京大、「キリスト教AI」開発へ 「どうすれば幸せになれる?」にも原典に基づき回答 “仏教AI”に続き
京都大学で仏教を研究する熊谷誠慈教授と、AIサービスなどを手掛けるテラバース(京都市)らの研究チームは、キリスト教とAIを掛け合わせた「キリスト教AI」の開発を始めたと発表した。
京都大学で仏教を研究する熊谷誠慈教授と、AIサービスなどを手掛けるテラバース(京都市)らの研究チームは12月17日、キリスト教とAIを掛け合わせた「キリスト教AI」の開発を始めたと発表した。第一歩として、キリストの教えを学べるチャットAI「プロテスタント教理問答ボット」を開発した。
プロテスタント教理問答ボットの開発には、「新約聖書」とキリスト教の入門書に相当するQ&A形式の概説書「小教理問答」「ウェストミンスター小教理問答」のデータを活用した。ユーザーが質問を入力すると、AIが3冊のデータの中から関連性の高い文言を選択。米OpenAIのChatGPTが文言の解釈や説明を補足し、回答として出力する。
プロテスタント教理問答ボットは、キリスト教の教えに関する質問だけでなく、「どうすれば幸せになれますか?」「物価が高騰して生活が不安です」といった日常的な質問にも回答できる。ただし、原典以外のChatGPTの補足部分は、誤りが含まれる可能性があるため注意が必要という。
今後は、プロテスタント教理問答ボットにその他のキリスト教に関する文献データも追加し、回答の精度を高める。また、キリスト教系ミッションスクールや神学校での展開も想定する。なお、キリスト教AIの将来的な方向性は、キリスト教思想を専門とする芦名定道氏(関西学院大学客員教授/京都大学名誉教授)の助言のもと決める。
研究チームによると、キリスト教AIの開発には、生成AIの回答によってキリスト教思想に関する新たな解釈が生じるなど、学術的な可能性があるという。加えて、企業の従業員向けカウンセリングなど産業分野や、さまざまな宗教・宗派の教えを学んだAIによる総合的な解釈の提示といった宗教分野でも活用。さらなる構想として「世界各地の宗教的遺産と叡知によって薫陶を受けた伝統知AI」も視野に入れる。
熊谷教授とテラバースらの研究チームは2021年3月、仏教の教えに基づきさまざまな悩みに答えるチャットbot「ブッダボット」を発表。その後、仏教とAIを組み合わせた多数のプロダクトを開発し、「古今東西の宗教や哲学など、人類の知的遺産を継承するAI開発」を掲げてきた。こうした取り組みの一環として、キリスト教AIの開発を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AIと人間はどのように共存すべきか? 脳科学者・茂木健一郎さんの主張 「人間は人間にしか興味がない」
脳科学者の茂木健一郎さんは、日本CTO協会が開催した「Developer eXperience Day 2024」において「脳力とAIのアライメント」というテーマで講演した。人間がAIとどのように向き合うべきかについて、哲学的な考察を展開した。
AIを使って英語論文を短期間で書く方法とは? 京大教授が教える9つの原則 2023年に発表
京都大学国際高等教育院に所属する柳瀬陽介教授は2023年、英語執筆に不慣れな日本人研究者がAIを活用して短期間で英語論文を完成させるための実践的な方法を体系化した報告を発表した。
戦後80年、カラーでよみがえる“戦時中の動物たち”の姿とは? AIと人力で戦争写真を着彩、第一人者が語る思い
馬や犬、鳩などさまざまな動物が写る戦時中のモノクロ写真を、AIと手作業でカラー化して掲載した写真集「動物たちがみた戦争」。共著者の1人で、カラー化を手掛けた東京大学の渡邉英徳教授に、同書に関する取り組みについて聞いた。
技術論争乗り越え事業化フェーズへ 躍進する「Sakana AI」、創業者デイビッド・ハー氏の狙い
米中が主導するAI開発の覇権争いに、日本発のスタートアップが新たな変数として浮上している。創業からわずか18カ月のSakana AIが、革新的な「省資源型AI開発」を武器に、グローバルな存在感を示し始めた。急成長の一方で技術的な論争も経験しながら、このほど事業開発本部を設立し、研究成果の社会実装へと本格始動。世界的AIスタートアップとしての真価が問われる新たな段階に入った。
「名字が中村そう」「サウナ好きそう」──AI生成した架空の人物に偏見をぶつける企画展 クラファン開始
生成AIで作成した架空の人物写真に「名字が中村っぽそう」「学生時代は吹奏楽部っぽそう」などの“偏見”をぶつける──京都大学出身者などからなるボードゲーム制作チーム・ゲーム工房カコムタクが、こんな企画展を3月6日から16日にかけて吉祥寺で開催する。


