日本のRCSは「世界最先端」――GSMA事務局長に聞く日本と世界の携帯電話市場(1/4 ページ)
移動体通信(携帯電話)に関する世界規模の業界団体「GSM Assosication(GSMA)」のマッツ・グランリド事務局長が来日。携帯電話市場についてあれこれ聞いてみた。
世界中の通信事業者はもちろん、端末メーカーや通信インフラメーカーなどが加入する「GSM Assosiation(GSMA)」。移動体通信(携帯電話)関連するものとしては世界最大規模の業界団体だ。
昨今のGSMAは「Mobile World Congress」の主催者としてのイメージが強いが、次世代通信やそれに付随する各種規格の策定・普及を行う団体としての側面も忘れてはならない(むしろこちらが“本業”ともいえる)。その最近の成果物が、SMS(ショートメッセージ)の次世代規格として登場した「RCS(Rich Communication Services)」だ。
5月9日から提供が始まった3キャリア共通のメッセージサービス「+メッセージ(プラスメッセージ)」も、RCSに準拠したサービス。6月21日からはiOSデバイス(iPhone・iPad)にも対応した。
前置きが長くなったが、ITmedia MobileはGSMAのマッツ・グランリド(Mats Granryd)事務局長にインタビューする機会を得た。グランリド氏はスウェーデン出身で、同国に拠点を構える通信機器メーカー「エリクソン」に15年間在籍し、GSMA入りする直前には同国を含む9カ国で事業を展開するキャリア「Tele2」の社長兼CEOを務めていた。
彼にとって、日本や世界の通信業界はどのように見えるのだろうか。率直な所を聞いた。
通信のグローバルトレンドは日本から始まる
―― 今回来日した目的は何ですか。
グランリド氏 今回は、新聞社のセミナーで講演することが直接の目的です。
できる限り頻繁に来日しようとは思っています。日本は電気通信の分野ではパイオニアですし、(通信分野における)グローバルなトレンドは日本から始まることが多いですから。
―― 日本の通信業界について、何か思うところはありますか。
グランリド氏 今、通信業界は5G(第5世代移動体通信技術)を始めとした高度な通信と、AI(人工知能)やビッグデータといったインテリジェンスが組み合わせた「インテリジェントコネクティビティ(知性を持った通信)」を実現する方向に進んでいます。
その意味では、日本ではその「開拓者」としての役割を果たしていると思います。NTTドコモは5G、KDDIは本人確認ソリューション、Pepper(ロボット)を持つソフトバンクはAIの面で、それぞれ良い例になっていると思います。
RCSでは“先進的”な日本
―― ということは、5Gを含む通信分野において、日本は世界の先を走る存在ということなのでしょうか。
グランリド氏 良い質問です。
5G(の商用利用)という点では、日本は最先端ではありません。というのも、韓国、中国、UAE(アラブ首長国連邦)や米国は2018年中に商用サービスを始める見通しだからです。
日本やオーストラリアを含む数十カ国は、それ以降の商用化を目指しています。日本は2020年に東京オリンピックがあるので、それに向けて(商用化を目指す)という話になっていると思います。
一方で、他の分野では先を行くものもあります。例えばRCS、日本では「+メッセージ」というサービス名ですが、ここは(世界の)先を行っていると思います。
―― RCSの導入において、日本はむしろ遅れた印象があるのですが、そうではないのでしょうか。
グランリド氏 全然そんなことはありません。+メッセージは3キャリアが同時に始めたサービスです。これは(世界的に見て)ユニークな取り組みですし、(普及促進の上で)正しいやり方だと思います。
実は、異なるキャリアが統一プラットフォームでRCSを開始したのは、(現時点では)日本が世界で唯一です。(RCSの規格を策定したGSMAとしても)勇気づけられます。
―― 海外では各キャリアがバラバラに(異なる基盤で)RCSを導入しているということでしょうか。
グランリド氏 そうです。
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