News 2002年12月18日 09:12 PM 更新

CD-Rの「音」を考える
プレクスターに聞く「音の良いCD-Rドライブの作り方」(3/3)


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 こうすることによって、ドライブ内部で反射したレーザーの光の影響を抑え、光学的なノイズを減らすことができるという。

 「極端な話、真っ暗な部屋で書くと音がいいんです。だから、ドライブの中も黒くした方が音がいい。音が締まってくるんです。これは経験則。いろいろ実験してきたら、これが一番良かった。多分、サーボ系のノイズが減っているのではないかと思うんですが……」(浅野氏)。


PlexMasterでは、ドライブの色を「黒」に統一。内部もほぼ「黒」で塗られている

 メディアの色やドライブ内部の色については、以前から音が変わる要因になるとされてきた。そうした話の中では黒や緑、グレー、茶系などいくつかの色が良いと言われている。実際、メディアメーカーなどで数種類のレーベル面の色を変えて音質チェックを行ったという話も聞くし、メディアでは内周部のスタックリング部分まで色を塗った方が良いと言われている。いずれも、基本的には光の乱反射を抑制し、音質の変化を狙ったものだ。

 「エナメルをシューッとやると違いますよ。それはオーディオでもありますね。純粋に反射した光の影響を考えると“黒”が一番無難だと思います。多少反射しても良いというであれば、緑とか茶系とかもありだと思います」(草野氏)。

 ただし、浅野氏によると「黒にすると音が締まる分だけ、歪みが目立つようになる」ため、音質向上を狙う場合は「回路もしっかりしていないとだめ」と話す。つまり、黒に塗ると引き締まった音になる分、かえってアラが目立つようになってしまうというわけだ。このため、トータルで調整をしないとかえって、良くないこともあるわけだ。

SCSIとATAPIどっちがいい?

 PC用のCD-R/RWドライブでは以前から1つの論争があった。それはSCSIとATAPIのドライブでは、どちらの方が音が良いかである。この点をPlexMasterの開発を担当したIS技術部設計管理課主任技師の小林 照幸氏に聞くと、「やっぱりSCSIが良い」という話だった。

 「ATAPIとSCSIだと、ATAPIだと信号ラインがすべてマザーボード上の中に入ってしまいます。SCSIだとSCSIカード内だけで処理される部分が結構あるので、やっぱりSCSIの方が良いです」。

 原因は「バスラインが他のクロックの近くを走っていると影響を受けるから」(草野氏)だという。前回紹介したビクター/ビクターエンターテイメントのエンコードK2は、この影響を排除するための典型的な技術だった。あれもとにかく正確な信号(符号)を送るために苦心し、徹底的に影響を排除することに努めていた。

 「電源を強化するというのはもちろん1つの対策ですが、後は、信号ラインをどう通すかというところも、音に影響します。それぞれ違うところに反映してきます」(小林氏)。

 また、小林氏は、SCSIの場合「データ転送レートを落とした方が音質が向上する」と言う。例えば、ハードディスクにいったん落としてそこから記録するのとオンザフライ(CD to CD-R)で直接記録するのであれば、「オンザフライで直接書いた方が音が良い」。

 これには理由がある。記録時に使用するメモリ上のバッファを減らし、極力電気的な影響を排除できるからだ。「USBやIEEE 1394接続の機器を使用する場合、ATAPIをUSB/IEEE 1394に変換するときパラレルをいったんシリアルに変換するわけですが、そのときデータのバッファリングをします。そのバッファの精度を良くしてやると、今度は通信系のジッタが良くなります。そこでも、音が変わります。パソコンレベルで見ると、音が悪い要素がいっぱいあり過ぎるんです。そこを直すと音が良くなります。電源しかり通信系しかりです」(小林氏)。

 CD-R/RWドライブは、これまでに挙げてきたような対策を施すことで音質が変化する。小林氏によると「電源と振動対策が最も身近な音質向上の手段。60−80%は、これで良くなります。それ以上を狙うのであれば、色や部品の選別になります」という。

 ただし、最近の製品では、低価格化の影響でドライブ自体の作り自体が粗悪なものがある。そうなると、こうした対策を施してもあまり効果が得られないケースもある。「CD-Rのサーボ系が悪くて、モーターのジッタの悪い製品や面ブレに弱い製品では、効果は少ないかもしれない。それでもやらないよりはやったほうがよいですが……。ソニーのCDU948Sなど昔のドライブでこうした対策が効果あると言われるのは、ドライブの作りがしっかりしているからです」。

 また、CD-Rの音質はあくまでトータルでどうかだ。ドライブに使用されている部品を変更すると、音質は変化するが、良い部品に変更したからといって必ずしも最終的な音が良くなるわけではない。「1個所を変えるとバランスが崩れるんでそれを整えるのが大変なんです。結局のところ、音のバランスを整える、これが腕の見せ所なんですよ」(草野氏)。


PlexMasterの開発でも活用された同社のオーディオルーム



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[北川達也, ITmedia]

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