病院で生成AIはどう使う? フル活用する病院が明かす“5つの事例” 初めの一歩は「全職員へのiPhone配布」(3/3 ページ)
生成AIのビジネス活用が進む中、AIの積極的な活用によって「病院DX」に取り組んでいる医療機関がある。その1つであるHITO病院のDX推進を担う篠原直樹医師が、病院での生成AI事例について説明した。
若手への知識の浸透
知識の浸透にもCopilotを活用している。配属1年目の研修医にはApple Watchを配布して、業務中に分からないことを音声で検索できるようにしている。音声検索で提供する内容は、外部の医学データベースから必要な情報を引き出し、要約して提供している。
知識と経験の少ない医師が、指導医だけに頼らず知識を深められることに加えて「今まで人に縛られていた知識から、それ以上の知識を得ることが可能。当然それ以外の発想も生まれてくる可能性もある」と篠原医師は期待を寄せる。
また、若手のグループワークでもCopilotを活用できるようにしている。例えば「病院のブランディングをどのようにするべきか」という議題に対して、意見が活発に出ないときに「ブランディングとは何か」をCopilotで調べるところから始めると、議論の土台ができ、会話が弾みやすいという。
「自分の知識、経験が不足しているのを知られたくないという意識を取り除いて、心理的安全性が高まる。そのため、ディスカッションを楽しめるようになる」
マネジメントでの業務負荷の可視化
管理者向けには、業務負荷を可視化する仕組みを検証している。その1つが看護師の病床ごとの作業記録を元に、どの病床に人手が必要かをグラフで示す仕組みだ。看護師たちが入力した電子カルテのデータをデータ分析基盤「Microsoft Fabric」上のCopilotで分析し、入院患者の重症度を示す「看護必要度」などを可視化している。
システムでは病棟ごとの看護必要度の合計や、日別・時間帯別の変動をグラフ化して表示。これにより管理者がリアルタイムで業務負担の状況を把握可能になった。篠原医師は「データとの対話で、働き方を変えることができる」と成果を話す。
病院×生成AI活用の課題と展望
篠原医師は、生成AIの活用に対する課題についても言及。「使えば使うほど費用がかかる」というコスト面の課題を挙げた。これを解決するには、使用者を制限するのが1つの手段であり、その場合は事務スタッフと若手のメディカルワーカーからAIを導入していくのが最適であるという。
「特に若手はAI活用に抵抗が少なく、知識を高める教育効果と不安を解消できる心理的安全性の改善においても有効」と篠原医師。
またHITO病院では、AIの利用に関する制限を、現時点では特に設けていないという。篠原医師は「まずは情報を収集するツールとして使ってもらって、問題が生じた場合はそれに対応していく」と、柔軟な姿勢で取り組んでいることを明かした。
「これからAI技術は、地域で医療・介護を支えていくためには必要不可欠なインフラになると思う。病院も、これからどんどん手を打っていかないと、持続可能性が厳しくなっていく。今こそ、生成AIを活用していく時期に来ているんじゃないか」
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