PayPayの“100億円キャンペーン”は成功だったのか?
コード決済サービス「PayPay」の、100億円還元キャンペーンが、開始からわずか10日で終了した。今回の100億円還元キャンペーンは「成功」といえるのだろうか。PayPayの認知とユーザーの拡大という点では成功といえるが……。
祭はあっさりと終わった。
コード決済サービス「PayPay」の、史上最大級ともいえる100億円還元キャンペーンが、開始からわずか10日で終了した。
12月4日から13日まで実施していた「100億円あげちゃうキャンペーン」では、決済額の20%をPayPay残高に還元する他、10〜40回に1回の確率で全額(最大10万円相当)が還元されるという特典もあり、多くのユーザーが飛びついた。
キャンペーンの主戦場となったのが、ビックカメラやヤマダ電機などの家電量販店だ。キャンペーン目当てとおぼしきユーザーが売り場で列をなす様子が見られ、まさに「お祭り」といえる様相を呈していた。
PayPayは、もともとキャンペーンの期限を2019年3月31日までとしていた。つまり100億円を還元するには、約4カ月がかかるとみていたのだろうが、ふたを開けたら、わずか10日で100億円を達成。これはPayPayの想定を遙かに上回るペースだ(あるいは、このペースは想定通りとした上で、第2、第3のキャンペーンを準備している可能性もあるが)。
ユーザーの認知は拡大した
今回の100億円還元キャンペーンは「成功」といえるのだろうか。さまざまな視点があるが、「すさまじい速さで100億円還元を達成した」という点では大成功だ。そして、キャンペーンの目的である、PayPayの認知とユーザーの拡大という点でも成功といえる。
筆者はファミリーマートで何度か買い物をしたが、「PayPayで」と言って支払っている人を何度か見た。おサイフケータイで支払っている人を見ることはいまだに少ないが、サービスが始まったばかりのPayPayのユーザーを早くも見られたのは驚きだ。それだけキャンペーンのインパクトがすごかったことを物語っている。
SNSを意識した仕掛けも巧妙だった。PayPayで決済をすると、いくら還元されたのかがその場で表示される。特にソフトバンクとY!mobileのユーザーは10回の1回の確率で全額が還元されるから、ドキドキしながら決済をした人も多かったはずだ。TwitterやFacebookなどでは、「PayPayで20%還元された」「全額還元された!」といったコメントとともに、支払い画面のスクリーンショットが多数投稿された。
この支払い画面、「詳細を閉じる」を押すと、決済番号や支払い方法が隠れ、「どこに、いくら払って、いくら還元されるのか」しか分からなくなる。支払い画面を気軽にシェアできるようにしたことで投稿が増え、認知拡大に貢献したといえる。
店舗開拓のハードルも下がる
店舗側への認知が拡大したことは、言うまでもない。PayPayの店舗は、ソフトバンクグループの営業部隊が総力を挙げて開拓しているが、名も知らぬ決済サービスを導入してもらうのは、なかなか厳しい。しかしキャンペーンで一気に名を上げたことで、導入のハードルがぐっと下がったはずだ。「ああ、あのPayPayね」と。
そして注目したいのは、12月のキャンペーンで20%または全額が還元される「2019年1月10日」。この日以降、PayPayユーザーの残高は(もともとのチャージ分を含め)100億円以上になる。このタイミングでPayPayの加盟店になれば、今度はお店側に100億円が還元されるチャンスが生まれる。しかもPayPayの加盟店はサービス開始から3年間は決済手数料が無料ということで、当面のデメリットはほぼない。キャンペーンにより、ユーザーが増えることで、加盟店が増えるという流れは作れたといえる。
短すぎる期間、告知タイミングにも疑問
一方で気掛かりなのが、キャンペーン期間が短すぎたこと。PayPayの存在は知っていて、結局使うことなくキャンペーンが終わってしまった……という人や、14日以降、PayPayの20%還元目当てで買い物を楽しみにしていた人も多いはずだ。そういう人たちは、このままだと今後もPayPayは一度も使わないだろう。モバイル決済サービス自体を初めて使う人たちを取り込んだり、他の決済サービスから乗り換えてもらったりするには、10日では不十分といわざるを得ない。
キャンペーン終了時刻からわずか2時間前に告知をしたのも、賛否が分かれる部分だ。ユーザー目線では、あらかじめ14日以降にPayPayで買い物をするつもりだった人が予定を変更する余地を考えると、遅くとも前日には教えてほしいところだが、そうすると、キャンペーン終了日にユーザーが家電量販店に殺到する事態になりかねない。
PayPay広報はキャンペーン終了時期について「お客さまにご迷惑が掛からない方法で告知を行う予定です」とコメントしていたが、お客さま=消費者ではなく、店舗のことを指していたのかもしれない。
決済ができない不具合、多重決済の事故も
サービス開始当初から不具合が多発したのも目に付いた。特にキャンペーンが始まった12月4日は、ユーザーが殺到したことで決済処理が追い付かず、誤って複数回決済する事故も起きた。それ以外にも、PayPayが断続的に利用しにくい状況が続いた。13日の18時5分頃〜19時26分頃には突如「緊急メンテナンス」が行われ、PayPayの全機能が利用不可能になった。夜中や、事前告知した上でメンテナンスを行うのならまだしも、平日夕方にいきなり1時間半近くも使えなくなるのは、決済サービスとしては致命的だ。
12月6日には、ソフトバンクの通信障害に見舞われたソフトバンクユーザーがPayPayを使えなくなるという不運もあったが、PayPay側に起因する障害があまりにも多かった。店舗側にとっても、決済できなくなることでお客さんに迷惑を掛けることになるので、導入を拒む要因にもなりかねない。100億円のインパクトで想定を超えるユーザーが集まったことは想像に難くないが、しっかり対策してほしい部分だ。
今後の施策に期待
瞬間風速的なお祭りになったPayPayのキャンペーンだが、これで終わりではない。いや、終わっては意味がない。PayPayもプレスリリースで「今後も新たなキャンペーンの実施を予定しております。詳細は、決まり次第ご案内します」と予告しているので、第2、第3のキャンペーンを仕込んでいることだろう。ここで、今回のキャンペーンで取り込めなかった層をいかに取り込み、100億円が還元されたタイミングでいかに継続して使ってもらう仕掛けを用意できるかが、PayPayの腕の見せ所といえる。
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