでも基本は同じです。

 ただ、MNOは、他社の基地局を使用する「ローミング」の実現以外では、データ通信についてコアネットワーク間の相互接続が不要であるのに対し、フルMVNOは基地局を持っていないため、最低1つの国内MNOとコアネットワークを接続する必要があります。

 また、音声とSMSについては、(仮に提供しようとすると)MNOと同様に国内・海外のMNOと接続をする必要がありますが、図3では国内分の表記を省略しています。

 日本のMVNOが、コアネットワークの一部を持ちながら、「ライトMVNO」だと筆者が考える理由は、日本のMVNOはMNCを持っていないからです。日本のMVNOは、コアネットワークの一部を保有していますが、その設備はホストMNOのコアネットワークとインターネットとの境界線に置かれたゲートウェイの部分に限られ、ホストMNOとの接続用途に限られます

 このような設備は事業者固有のMNCによって識別されるべきものではありません。ホストMNO以外の国内・海外のMNO、MVNOからは、日本のMVNOのコアネットワークは、そのホストMNOのMNCによって識別されるコアネットワークの「一部」にしか見えないのです。このように、MNCによるコアネットワークの識別や接続を行わない形態であるため、日本のMVNOは(例えコアネットワークの一部を有するとはいっても)「ライトMVNO」だと考えることが適当でしょう。

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