Mac Proは円筒形からモジュール式へ 限界を認めて新設計に挑むApple:ITはみ出しコラム
約3年半ぶりにマイナーアップデートをした「Mac Pro」。その次には完全新設計のモデルが出ることになりそうです。
米Appleが2018年以降に完全な新設計の「Mac Pro」を投入すると、同社が選んだ5人のジャーナリストを通じて発表しました。特徴的な円筒形ボディーを捨て、アップデートしやすいモジュール式の設計にするそうです。ちなみに、「iMac」は2017年内に新モデルを発表するとのこと。
Appleはこれまでもたまに、同社が選んだ一部のジャーナリストに発表直前の音楽サービスや人工知能への取り組みについて説明したことがありますが、まだ「パイプライン」内にある未来の製品を説明するのはとても珍しいことです。
パイプラインというのは、米国の企業が決算発表などでよく使う表現です。例えば、Appleのティム・クックCEOはよく「We are very excited about the products in our pipeline」などと言います。直訳すると、「われわれは、われわれのパイプラインにある製品群について非常に興奮している」となります。
つまり、「すごい新製品をいっぱい準備中だけど、今はまだ何かは教えないもんね」ということです。
この表現を見る度に、こんな絵を思い浮かべるんですが、
今回、年内に発表予定の新型iMacと来年以降に発表予定のMac Proについては、詳細はヒミツながらも製品を出すことは告知したわけです。
Appleがこんな異例なことをしたのは、Mac Proを3年5カ月もアップデートせずに放置した結果、「AppleはデスクトップのMacを見捨てたんじゃないか」という懸念が高まっていたからでしょう。
少し前から次期Mac Proの設計にとりかかっていたものの、2017年内の発売は無理。そうすると現行ユーザーがMac Proを見限りそうなので、「待っててね」と言う意味でMac Proを出し続けることを表明したと考えられます。4月4日(米国時間)に現行Mac ProのCPUとGPUをちょっとアップグレードしたマイナーチェンジをしたのは、その中継ぎです。
3年5カ月前にデビューした黒い円筒形という独創的な形のMac Proは、Appleが「最高の完成形」と考える製品でした。独自設計で放熱機構も含めて完成形として作り込んだため、すごい新GPUが出ようが、USB Type-Cがトレンドになろうが、汎用(はんよう)のタワー型PCみたいにすぐパーツ交換で対応するということが容易ではありません。
Appleに選ばれたジャーナリストの1人、Daring Fireballのジョン・グルーバー氏の記事によると、フィル・シラー上級副社長は「何度か言及したことがあるが、今のMac Proには熱の制約があり、アップグレードもできない。われわれは顧客をがっかりさせたことを申し訳ないと思っていて、Mac Proの顧客ニーズに応えられるよう根本的に設計し直すようハードウェアチームに要請した」と言ったそうです。
ところでこの5人の記者を集めた懇親会では、AppleはMacユーザーについての調査結果についても説明しました。それによると、Macの販売台数ベースで、ノートとデスクトップの割合は8対2だそうです(意外にデスクトップが多いですね)。ただ、Macの販売台数に占めるMac Proの割合は「1桁%(1〜9%)」だそうです。直近の決算発表によると、2016年10〜12月期に売れたMacは537万4000台でした。
また、プロユーザー(デザイナーやクリエイターなど、仕事でMacを使う人のことと思われます)でもMacBookシリーズを使っている人が一番多く、次がiMacで、3番目がMac Proだとも説明しました。
それならiMacでハイエンドマシンを作ってもよさそうですが、液晶ディスプレイ一体型のデスクトップマシンではやはり拡張性に限界があるので、モジュール式のMac Proを出すことには意味があります。
クレイグ・フェデリギ上級副社長が現行のMac ProはVR系やハイエンドの映像製作には向いていないことを認める発言をしているので、次期Mac Proはその辺りもばっちり対応する高性能で柔軟な製品になりそうです。
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