Netflixが意外とデータ容量を消費しない理由 本社で見た最新テクノロジー(2/3 ページ)
Netflixのストリーミング動画を流しっぱなしにしたところ、意外とデータを消費しませんでした。SD画質のベーシックプランでの時間とはいえ、きれいな映像だったので不思議に思っていました。ちょうどそんなとき、Netflixが米国ロスガトスの本社に日本の報道陣を招くイベントを開催したので、参加してきました。
Wi-Fi接続時に自動でダウンロードする機能も
モバイルで動画を視聴する場合、やはりデータ通信容量が気になります。Netflixは2016年からコンテンツのダウンロードに対応し、モバイルデータ通信を使わずに視聴できるようにもなっていますが、そこに一工夫加えたのが「スマートダウンロード」です。
Wi-Fiでコンテンツをダウンロードするとデータ消費を抑えられますが、ちょっと面倒に感じる作業です。また、ストレージの空き容量の心配もあり、見終わったらいちいち削除しなくてはなりません。それを自動化したのがスマートダウンロードです。
連続ドラマを見るのに便利な機能で、1話を見終わると自動的に削除され、次のエピソードがWi-Fi接続時に自動でダウンロードされます。例えば、毎日通勤中にドラマを見ているなら、通勤中に見たものは削除され、Wi-Fiのある職場で新たなコンテンツをダウンロードし、帰宅中に見るという使い方ができます。スマートダウンロードの設定をオンにしておけば、1話目だけダウンロードしておけばOKです。
ダウンロード機能はグローバルでニーズの高い機能だそうです。米国では通信環境の悪い地域もあり、そういった場所に子どもを連れて行く際に助かると、Netflixの担当者は自身の体験を語っていました。なお、スマートダウンロードを利用できるのは現在Androidのみですが、今後はiOSでも利用可能になる見込みです。
データ通信量を抑える画像圧縮技術
モバイル端末で動画を見る際に気になるのはデータ通信量。それを抑えるNetflixの画像圧縮技術も非常に興味深いものでした。再生ボタンをタップしたら、待機時間がなく、すぐ映像が始まって見られるように、モバイル用の動画のエンコーディング方法が採用されています。また、データ容量を抑える工夫もされています。
例えば、Netflixのオリジナルドラマ「JESSICA JONES」の場合、作成直後は4Kクオリティーの1話分で293GB。ビットレートにして748Mbpsです。これをモバイルで視聴できるように、小さくしなくてはいけません。世界には通信速度が遅い地域がまだありますし、コンテンツをダウンロードして見るにもデータは小さいにこしたことはありません。
Netflixがストリーミングサービスを開始した2011年当時は、映像を変換するコーデックは1つのみで、ビットレートは1050kbpsでした。それが2015年には、アニメはもっと小さなデータに、アクション映画など動きの激しいものは大きめになど、作品ごとにエンコーディングを変える「Per-title encording」を採用します。さらに、2018年にはシーンごとにエンコーディングを変える「Per-shot encording」を採用。効率良くエンコードすることで、画質を維持しつつデータ量を抑えています。
Netflixは新たに「AV1」というコーデックを開発していて、これを使うとPer-shot encordingよりもさらに視聴時間を伸ばせるとしています。きれいな映像なのに、意外とデータを食わない理由は、こうしたきめ細かな圧縮技術にあったことが分かりました。
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