小型カメラとChatGPTで入試不正、トルコで受験生逮捕 GPT-4oを悪用、生成した回答をイヤフォンに転送
トルコで行われた大学入試の基礎学力テストで、受験生がシャツのボタンに見せかけたカメラで試験問題を撮影し、生成AIに回答させていたとして警察に逮捕された。問題の受験生は「ChatGPT(GPT-4o)」で回答の作成を試みていたという。
トルコで行われた大学入試の基礎学力テスト「TYT」で、受験生がシャツのボタンに見せかけたカメラで試験問題を撮影し、生成AIに回答させていたとして警察に逮捕された。TYTは、トルコの大学入試一斉試験「YKS」の第一関門となる共通テストで、毎年6月に行われ、得点に応じて進学できる大学や学部が決まる。
報道によると、トルコ南西部イスパルタのTYT試験会場で、挙動が不審な受験生がいたことから周囲を捜索したところ、靴底から通信端末を発見。警察はこの受験生が不正を行っていたと判断して逮捕した。
捜査の結果、この受験生はシャツのボタンに見せかけたカメラを首元に装着して試験問題を読み取り、靴底に隠した通信端末経由で米OpenAIのAIチャット「ChatGPT(GPT-4o)」に送信していたことが分かった。ChatGPTが生成した回答は、受験生が耳にはめたイヤフォンに音声で流れる仕組みになっていた。
Xにはこの手口を紹介したイスパルタ警察の動画が掲載されている。警官が靴底に隠された通信端末を見せ、ボタン型のカメラで試験問題を読み取ると、ChatGPTが解いた答えがイヤフォンに転送され「正解はAです」という音声が流れていた。
この不正に加担したとされる別の人物も警察に一時拘束されて事情聴取を受けたという。この人物に双方向通信を行うための携帯電話が発見されたと伝えられている。
大学試験と生成AIを巡っては、英レディング大学などの研究チームがある論文を発表している。それによると、生成AI(GPT-4)で回答した答案が採点者にバレるかを抜き打ちで実施したところ、回答の94%がAI生成とは検出されなかったという。特にマークシートなどの短答式の問題は不正行為の影響を受けやすいと指摘している。
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