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「仲間が1人増えたみたい」――ビール開発に“AIエージェント”活用 NECと「COEDO」醸造元がタッグ

NECはAIを活用して開発したビール「人生醸造craft」の第2弾を発表した。クラフトビール「COEDO」で知られる、協同商事ビール部門のコエドブルワリーが協力。NECのAIとコエドブルワリーのビール職人が協働し、ビールを開発したという。

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 NECは3月28日、AIを活用して開発したビール「人生醸造craft」の第2弾を発表した。クラフトビール「COEDO」で知られる、協同商事(埼玉県川越市)ビール部門のコエドブルワリーが協力。NECのAIとコエドブルワリーのビール職人が協働し、ビールを開発したという。


NECの千葉雄樹さん(左)、協同商事の朝霧重治さん(右)

 人生醸造craftの第1弾は2020年。NEC新入社員の「上司や先輩とどうコミュニケーションを取ればいいか分からない」という悩みをきっかけに、NECの技術を使って開発したビールを通じ、世代間コミュニケーションを促進するという企画が発足したという。

 その際はNECが「単語埋め込み」(コンピュータが処理しやすい形式に単語を変換する手法)などを活用したAIを開発。雑誌のデータから、20〜50代の各世代に適した色や味、香りを抽出し、コエドブルワリー協力のもと、それらを反映した4種類のビールを作った。その後生成AIの普及が進むなか、協同商事の朝霧重治社長から再度、AIを活用したビール開発を提案。25年にプロジェクトが再始動した。

 今回NECが開発したのは、自律的にタスクを分解して業務を実行する「Agentic AI」(AIエージェント)だ。23年にリリースした同社の大規模言語モデル(LLM)「cotomi」を活用。コエドブルワリーのビール職人とともにビールの開発に取り組み、前回同様、20〜50代の各世代に適したビール4種類を作り上げた。


AIエージェントを活用して開発したビール
各ビールの説明(1/2、提供:NEC)
各ビールの説明(2/2、提供:NEC)

 例えば「20代日本人をイメージして、社内外のレシピ情報を参考に、新しいクラフトビールのレシピを作成して」とテキストを入力すると「ペルソナ作成」「レシピ情報検索」「レシピ案作成」など複数のタスクに分解。その後、コエドブルワリーの持つレシピデータや、Web上のデータなど、それぞれのタスクに適した情報を参照し、レシピ案を作成する。これに対し、職人が「色の赤身を強める別の製法に変えて」などの指示を出し、案をブラッシュアップしながらビール開発を進めたという。


開発の流れ(提供:NEC)

 朝霧社長はAIエージェントについて「スキルのある仲間が1人増えたよう」と形容する。20年の取り組みの際は「AIがビッグデータを解析して出した情報をもとに、人間がレシピを考えた」として「そこに(AIと人間の)交流はなかった」と指摘した。


協同商事の朝霧重治さん

 一方、AIエージェントを活用したビール開発は「全然プロセスが違う」と強調。朝霧社長は「こういうペルソナをもとに、ビールはこんな感じでどうですか、とホップの種類など材料までかなり具体的に示してくれた。やっぱり1人増えた感じ」と語る。実際に従来のビール造りに比べ、工数を40%削減できたという。

 人生醸造craftの価格は4本セットで1980円。コエドブルワリーの公式オンラインストアで4月1日に発売、6月5日から順次出荷予定。

NECのAIエージェント展開、今後は?

 NECは24年11月にAIエージェントを発表。25年1月から順次提供するとしていた。今回の事例はビール造りだったが、AIエージェントをうたうサービスが他社からも登場するなか、NECはAIエージェントをどのように展開していくのか。NECの生成AI事業開発統括部長を務める千葉雄樹さんは、今後注力したい領域として「金融業」を挙げる。


NECの千葉雄樹さん

 「例えば保険商品を顧客に勧めるとき、どういう商品が良いか選び、その理由を顧客に説明する。その上で、変えたい部分などをコミュニケーションを取りながらブラッシュアップしていく。そういう複雑なプロセスは、今回のAgentic AIでうまく解けるテーマかなと思っている」(千葉さん)

 千葉さんは、NECが開発するAIエージェントの強みとして「タスクの分解精度が高い」と説明。あいまいな指示に対しても、タスクを分解して作業を実行できるとアピールする。またAIエージェントの提供は、要望に応じてクラウド/オンプレミスどちらにも対応。企業に提供する場合も、企業内データはAI学習に使わないと明示した。


NECのAIエージェントの特徴(提供:NEC)

 「顧客に使ってもらう分には顧客のデータを学習させ、システムの導入をするが、別の顧客やわれわれ自身の技術のアップデートのためには使わない。そこは基本的に完全にデータとして切り分けている」(千葉さん)

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