News 2003年5月14日 10:54 PM 更新

“銀塩”を凌駕するデジカメも――NuCORE、新画像処理チップ

NuCORE Technologyが最新画像処理チップ「CleanCapture」を発表。徹底したノイズ低減による高画質化と、画像圧縮効率の大幅向上、動画/静止画処理の融合が図れる次世代イメージプロセッサを使えば、銀塩フィルムを凌駕する高画質のデジカメも可能となるという

 デジタルカメラやDVカメラ向け画像処理チップを開発するNuCORE Technologyは5月14日、次世代イメージプロセッサ「CleanCapture」を発表。同日都内で、この最新画像処理チップに関する説明会を行った。

 画像処理プロセッサ専業のベンチャーである同社は、インテルや日立メディコのエンジニアが集まって1997年5月に設立。昨年5月には、元Transmeta副社長のJames Chapman氏がCEOに就任し、今年3月にはTransmetaジャパンカントリーマネージャーの和田信氏がNuCOREの日本法人社長に就任して話題となった。Transmetaからは、アプリケーション担当副社長だったRich Goss氏も和田氏とともに移籍し、現在は日本法人副社長のポストに就いている。

 今回の説明会には上記の3人に加え、同社CTOの渡辺誠一郎氏と副社長の國土晋吾氏の計5人が出席した。


説明会に出席した同社の経営陣。左から日本法人副社長のRich Goss氏、同社副社長の國土晋吾氏、同社CEOのJames Chapman氏、同社CTOの渡辺誠一郎氏、日本法人社長の和田信氏

 同社のイメージプロセッサの特徴は、デジタル技術が中心だったデジカメの画像処理にアナログの技術を取り入れ、大幅な画質向上と画像処理性能アップを図った点だ。同社の先進テクノロジーや企業理念については、ZDNetでも何度か取り上げている(技術の詳細は2002年5月の記事を、企業ポリシーについては2003年3月の記事を参照)。

 Chapman氏はイメージプロセッサの重要性について「高解像度CCDへ急速に移行している近年のデジカメでは、画像品質で差別化のキーとなるイメージプロセッサの重要性が増している。また、DVカメラでは高画質なビデオ映像と高解像度の静止画像を両立できる画像処理チップが求められている。これらの技術は、近年急伸ているカメラ付き携帯電話にも応用できる」と語る。

 第2世代となる新しい画像処理プロセッサ「CleanCapture」は、アナログフロントエンドを担当する画像処理チップと、デジタルイメージプロセッサの組み合わせという第1世代からのチップ構成を継承。アナログ側は「NDX 1260」に、デジタル側は「SiP 1270」にと、それぞれのイメージプロセッサを新しくし、機能を大幅に向上した。


アナログフロントエンドを担当する「NDX 1260」(左)と、デジタルイメージプロセッサ「SiP 1270」(右)

 新世代画像処理プロセッサのポイントは、「徹底したノイズ低減による高画質化」と、「画像圧縮効率の大幅向上」、高精度なイメージプロセッサ演算と高速処理による「動画/静止画処理の融合」だ。

銀塩フィルムを凌駕する画質のデジカメも

 デジタルカメラでは、偽色(False color Noise)や色位相ノイズ、累積量子化誤差(Digital Artifacts)、Shot Noiseなどさまざまなノイズが発生し、それが画質劣化の大きな原因となっている。

 「偽色や色位相ノイズは、色ごとのA/D非直線領域の不揃いやピクセル間のクロストークなどが原因。イメージプロセッサの演算量子化精度が不足した場合も、Digital Artifactsと呼ばれるノイズが発生する。新プロセッサは各色間の干渉がないため、実質的に色相ノイズが皆無となる。また、A/D変換時のRGBにおける色の歪みもほとんどない。デジタルバックエンドでのノイズ処理が減るため、色飽和度の問題も減少する。銀塩フィルムを凌駕する画質のデジカメも可能」(渡辺氏)。


CleanCaptureの画像(上)と、某社の5Mピクセル機の画像(下)。暗部の色位相ノイズが大幅に減っている

 ノイズ削減の恩恵は、画質面だけではない。画像圧縮効率の妨げとなるノイズ成分が少ないと、同じ解像度でより小さいファイルサイズのJPEG画像を生成できるのだ。

 「デジカメの種類や撮影する画像によって変動はあるものの、従来機の画像ファイルサイズ平均値は、1Mピクセルあたり400Kバイト前後。これがCleanCaptureでは200Kバイト前後と半分になる。ものによっては70%以上もサイズが小さくなっているケースもある」(渡辺氏)。


 さらに、第1世代では40Mピクセル/秒だった画像処理能力を75Mピクセル/秒にするなど、大幅にパフォーマンスを向上した。

 「CleanCaptureの演算性能は、55GOPS(Giga Operations Per Second)に及び、2.5Mピクセルの画像を毎秒30フレームでリアルタイム処理できる性能を持つ。これにより、どこで止めても高画質な静止画が得られる動画の記録/再生が行える。これまで、DVカメラの静止画機能やデジカメの動画機能はオマケみたいなものだった。CleanCaptureによって、本格的なデジカメとして使えるDVカメラ、もしくは大画面で楽しめる高画質動画が撮影できるデジカメが登場する」(渡辺氏)。

 CleanCaptureは、すでに国内主要メーカーに向けてサンプル出荷が始まっており、 新イメージプロセッサを搭載した次世代製品は今年第3 四半期から順次市場に登場する予定。同社では、ソフトウェアや評価キットをセットにした統合開発環境を用意し、一般的に16カ月かかるといわれているデジカメ開発サイクルを最短6カ月まで短縮できる独自の開発ソリューションを提供していく。

 「NuCOREの開発ソリューションを利用すれば、OEM企業は市場投入ペースを大幅に速めることが可能。設計サイクルが短くなっている近年のデジカメ開発競争に勝ち残るために、開発期間の短縮は重要なポイント。CleanCapture搭載製品の販売開始に向け、OEM企業への支援体制をさらに強化し、日本における事業拡大を図る」(Chapman氏)。



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[西坂真人, ITmedia]

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