「仕事しづらいヤツ」から「一緒に仕事したい人」に変わる6つのアプローチ:一目置かせる「役割別ビジネス会話」
「どうも会話がギクシャクする」。周りにそう感じる人がいる場合、相手もあなたと絡みづらいと思っているもの。年下の上司と年上の部下がその典型例だ。こんな時は“横から目線”のアプローチで風穴を開けてみよう。
「役割別ビジネス会話」で相手に一目置かれるためには、オールマイティに通じる方法、年下の部下から年上の上司へのアプローチ法など、役割やシチュエーションによりさまざま。同じ部下から上司でも「部下が年上で上司が年下」の場合は?
褒めずに「勇気付ける」――ヨコから目線を意識する
年下の上司とのギクシャク関係を改善したい場合
所属するチームに年下の上司がいる。上司とはあまりコミュニケーションがなく、いつもギクシャクしている。褒めても注意してもムッとされ、非常にやりづらい。この関係を改善して風通しよく仕事したい。
ここでの上下関係は、「部下が年下、上司が年上」と違い、ねじれているため複雑だ。部下には役職による上下関係はあっても、人生や社会人の先輩としてのプライドがある。一方、人生では後輩の上司も、上司としてのプライドが当然ある。
相手のプライドを尊重し、互いに立てすぎてしまったり、逆に自分のプライドが邪魔して卑屈になってしまったりする結果、「やりにくいなあ」となるのだ。
これを改善するポイントは6つある。Biz.IDでコミュニケーション術などを連載中の平本あきお氏によると、1つ目のポイントは、まず相手と常に横の関係でいるよう意識することだという。
ダメな例から見ていこう。例えば年上の部下が年下の上司とコミュニケーションを図ろうとして「この前の企画書、すごいよかったですよ」「本当に仕事ができますね」と褒めたとする。褒められてうれしくない人はいないから、コミュニケーションをとるには有効な方法だ――と思いきや、平本氏は「褒めることがすでに上から目線」だと指摘する。褒める時点で、自分を基準に相手を評価しているからだ。わき起こる感動をその場で伝える場合は別として、いかにも“上から目線”で評価されると、相手もいい気がしないだろう。
まだある「褒める」デメリット
「褒める」デメリットはまだある。例えば人より早く出社して掃除をしている人に「偉いね」と、毎朝褒める人がいたとする。ところがその人が人事異動で他所に行ってしまうと、褒めてくれる人を失った清掃者は、しばらくすると掃除しなくなる場合がある。いつの間にか清掃行為ではなく、褒める人に褒められること自体に喜びを感じるようになったからだ。
2つ目のポイントは、「褒めるのではなく、勇気付けること」(平本氏)。勇気付けるとは、相手の行為が自分でなく第三者の役に立っていたりしていることを伝えて、相手がその行為をもっとしたくなるよう奮い立たせることだ。
年下の上司には「この前の企画書、ほかの部署でも見本にしていて役に立っているそうですよ」「次長の仕事ぶりはクライアントさんにも評判で、チーム内のみんなのやる気につながっています」など。毎朝オフィスを掃除する人には「あなたが掃除してくれるお陰で、○○さんたちが毎日気持ちよく仕事ができると言ってたよ」などがこれである。
第三者が客観的に、行為そのものを評価していることを伝えれば“横から目線”になる。勇気付けられた相手は「その行為をもっとがんばろう」となる上、勇気付けた相手に対し「自分を分かってくれている」となり、心の距離が縮まる。
もし勇気付ける点が見当たらない場合は、相手のやりたいことについてじっと耳を傾けるのもいいという。また、以前朝EXPOで落語家の桂小春団治師匠が初対面の人との打ち解け方について説いているように、相手の好きなことを見つけるのも手。その話題を振って“語って”もらうのだ。たとえ趣味の話でも興味を持って聞けば、相手も「自分という人間を分かろうとしてくれている」となる。相手の話にじっくり耳を傾ける。これが3つ目のポイントだ。
4つ目は積極的に話しかけること。「私は仕事の面ではサッパリだけれども、経験が長いぶん○○の分野ならお役に立てるかもしれません。なにかお手伝いできることはありませんか?」
「あなたを分かろうとしていますよ。客観的に評価していますよ」と示した上で、こんなふうに話すのだ。年下の上司にとって年上の部下はとかく扱いづらい。これを自覚して「何かお役に立てることはありませんか?」と年の功で歩み寄るのである。
「〜していただけるとほかの人も助かります」――いさめるときも“横から目線”
とはいえ年下の上司がいつも正しいとは限らない。例えば、打ち合わせ時に「後で追加資料を渡す」と言ったまま渡してくれた試しがない。また、資料をライブラリーから持ち出したままいつまでも戻さない癖があるとする。
こうした場合も、“横から目線”で客観的にいさめる。これが5つ目のポイントである。「追加資料を渡していただけると、チームメンバーにもありがたいです」「資料を返していただけると、調べたい人が助かります」といった具合だ。平本氏によると、「困るので止めてください」という言い方は、自分中心の“上から目線”だという。
そして最後、6つ目のポイントは、「相手のリズムを断ち切る」(小春団治師匠)ことだ。相手の話がループしていつまでも終わりそうにない場合、話を切ってしまって構わないという。我慢して聞いても自分の業務時間が削られた上、相手へのストレスで関係が悪化するだけだ。
例えばこうやって切る。話がループしだしたら「あ……」と声を出して何か思い出した振りをする。急に声を上げられて驚く相手を尻目に、「あれ……、あ、違った。何でもないです」と落とし込む。こうすることでリズムを崩された相手が、「あれ? 何を話していたんだろう」と混乱する。その隙に次の予定があることを切り出すなどして席を立つのだ。
相手にとって都合のいい部下に成り下がらず横の関係でいるためには、時にこうしたギミックも必要というわけだ。
昨日の部下は明日の上司。逆もまたあり得る。高度成長時代のように上下関係が固定でなくなった時代だからこそ、ますます横の目線を意識した会話術が必要なのである。
次回は「デキる部下の敬語」(予定)について掘り下げよう。
今日の“一目”ポイント
- どんな会話も、上からでなく横から目線で。
- 「褒める」はNG。客観的に評価する「勇気付け」を。
- 自分のことを話す前に、まず相手の話に耳を傾けること。
- 相手の話が冗長なら、話のリズムを崩して切り上げるのも手。
- 年上の部下は、年下の上司にとって年上の部下は扱いづらいと自覚すること。
- 年上の部下は「何かお役に立てることはありませんか?」と自分から働きかけを。
- いさめる際も横から目線で。
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