お絵描きアプリ「アイビスペイント」にAI学習妨害機能 ユーザーからは「顧客が望んでいたもの」などの声も
イラスト作成アプリ「アイビスペイント」を提供するアイビスは、新機能「AI学習妨害機能」を実装した。この機能を利用することで、画像生成AIの追加学習を妨害できるノイズをイラストに与えられるという。
イラスト作成アプリ「アイビスペイント」を提供するアイビス(愛知県名古屋市)は5月7日、同アプリに新機能「AI学習妨害機能」を追加した。画像生成AIへの追加学習を妨害できるノイズをイラストに付与できる機能という。ユーザーからは「顧客が望んでいたのもの」とする声も出ている。
画像生成AIでは、複数のイラストをAIモデルに追加学習させることで、AI生成する画像を特定の作風に寄せる技術「LoRA」が存在する。LoRAを巡っては、ネット上に出回っている作品を著作権者の許可なしに追加学習させるケースも見受けられる。これに対し「作風を似せる目的で意図的に画像を追加学習に使うのは、著作権の侵害になる可能性があるのでは」と指摘する声もある。
新機能では、イラストにノイズを付加することで、AIがイラスト本来の作風を正しく読み取ることが出来なくなり、出力する画像の品質を劣化させられるという。このため、LoRAなどの追加学習技術を妨害でき「独自の作風をAIによる模倣から防ぎたい場合に便利な機能」などと説明している。
フィルターの濃さは、スライダーで強弱を付けることが可能。フィルターが濃いほど、妨害効果が高まるとしており、同社の公式Webサイトではサンプル画像を掲載している。ただし「妨害効果の有効性は、使用されるAIや追加学習アルゴリズムにより異なる。この機能は、あらゆる状況で妨害効果が得られると保証するものではない」という。
アイビスペイントは1月に、生成AIでイラストの手本を表示できる「AIお手本機能」を実装。しかし、多くのユーザーから反感を買い、わずか1日で同機能を取り下げていた。そこから約4カ月がたち、同社が生成AIの追加学習を妨害する機能を実装したことを受け、ユーザーからは「顧客が望んでいたもの」「生成AIから守る側に立ってくれてうれしい」とする声も多く出ている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「アイビスペイント」に“AIイラストのお手本”が出る新機能→わずか1日で取り下げに 「ユーザーからの反響受けて」
お絵かきアプリ「アイビスペイント」を提供するアイビスは、アイビスペイントに実装した生成AIを使った新機能を取り下げると発表した。
クリスタに画像生成AIを搭載する予定ない──提供元セルシスが発表 「データセットがクリーンなものしか使わない」
クリスタに画像生成AIが搭載する予定はない──イラスト作成ソフト「CLIP STUDIO PAINT」(クリスタ)を販売するセルシスは、そんな声明をX上に投稿した。
生成AIを特定の絵柄に特化させる「LoRA」 著作権の考え方は? 弁護士が解説
生成AI技術の一つ「LoRA」とイラストレーターの立場を巡り、SNS上で議論が巻き起こった。AIモデルに数枚の画像を追加的に学習させることで画像を特定の絵柄に寄せる技術を指すが、著作権などはどのように考えればいいか。弁護士が解説する。
「この絵、生成AI使ってますよね?」──“生成AIキャンセルカルチャー”は現代の魔女狩りなのか 企業が採るべき対策を考える
人気アニメシリーズ「プリキュア」の公式イラストを巡り、一部のユーザーから「生成AIを使って作成したのではないか」との声が上がる騒動が起きた。生成AIの利用自体に向けられる激しい嫌悪感「生成AIキャンセルカルチャー」について考察する。
画像の“権利”をしっかり守る? うわさの「ピュアモデルAI」の仕組みは 開発会社に聞いてみた
4月上旬、“漫画家の著作権を守るAI”と打ち出された「ピュアモデルAI」という生成AI技術がネットで話題になった。LoRAなどとは違う方法で、漫画家の画風を再現できる画像生成AIというが、それは一体どのような技術なのか。開発会社に聞いた。






