“余計なもの”報道の真相は? 「Mate 20 Pro」の売れ行きに影響は? Huawei呉波氏を直撃:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(1/2 ページ)
日本でも発売したHuaweiのフラグシップスマホ「Mate 20 Pro」は完成度が高く売れ行きも好調のようだが、現時点では猛烈な逆風が吹いている。一部では「余計なものが入っている」といった報道も出ている。同社の端末事業部は現状をどのように見ているのか。
11月30日に、フラグシップモデルの「Mate 20 Pro」を発売したHuawei。同モデルは、大手キャリアのソフトバンクが取り扱いを表明しており、間もなく販売が開始される予定だ。P20 Proで好評だったトリプルカメラの仕組みを変え、新たに超広角レンズを採用。AIの処理能力を上げた「Kirin 980」を採用し、動画撮影時に背景のみモノクロにできる「AIカラー」など、ソフトウェアでもさまざまな新機能を実現している。まさにフラグシップと呼ぶにふさわしい1台で、実際に触ってみたが、その完成度は非常に高い。
フラグシップモデルの性能が評価され、2018年はドコモやソフトバンクなどの大手キャリアにもこうしたモデルが採用されるようになったHuaweiだが、同社は必ずしも順風満帆とはいえない。むしろ、現時点では猛烈な逆風が吹いている状況だ。対イランの制裁に違反したとして、同社のCFOがカナダで逮捕されたことを皮切りに、日本政府も名指しこそ避けたものの、事実上、HuaweiやZTEなど、中国ベンダーの通信設備を排除する方針を固めた。
実際、Huaweiの基地局が3キャリアで最も多いソフトバンクも、5Gでの導入は政府の方針に従うとしている。これらは主にネットワーク設備の話だが、一部では「余計なものが入っている」といった報道があるなど、疑念の目は端末にも向けられている。現時点では各社とも端末の販売を取りやめるなどの方針は出ておらず、情報を盗み取っているといった証拠も出ていないが、各種報道を見て、買い控えるユーザーが出てきても不思議ではない。
追い風から一転、強烈な逆風が吹きつけているHuaweiだが、同社の端末事業部は現状をどのように見ているのか。Mate 20 Pro発売から一連の報道があった後の販売動向や、各種疑惑の真相を、ファーウェイデバイスの日本・韓国リージョン プレジデントの呉波氏に直撃した。
Mate 20 Proは量販店でiPhoneよりも売れている
―― Mate 20 Proの販売動向を教えてください。発売直後にちょうどPayPayのキャンペーンも始まりましたが、その影響がどう出ていたのかも合わせて教えてください。
呉氏 Mate 20 Proは11月28日に発表会を行い、すぐに発売しましたが、今でも供給が追い付かない状況です。実際、われわれのパートナー企業の需要を上回る売れ行きで、急いで他のところから調達したり、運送の手配をしたりといった対応をしてきました。
12月4日のBCNさんのデータによると、Mate 20 Proは家電量販店で全てのスマホを抜いて1位になりました。iPhoneも含んだデータで、弊社のフラグシップが1位になったのはこれが初めてのことです。しかも11万円という価格で、です。同時期にiPhone 8を0円で販売している中で1位になったのは、本当に予想を上回る結果でした。
“PayPay祭”ではApple製品が多く買われていたようでしたが、同時にHuaweiの製品も売れていました。ユーザーは買った製品をSNSにアップロードしていましたが、Huaweiのスマホに限らない、さまざまな製品を見ることができました。しかし、社内の集計によると、このPayPay祭で一番影響を受けたのはタブレットでした。普段と比べると、30%から40%伸びていました。
―― Mate 20 Pro以上にタブレットが売れたのは、販売店に在庫がなかったからでしょうか。
呉氏 前もって準備していたため、数は潤沢にありました。確かに一部のお店では欠品していたこともありましたが、少量でも在庫があるお店も多くありました。実は去年(2017年)、同時期にMate 10 Proを発売しましたが、Mate 20 Proは準備していた数がその3倍にのぼります。
―― ハイエンドでは今までにない売れ行きのように見えますが、どう受け止めていますか。
呉氏 常に販売ランキングの上位に入っているわけではありませんが、過去と比べて増えたという印象はあります。11万円という価格帯のフラグシップモデルですが、発売に向け、パートナー企業と予測を立てていたころから自信はありました。価格.comでの満足度も1位で、人気度は2位でした。
―― 今回はソフトバンクでもほぼ同時期に発売します。これはなぜでしょうか。
呉氏 SIMフリーに関しては、過去4、5年間、この時期にMateシリーズのフラグシップを発売していますが、今回はソフトバンクさんにこの製品を認めていただき、発売に至っています。ただ、どの製品を採用するかは通信事業者が決めるもので、弊社は関知していません。
―― ソフトバンクの売れ行きはどうなると見ていますか。
呉氏 一部のMVNOでは端末の購入補助が付いていますし、家電量販店にもPayPayがありましたが、それは限定的です。ソフトバンクさんから発売されれば端末購入補助が付くので、一部の消費者を引きつけることができると思っています。
―― ソフトバンクは分離プランを入れ、新規ユーザーは端末購入補助のあるプランを選択できませんが、それでも期待できるということでしょうか。
呉氏 量販店の店舗数でいうと1000店、2000店ですが、ソフトバンクさんは自分たちだけで2300から2400の店舗を持っているので、カバレッジも広がります。
―― 今までは上位モデルとほぼ同時期に、liteも発売していましたが、Mate 20 liteはビックカメラ専売になりました。この経緯と、今の売れ行きを教えてください。
呉氏 Mate 20 liteが専売になっているのは、ビックカメラさんの強い意向があったからです。今の販売状況はわれわれの予想をやや上回っているところです。日本では、メーカーがお店を決めて専売にすることもあれば、お店側も製品を専売で取り扱いたいということもあります。これも日本の商習慣の1つだと思っています。
1つ例をいうと、うちの息子はガンプラが好きなのですが、中にはお台場の店舗でしか手に入らないものがあります。あれと同じですね。海外メーカーとして、現地化の一環としてこのようなことをしてみました。
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