ボタン1つで「○○Pay」を簡単に実装 OrigamiがQRコード決済事業に参入する狙い:モバイル決済の裏側を聞く(1/3 ページ)
QRコード決済全盛の昨今、LINE Payと並んで国内で最初期からサービスを提供しているのが「Origami(オリガミ)」だ。2016年5月には「Origami Pay」の名称で正式サービスをスタート。Origamiのビジネスモデルやその背景について聞いた。
モバイルアプリを使った決済サービス、いわゆる「QRコード決済(バーコード決済)」の話題が国内で盛り上がっている。「なぜいま日本で『QRコード決済』が注目を集めているのか? 」ではこのあたりの背景について説明したが、その後もYahoo! JAPANやKDDIなど続々とフォロワーが市場参入を表明している。
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POSやタブレット(mPOSと呼ばれる)へのアプリ追加だけで簡単に新しい決済方法の導入が可能で、電子マネーやクレジットカードと比べても設備投資コストが少なくて済むため、各社ともにポイントプログラムを組み合わせた顧客の自社経済圏への囲い込みを目指し、このような飽和気味とも思える状況が生まれつつあるのだと考えられる。ただ、いずれにせよ、ユーザーが頻繁に利用するサービスはごく限られたものへと集約されるため、遠からず淘汰(とうた)の波が訪れ、波に乗れなかったサービスは次第にフェードアウトしていくことになると筆者は予想している。
さて、こうしたQRコード決済全盛の昨今、LINE Payと並んで国内で最初期からサービスを提供しているのが「Origami(オリガミ)」だ。もともとはオンラインコマース向けのアプリ提供からスタートし、主にアパレル業界を中心にパートナー企業を獲得していた。2015年10月に「Origami 決済(Pay with Origami)」という対面決済サービスのβ版の提供を開始して以降、2016年5月には「Origami Pay」の名称で正式サービスをスタートし、Alipayとの提携などを経て加盟店開拓を進めている。
特徴的なのは、競合他社が既存事業者としてのエコシステムをベースにQRコード決済(対面決済)の市場開拓を行っているのに対し、Origamiはこうしたバックグラウンドを持たず、クレディセゾンとの提携に見られるように自身の決済/マーケティングのプラットフォームを外部提供するなど、オープン対応を主軸にしている点にある。
今回はこのOrigamiのビジネスモデルやその背景について、康井義貴社長とマーケティング部ディレクターの古見幸生氏に話をうかがった。
金融の世界で起きつつあるインターネット革命
現在ではQRコード決済のサービスを提供する事業者の1つとして認知されているOrigamiだが、2012年2月の創業から6年が経過したスタートアップ企業だ。創業者の康井氏はもともとリーマンブラザーズ(Lehman Brothers)の出身であり、長らく金融畑を歩んできた人物だ。新しい会社も「いま金融の世界に大革命が起きようとしている。ここ何ができるのか」との考えからスタートしている。
同氏によれば「いま金融の世界に起きつつあるのはインターネット革命。情報通信の世界で起きた変化が20年遅れて金融にやってきている」という。
「昔は情報通信のコストも高かった。電話回線を使っていくら、切手を貼って何十円といったように、AからBまで情報を動かしてその料金を徴収していたものが、インターネットの登場でタダになった。でも、タダになったからといってビジネスモデルがなくなったわけではなく、(昨今問題となっているが)Facebookがそうであるようにデータを使った新しいビジネスモデルが登場した。Googleなどがそうであるように、インターネット上に広告の仕組みができたということで、これがこの20年で情報通信の世界で起きていたこと。これが金融の世界にこれから起こることになる」というのが同氏の考えだ。
既にその兆候は中国などでは起きつつあり、Ant Financialの「Alipay(支付宝)」やTencentの「WeChat Pay(微信支付)」のように、トランザクションそのもので稼ぐよりも、むしろ利用者の行動データ取得と活用に主軸を置いたデータマーケティングの業態にシフトしているケースも増えている。
