手帳はスケジューラからクリエイティブ・ギアへ:2009手帳マッピング(2/2 ページ)
9月になって、2009年版の手帳も本格的に店頭に並び始めた。今度の手帳はどんなトレンドがあるのだろうか。Business Media 誠で「“うふふ”マーケティング」を連載する郷好文さんが、最新の手帳をマッピングする――。
アイデア手帳の選択肢その1:発想ガイドがありやなしや
さてGRAPHISCHES HUNDBUCHのアイデア面を見ると、空白の長い罫線メモのエンドには「分度器」や「黄金比の図形」などをデザインしたページがある。すべて空白のページでもいいのに、なぜこんなページをわざわざ作ったのだろうか?
それはアイデアが出ないとき、背中を押してあげよう、そんな心遣いのはず。手帳の白いページをいくら眺めてもアイデアが浮かばないとき、ページをめくり“ガイド”に頼る。思考の方向舵を変え「こう考えてみたらどう?」という発想転換のガイドが、図形や分度器なのである。
アイデアを生み出す手帳には、例えば格言や発想のヒントが各ページにあるような、ガイドの要素が多い「ガイドFull」なものと、ただひたすら罫線/無地ページでできたメモ帳のような「ガイドLess」なものがある。こうした“発想ガイド”の有無があなたのアイデア手帳の選択肢その1である。
アイデア手帳の選択肢その2:ひとりか、みんなか
たいがいのアイデアとは新しい結合である。今までのモノ・コトが新しい結合でフツフツしたとき、私たちはグッとくる。これがアイデアの根本である。
アイデアのフツフツ、たいていひとりでやる。それを書き留めるのが、記入自由度の高いメモ帳である。よりよいアイデアを求めて思考は練り返される。ひとりだとほどなく行き詰まるのも事実。GRAPHISCHES HUNDBUCHの蛇腹機能は、その行き詰まりをユルめてくれる。
蛇腹手帳は自分の発想経歴を“絵巻物”として一望できる。パタパタと蛇腹を伸ばして「あれ? 似たことを前に考えたことがあるな」。1つの発想の原点を探る。過去の書き込みと、今のヒントを手帳の中でフツフツさせることができる。かなり手のこんだ手帳なのである。
でもどうしても、ひとりでは行き詰まる。誰かとフツフツしてこそ発想は広がるのだ。自分との対話だけでなく、誰かと雑談してアイデアを拡げよう。思いつきを相棒に見せて、ああでもない、こうでもないと語り合う。しばし沈黙の後、どちらかが言う。「分かった!」――突破口のアイデアが生まれる。そのとき手帳はホワイトボードのようなコラボレーション・ギアになる。
ひとりからみんなへ。発想が仮説になり実行に移される。アイデア手帳の選択肢その2は、“ひとりかみんなか”。モノローグ(独白)手帳か、ダイアローグ(対話)手帳か。
アイデア手帳をポジショニングする
この2つの基準(ガイドと対話)を軸に置き換えて、この集中連載で取り上げる手帳をポジショニングした。
ヨコ軸は「アイデアのガイド軸」で、ガイドの多さ/少なさ。コクヨの「文庫本ノート」VS.「ほぼ日手帳」の格闘になりそうだ。これは次回のテーマ。タテ軸は「アイデアの対話軸」で、ひとりでフツフツするか、みんなでフツフツするか。仕事の手帳はパーソナルなものか、オフィシャルな情報源になりうるのか、これを3回目のテーマにしたい。
右上の象限にはIBMや本田技研の手帳のような“企業仕様手帳”や、“専用のリフィル”、その先にいわゆる“情報共有ツール”、サイボウズやSalesForceに代表されるグループウェアがある。組織をあげて「コラボレーションしよう!」と口で言うのは簡単。でも手書きからキー入力に変わるだけではない。「上司や同僚と価値観を共有できますか?」が問われるのだ。情報共有がうまく行かない会社は、手帳も胸も閉じているから。
関連記事
- 日曜はじまり版も選べる「ほぼ日手帳2009」を発売
