AIで“ゴジラになって”街破壊 富士通が体験型展示 「体操の採点システム」活用
“ゴジラになって”街を破壊する――富士通の骨格認識AIを使った体験型展示「GODZILLA in Motion」の様子だ。10月13日から16日まで幕張メッセ(千葉県)で開催されたイベント「CEATEC 2026」で富士通が公開した。
来場者がカメラの前で15秒間暴れると、その動きをAIがデータ化し、街を破壊するゴジラのCGとして再現する。動きの認識に使っているのは、世界体操連盟(旧:国際体操連盟)の採点支援で使われている人の動きの解析技術だ。
カメラ4台で撮影、40秒ほどで“ゴジラ化”
GODZILLA in Motionの参加者は、床の印に立ち、周囲に置かれた4台のカメラに囲まれる。画面に破壊対象の建物が示され、カウントダウンの後、15秒間、体全体を使って自由に暴れる。体にマーカーやセンサー付きのスーツを着ける必要はなく、服装もそのままでよい。
撮影が終わると、富士通の技術紹介動画が流れている間に解析が進み、40秒ほどで結果が出る。画面には「首都圏にゴジラが出現」という緊急ニュース風の演出とともに、参加者の動きをそのまま写したゴジラが現れ、ビルを蹴り倒す。別のモニターには、左半分に参加者の動きを骨格データ化した映像、右半分にそれをゴジラで表現した映像が並ぶ。
動きの大きさによって、最後に出る評価とエンディングの映像が変わる。参加者は自分がゴジラになった動画をQRコードで持ち帰れる。
このコンテンツは、東宝の協力を得て制作したもの。富士通は3月にスペインで開催されたイベント「MWC Barcelona 2026」でも「ゴジラなりきり体験」として同じ仕組みの展示を行っており、国内での展示は今回が初めてとなる。
体操の世界選手権でAIを改良
ゴジラの動きを生み出しているのは、富士通が「Human Motion Analytics」と呼ぶ骨格認識AIだ。カメラ映像から人の関節位置を推定し、3次元の動きとして解析する。富士通はこの技術の元となる「JSS」(Judging Support System)を世界体操連盟と共同で開発。2019年の世界選手権から採点支援に正式採用されている。
体操競技は選手の動きが速く複雑で、技が年々高度になり、審判の目だけでは判定が難しくなっている。富士通はこうした現場でAIの改良を続けた。採点にすぐ使う必要から、演技が終わって5〜10秒後に解析結果が出るようにした。
審判向けのアプリケーションには、人の動きを再現した3Dモデルとあわせて、どの技を実施したかを示す記号が表示される。最終的な判定は人が行うが、その判断材料としてこの情報が使われている。
ゴジラの体験で結果が出るまでに体操より時間がかかるのは、解析の後にCGを生成する工程があるためだ。CGの生成は富士通の技術ではなく、人の動きを正確に認識する部分がこの技術の担当範囲となる。富士通では実際の競技大会で生の動きのデータを大量に取得し、そのデータを使って性能を高めるサイクルを回しているという。
スポーツとヘルスケアの先へ
富士通はこの技術を、体操を起点にスポーツ分野へ広げている。野球やゴルフ、フィギュアスケートのトレーニング用途で展開しており、25年7月には日本スケート連盟がフィギュアスケートの強化拠点に導入した。
もう一つの柱がヘルスケアだ。歩き方のわずかな違いから神経性疾患の可能性を一次評価するスクリーニングや、関節の可動域を測定する機能訓練の分野に使われている。
今回のゴジラの展示は、スポーツとヘルスケアに続く展開先として、エンターテインメントやコンテンツ制作での活用に可能性があるかを探るためのものだ。富士通は、この骨格認識AIを「Fujitsu Uvance」ブランドのサービスメニュー「AI Technologies and Solutions」の一つとして提供している。
CEATEC 2026の富士通ブースのテーマは「『もしも』に挑む、確かな力を。」。GODZILLA in Motionに加え、ゴジラの来襲を想定して避難施策を検討する「デジタルリハーサル」の体験型展示も行った。
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