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音声AIの学習元を追跡できるシステム開発へ 日本で社団法人が設立 目指すは「人と音声AIのフェアトレード」(1/2 ページ)

人と音声AIが共存できるフェアトレードシステムを作りたい──そんな目的を掲げる一般社団法人「日本音声AI学習データ認証サービス機構」(AILAS)が設立発表会見を行った。音声AIのフェアトレードシステムを通して、健全なビジネス利用を促していくという。

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 人と音声AIが共存できるフェアトレードシステムを作りたい──そんな目的を掲げる一般社団法人「日本音声AI学習データ認証サービス機構」(AILAS)が6月25日に設立発表会見を行った。東芝デジタルソリューションズのフェローを務める倉田宜典さんが代表理事を務める同団体は、音声AIの「フェアトレードシステム」を通して健全なビジネス利用を促していくという。


左から、声優の甲斐田裕子さん、日本俳優連合代表理事で声優の池水通洋さん、代表理事の倉田宜典さん、監事の田邊幸太郎さん、スタートアップ企業・Parakeetの中村泰貴さん

 音声AIを巡っては、AI技術の急激な進化で開発のハードルが下がり、比較的簡単に音声AIモデルを作れるようになっている。これに伴って、著名な実演家や政治家、キャラクターなどの声を使ったAIツールによる、なりすまし行為などの不適切な利用法が確認されている。このため「現状の知的財産や著作権関連の法制度には課題がある」と指摘する声もある。

音声AIのフェアトレードとは?

 AILASが提案するフェアトレードシステムは、登録したAI学習用の音声をトラッキング(追跡)する仕組みだ。声優などその声の権利を持つ「学習用音声データの提供者」や「生成AIを開発する事業者」「音声AIを事業に活用する事業者たち」「音声AIツールの利用者たち」の情報を登録し、それぞれに認証ラベルを発行。声の提供者は自分の声がどう使われているかを、事業者やツールの利用者は声の権利関係を、ラベルから確認できるようにする。


AILASが提案するフェアトレードシステムの概要

 倉田代表理事はシステムの全体像について、国産牛が生まれてから店舗に並ぶまでを追跡するトラッキングシステムに近いと話す。「今回のシステムの場合、最上流が学習用音声データ提供者で、これが生まれてすぐの子牛に当たる。国産牛の場合は子牛が成長し消費者にたどり着くまでの様子を確認できるが、今回作るシステムでは提供者の音声データを登録することで、生成AI開発者や事業者、AIツールの利用者たちがどのようにそれを使っているかを捕捉できるというもの」(倉田代表理事)


代表理事の倉田宜典さん

 学習用音声データの提供者は「場合によってはAI学習のために音声データを使ってもいい」「完全に使ってはいけない」などの意思表示もでき、使用用途も認証ラベルに反映されるようにするという。こうしてデータベースを作り、提供者の意思表示をラベルを通して可視化することで「声のパブリシティ権」を保護していくとしている。

 事業者の立場では、提供者がAI学習に対する意思を示した状態の音声データをAI開発や事業に使えるため、権利関係を明確にできるのが利点という。事業者がシステムを利用する場合、事業者登録に加えて、AIモデルやAIツールの開発に当たって使用した学習データやAIモデルなどの情報を登録することも求めるとしている。

 倉田代表理事は「これにより、事業者が作ったAIモデルやAIツールがどんな音声データを使っているのか追跡できるようになる」と説明。登録者にはIDが入った認証ラベルを配布し、作成したプロダクトに貼り付けたり、Webで表示したりするよう求めるという。そうすることで、プロダクトの利用者はラベルを見て、データ提供者の許諾を得られたプロダクトと知り、安心して使うことができるとしている。


全てのステークホルダーに利用してもらうことを目指す

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