なぜ金融の世界の動きが遅かったかという点だが、各国で異なる「規制」が障壁になっていたことは言うまでもない。また情報通信のケースと同様に、「送金」という仕組みは非常に高コストであることが知られている。理由はいくつかあるが、こうした送金窓口には専用線が利用されていることもあり、少額決済においても吸収できないコストとして重くのしかかっているからだ。
「A地点からB地点までお金を動かすということが非常に高コストで、今日でも高いままの状態が続いている。例えばクレジットカードを使うと3〜4%の手数料が取られ、地方に行くと5%、海外送金は3000円取られ、日本国内でも300円を取られる。ここにインターネットが出てきたことで、送金にも情報通信と同じような変化が起きつつあり、具体的にはやがてゼロに近づいていくだろう。
例えば日本での小売のカード決済手数料は3.2%で、これが米国だと2.7%くらい。中国では0.4%くらいまで下がってきており、これから上昇していく絵は誰も想像できず、下がっていく一方だ。これは必ずしもネガティブに捉える必要はなく、インターネットによってコストそのものが下がっていき、この仕組みでデータを使って新しいビジネスが創造できると考えるべき」と康井氏は金融革命にある背景を語る。
同氏が挙げる新しいビジネスとは、「CRMや販促を含めた広告ビジネス」「新しい(形の)金融ビジネス」の2つだという。この中で2012年の創業時からOrigamiが目指しているのは「資金移動の新しいインフラを1から敷きに行きたい」という目標だ。
「日本はキャッシュレスで諸外国に比べて遅れている」という文言はさまざまな場面で見かけるが、逆をいえばそれだけ可能性があることの裏返しでもある。「実はオンライン決済の市場はまだ非常に限られていて、国内でいえば12兆円や13兆円といった数字しか動いていない。一方でオフラインの世界は140兆円の規模があり、10倍以上の開きがある。
ただ、オフラインの世界ではほとんどの人のポケットの中にスマートフォンが入っているにもかかわらず、実際には80%の割合で(現金という)貝殻を持ち歩いて物々交換している。もちろんクレジットカードで決済する場合もあるが、(データ取得を念頭に置いた)インターネット決済ではないので何もデータがたまっていかない。
『せっかく土地を借りて上物を建てて人件費をかけて商売をするんだから、データを取らなきゃダメだよね』というのが“オムニチャネル”の考え方だが、これがなかなかできていない。せっかく皆のポケットに“インターネット”が入っているのに、これを活用しないのはもったいない。Amazonが当たり前のようにやっているデジタルマーケティングの仕組みを、オフラインの世界に持ち込む」というのがOrigami Payというわけだ。
とはいえ、創業したての企業に壮大なプランを実現するのはなかなか難しい。「顧客からお金を預かって銀行のような業務を行うには数百億規模の資金が必要になる。オフライン決済に必要な加盟店開拓のような泥臭い仕事にはさらにお金がかかるため、まずは数億円の資金を集めてオンラインコマース事業からスタートした」(康井氏)という。
マーケティング部ディレクターの古見氏は「金融の世界で重要なのは信用」というが、まずは実績から積み上げていくことになる。「最初にオンライン事業を選んだ理由は一番資本的リスクが少なかったから。まずはECの世界でお金が動く仕組みを作ってしまい、その間に加盟店や顧客を集めた。雑貨やファッションを中心に手掛けていたのは、Amazonとか競合がいないようなニッチな市場を選ぶため。
そこで数字が伸びた後にソフトバンクなどの資本が入り、十数億円程度の資金がたまったので、ようやくオフラインの世界へとやってきた。(QR決済としての)スタート時期が早かったこともあり、事業は非常に好調に伸びており、2018年の春先からいろいろ新しい提携について発表していきたいと考えている」と康井氏は説明する。
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