東京糸井重里事務所は、「ほぼ日手帳2009」の発売を開始した。これまでの「月曜はじまり版」のほか、「日曜はじまり版」もラインアップに追加。2タイプから選べるようになった。 - 「ほぼ日手帳2009」にA5サイズの“いとこ”版が登場
東京糸井重里事務所が発売した「ほぼ日手帳2009 COUSIN(カズン)」は、通常のほぼ日手帳の約2倍であるA5サイズだ。 - 名刺サイズの「Bindex mini5」に外出時のメモ向け「チェイスタイプ」
日本能率協会マネジメントセンターは、2009年版の手帳を発表した。名刺入れサイズのシステム手帳「Bindex mini5 チェイスタイプ」や、能率手帳としては初めての「月間ブロックタイプ」――などだ。 - “自分づくり”の文庫本ノート
「文庫本の隣に並べられるようなノートが欲しい」――そんなニーズにこたえた『文庫本ノート』をコクヨが9月10日に発売する。手のひらサイズのノートに思いをつづることができ、使い終わった後も書棚に並べられる。これまで読むだけだった文庫本だが、これからは著者にもなれるのだ。 - MOLESKINEから2009年版ダイアリー バーチカルタイプやエナメルカバーの限定版も
MOLESKINEから、2009年版ダイアリーが登場する。時間軸を縦に取ったバーチカルタイプや、ソフトカバーのマンスリーノートブックなど全19種類をそろえており、表紙にエナメルカバーを採用した限定版ダイアリーも発売する。 - バイブルサイズ手帳にA4用紙
A4推奨派の私だが、紙の手帳だけはバイブルサイズのシステム手帳を使っている。A5ではなくバイブルサイズを使っているのには理由があるのだ――。 - レイメイ藤井の卓上カレンダー手帳、クオバディスとの違いは?
卓上カレンダータイプの手帳といえば、クオバディスの 「アジェンダスコップ」。同じようなコンセプトの手帳をレイメイ藤井の展示会で見かけた。 - 2009年のワタミ夢手帳、かさばらない差込式ダイアリーを追加
「夢に日付を」――を提唱するワタミ渡邉美樹社長がプロデュースする“夢手帳”。2009年版は、ラインアップに薄くてかさばらない差込式ダイアリーを追加する。 - 仕事とプライベート、どう分ける? クオバディスのスケジュール帳2種
「意外と大きめのスケジュール帳が多いんだ」――そう感じたのはクオバディスの展示会。見かけた製品の中から、自分の働き方に合わせて使える大きめのスケジュール帳2つを紹介したい。 - 読み返すための泣き顔ノート クオバディス「メモリエ」
真っ白なノートを前にしたら、かえって何も書けなくなってしまった――そんな経験はないだろうか。クオバディスのコンセプトノート「メモリエ」を使えば、あなたの日記も続くようになるかもしれない。 - マイ手帳をオプションでパワーアップする
いつも使う手帳を使いやすくパワーアップ――。そんなオプション、5種類をまとめて紹介しよう。 - 7つの付録で決める手帳の選び方
2008年の手帳選びの季節がやってきた。手帳選びの基本とは別に、巻末付録の出来もチェックしてみてはいかが? - 個人にシフトする手帳──ほぼ日は「無料サンプル」も
2008年版が発売されたばかりの「ほぼ日手帳」。東京糸井重里事務所によれば、2007年版の売り上げは23万冊。前年の14万冊から大きく伸ばした。2008年版のほぼ日手帳も、発売から数日たった現在のところ「売り上げは好調」だという。 - 長期プロジェクトの管理に、「超」整理手帳を使う
半年がかりのプロジェクトに携わることになり、数年ぶりに導入した紙の手帳。バーチカルタイプの「タイムデザイナー」と悩んだ末、選んだのは「超」整理手帳でした。目下実践中の“なんちゃってGTD”についてもご紹介します。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.