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生成AI導入に必要なのは「嫌われる勇気」──“オレ流”で貫く、組織改革のススメマスクド・アナライズの「AIしてま〜す!」(2/3 ページ)

生成AI導入推進担当者に求められるのは「嫌われる勇気」と「組織変革の実現」ではないか。今回の記事ではそんな仮説を提唱し、あの野球監督のスタンスを参考に、企業のAI導入を円滑に進める方法を考える。

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異なる分野で結果を出す”嫌われた監督”

 では「嫌われる勇気」と「組織変革」を実現したモデルケースとなる人物は、誰が該当するでしょうか。これは元プロ野球選手であり中日ドラゴンズの監督を務めた落合博満氏しかいません。

 「嫌われる勇気」として落合氏は、選手ならびに監督時代において「オレ流」と呼ばれる独自の姿勢を貫いており、しばしば衝突を生みました。それでも選手として三冠王を3回達成するなど、嫌われても結果で証明してきました。

 「組織変革」においては監督としてチームを率いてリーグ優勝4回、日本一1回、在任中は常にAクラス(リーグ3位以上)という成績を残しています。選手という個人の立場では嫌われても実績を出しており、監督という管理職では組織を変革して常勝チームを作り上げました。

 これらの要素は企業における生成AI導入推進においても、求められる能力です。さらに野球における選手と監督は会社における担当者と管理職という関係性であり、野球では勝利のために1年間のリーグ戦を戦うのは、企業が利益を求めて1年間の決算期間を区切って個人の取り組みと組織運営を継続していくことに似ています。このように野球と会社は非常に近い存在であるため、落合博満氏の実績から学べる点は多いはずです。


野球と生成AIの共通点

落合ならこうする

 生成AIの推進時には、さまざまな問題が発生します。そこで事例が少ない企業における取り組みではなく、野球界における落合氏の活躍を振り返って成功へのきっかけを紹介してみましょう。

生成AIでどのように成果を出すか?

 生成AIを導入する以上、当然それで成果を出すことが求められますが、具体的にどのような目的や用途で成果を出すのか、そのビジョンが不明瞭なままという状況があります。この問題について、落合氏は野球のバッティングで解決のヒントを教えてくれます。

 落合氏は4番打者として状況に応じてヒットや本塁打を打ち分けており、さらに相手投手の得意球を打ち返して自信を砕くことでチームの勝利に貢献します。企業では、生成AIが最も効果的に使える場面を探すことの重要性が伝わります。生成AIで実現可能なこと、生成AIが求められる業務、生成AIが及ぼす影響を考慮することで、4番打者のような成果が出せるでしょう。

生成AIリテラシーの向上

 生成AIのリテラシー格差が問題となる場合もあります。理想は、勉強して習得してほしいものですが、落合氏ならどうやって解決したでしょう。落合氏は「プロ野球選手でも練習好きではない」という前提がありつつ、「常に練習を重ねて、24時間野球のことを考えるべき」というプロ意識を提言しています。

 一方、精神論だけでなく結果を出して年俸を上げることにも注力しており、成果が評価につながる仕組みが重要であるとしています。企業では、従業員に一方的な生成AIの利用を強いるのではなく、学習や取り組みの実践を人事評価につなげたり、AI活用で得られた利益に応じて報酬を出したりするなど、評価につながる環境を作るべきでしょう。

組織の変革と強化

 生成AI推進に必要なのは、従業員が生成AIを使いこなす意識と組織の強化です。落合氏は監督就任時に選手の能力底上げを明言して、練習量を増やして守備力を強化することで、勝てるチームを作り上げて1年目からリーグ優勝を果たしました。

 企業でも、生成AIを使いこなすための従業員に対して研修や実践を繰り返し行うなど、地道な取り組みが重要です。さらに意欲を引き出して組織全体の生成AIに対するリテラシー向上のため、コミュニティーを作って交流を行う施策などが求められるでしょう。

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