色鉛筆で織りなすノスタルジックな景色 カタヒラシュンシさん:教えて! 絵師さん
色鉛筆を使ったアナログ原画でどこか懐かしい世界を生み出すカタヒラシュンシさん。アニメのようなキャラクターが、風景に溶け込んでいます。
※本記事は2015年06月時点の内容です。
絵を描き始めたきっかけは小学生のころ、カードゲームのレアカードを友達に自慢したかったからです。学校にカードを持っていくと没収されるので、模写して見せようという回りくどいやり方が発端でした。友達に「え! このレアカード当てたの!? てかそんなことより絵上手い!」と褒められたことでうれしくなり、自慢も兼ねてどんどん絵を描いていくようになりました。とても不純な動機ですね(笑)。続けて、好きな漫画家さんやイラストレーターさんの絵を模写するようになりました。オリジナルを描き始めたのは案外遅く、中学卒業後くらいからです。
本格的にイラストを描くようになったのは2014年で、それまでは絵とかけ離れた業界で会社員をしていました。現在はアルバイトをしつつ、フリーランスのイラストレーターとして文庫本やCDジャケットなどに携わっています。いろいろな人の反対を押し切ってこの道に来ましたが、絵のお仕事やこういったインタビューもいただけるようになってきたので、もちろん辛いこともありますが、今のところよい選択だったと思っています。
原画はアナログで、カリスマカラー、三菱ペリシアの色鉛筆を使って描くことがほとんどです。キャラクターの主線には細い水性ミリペンを使用しています。紙はKMKケント紙。大体A4〜A2のサイズで描いています。
筆を動かさずとも、毎日何かしら絵について考えています。好きな絵を見たり、街中で服のしわを観察したり、画像検索で資料を集めたり。作品は描きはじめれれば5日ほどで完成しますが、モチーフの選択など、描き始めるまでに少し時間がかかります。長い目で見て、焦らずじっくり精度を上げてからスピードを上げれたらいいなと考えています。
こだわりは、女の子の可愛さです。媚びない可愛さ、自然な可愛さ。キャラクターを描くことが元々好きなので、そのキャラクターの舞台となる背景にも手を抜けないよな、という意識で描いております。全体を通してどこか懐かしかったり、暖かかったり、ノスタルジックな感覚を届けられたら――と思っています。
キャラクターに関しては、上手いと思う人のいいところを片っ端から見習っているので、さまざまな方の影響を受けています。パッと思い浮かんだのは、漫画家の小畑健さん、ばらスィーさん、イラストレーターのたかみちさんなどでしょうか。風景は、鉛筆画の師匠でもある林亮太先生、それから、ジブリの男鹿和男さん、山本二三さんなどが手掛ける日本のアニメーションの背景美術です。アニメチック、漫画チックなキャラクターを風景に溶け込ませる技術を何度も映画を見て観察しております。
世界が違うと思っていた尊敬するイラストレーターの方と接点を持てるチャンスができたことがうれしいです。8年前、15歳でpixivに登録して最初にフォローし、メッセージを送ったつくしあきひとさんにフォローしていただいた時は感慨深かったです。それまでに画材やアドバイスをいただいており、現状の僕の絵だけでなく、過去のまだまだ未熟だったころも覚えていてくださって……まさに絵を描いていてよかったと感じました。
教えて! 自慢の1枚
稲付谷の路地
絵で生きていこうという意思を強めるきっかけとなった絵です。それまでただ描くことが好きで、闇雲に好きなものを描いていましたが、大きな成果が上げられない状況が続いていました。Twitterに投稿したこのイラストに対してイラストレーターの中村佑介さんがRT、コメントしてくださり、大勢の方の目に触れる機会がありました。この出来事で、もっと多くの人に自分の絵を見てもらいたいという欲が湧き、同時に、自分の絵でもっともっといけるのだ、という自信につながりました。
新緑
5月に描いた最新の絵です。上記の出来事があったのもつかの間、自分の絵が分からなくなり、筆が進まない時期がありました。この絵を描けたおかげで、自分に自信を取り戻すことができた気がします。絵の空気感やコントラストも以前よりレベルが上がったのを感じ、自分では満足していました。
この絵もまた中村佑介さんにお見せしてご意見をいただける機会がありました。先の絵との違いを明確に説明できないなど、イラストレーションという観点でまだ甘い点を指摘され、練りが足らないことを痛感しました。新しい視点に気付いたことでもっと伸びることができるとポジティブに考えています。
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