Netflixが意外とデータ容量を消費しない理由 本社で見た最新テクノロジー(1/3 ページ)
Netflixのストリーミング動画を流しっぱなしにしたところ、意外とデータを消費しませんでした。SD画質のベーシックプランでの時間とはいえ、きれいな映像だったので不思議に思っていました。ちょうどそんなとき、Netflixが米国ロスガトスの本社に日本の報道陣を招くイベントを開催したので、参加してきました。
私事ですが、以前、仕事の関係でスマホをデータ通信制限状態にする必要があり、1日中、動画を見まくるという珍しい経験をしました。AndroidスマホでYouTubeやGoogle Playの映画、Netflixのストリーミング動画を流しっぱなしにするというぜいたくを味わったのですが、そのときに感じたのが、ストリーミング動画は意外にデータを消費しないということでした。
見たい作品がそろっていて、連続ドラマは1話が終わると次のエピソードが自動で再生されるので面倒がないということで、最終的にはNetflixをずっと再生していたのですが、半日再生を続けていても1GBをやっと超えるくらい。auのフラットプラン25 Netflixパックも、25GBで100時間も視聴できるとされています。SD画質のベーシックプランでの時間とはいえ、きれいな映像だったので不思議に思っていました。
ちょうどそんなとき、Netflixが米国ロスガトスの本社に日本の報道陣を招くプレスイベントを開催。運よく私も参加することができました。Netflixは時々こうしたプレスイベントを行っていますが、今回はモバイル端末向けの技術を中心に紹介されました。
Netflixといえば、漠然とエンターテインメント系企業だと認識していたので、ここまでテクノロジー志向の企業だとは思わず、幅広い研究に感心させられました。また、なぜ意外にデータを食わないのか、その謎を知ることもできました。デジタルの知識が浅い私でもどうにか理解できた、Netflixの高度な配信技術の一端をご紹介します。
カリフォルニア州ロスガトスにある緑の多いNetflix本社。ロスガトスはサンノゼの南西に位置する、小さくとも上品な街で、アップルパークからクルマで30分程度の距離。Netflixはコンテンツ制作と、配信などテクノロジー分野の2つで成り立っており、ロスガトスはテクノロジー分野の拠点だ
ユーザーの好みを理解するための工夫
米国ではT-Mobileがデータ無制限プランでNetflixを無料提供。日本ではauがNetflixのバンドルプランを提供し始め、契約は好調のようです。Netflixの調査によると、日本ではコンテンツをスマホで視聴する率が他国に比べて高いという結果が出ていますが、モバイル端末でのインターネット利用が普及している地域では、モバイルで視聴する人が増えているのは世界的な傾向。そういった背景もあり、Netflixは現在、スマホ向けの技術開発に一番大きな投資をしています。
モバイルデータ通信とWi-Fiの利用状況。日本は通勤/通学、帰宅時間に加え、ランチタイムの利用が多い。シンガポールは日本と似た傾向だが、ランチタイムの利用は高くない。チリはモバイルでの利用が多いが、フィンランドはさらに多く、1日を通してモバイルデータ通信の利用が多い。ネットワークが整っていることに加えデータ通信料金が安価という背景がある
膨大なコンテンツの中から、ユーザーに的確な作品を提案するために、さまざまな技術が駆使されています。配信作品は、ユーザー本人の嗜好(しこう)と平均的な嗜好を考慮して並んでいます。例えば、ユーザーがロマンチックコメディーを1本見たとします。普通に考えると、次のお勧めにロマンチックコメディーばかり並ぶだろうと思いますが、「これは賢いやり方ではない」と、プロダクト担当副社長のトッド・イェリン氏は言います。1列目にはもちろんロマンチックコメディーを並べますが、次の列には興味を持ちそうな他のジャンルの作品が並びます。
ユーザーの嗜好を判断するために、Netflixの利用開始時に好みの作品を選ぶ手順がありますが、年齢データは取得されません。「85歳以上の女性でもホラー映画が好きな人もいれば、19歳の若い男性でも花やウェディングドレスのドキュメンタリーが好きな人もいる」という理由からです。なお、画面に好みの作品が並んでいないと感じたときは、作品に「いいね!(サムズアップ)」「よくない(サムズダウン)」を付けるといいそうです。また、アカウント設定で、嫌いだと思ったタイトルの視聴履歴を削除すると、レコメンドの内容が変わってくるそうです。
スマホの小さな画面では、見たいと思わせる作品のタイトルイメージを並べるのにも工夫が必要です。実は1作品に対し10〜20個のイメージが用意されていて、ユーザーの嗜好によって表示されるイメージが異なります。Netflixオリジナル作品の方が数は多いとのことですが、全ての作品で複数のイメージを用意しています。同じ作品でも、あなたが見ている作品のイメージと私が見ているイメージが違っているかもしれないのです。イメージだけでなく、トレーラー(予告映像)も複数あり、ユーザーごとに変えているそうです。
1つの作品にさまざまなタイトルイメージを用意。緑の数字は、イメージに対して印象の調査を行った際の支持率。Netflix側が高いと予想したイメージとは別の、左上のイメージが最も支持されたことから、ユーザーの嗜好に合わせたタイトルイメージを表示するようにしたという
縦画面のまま見られる機能も
スマホを縦に持ったまま、縦表示の動画が見られる「プレビュー」(2018年10月上旬時点ではiPhoneのみ)もスマホならではの機能です。端末を持ち変えることなく動画で作品の内容をチラ見でき、スワイプで簡単に次の作品のプレビューに切り替え可能。「再生」をタップすると初めて横表示になって本編が始まります。縦型のプレビュー動画は、私自身は新鮮に感じましたが、Instagramに慣れている人には当たり前の視聴体験かもしれません。Androidアプリは、2018年末か2019年始めには対応するそうです。
一方、Android用のアプリには「まもなく配信」というタブがあります。ここに掲載される作品は毎日内容が変わり、次の2週間に放送を開始するようなコンテンツを紹介しているのですが、自動で予告の動画が再生されます。スクロールしていくと、次々に配信予定作品の動画をチェックでき、暇つぶしにもいい機能です。「マイリスト」のボタンで、後から見たい作品として登録でき、配信が始まると通知が届きます。この機能を追加してから、この動画を見るためだけにアプリを頻繁に開く人が多くなったそうです。
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