“見えない敵”と戦っていると、スケジュール管理は失敗する:あなたの不安、見積もります
「これから厳しいスケジュールが続きそうだ」というときは、どうしても不安になってしまうもの。これはあなたが“見えない想像上のスケジュール”と戦っているからです。
先日、ある雑誌編集さんとお話しする機会がありました。そこで、現在の金融業界の大変さというものをうかがいました。徹底的なリストラで人員は半減し、しかし経営難なので残業させたくない。結果、2倍の仕事を半分の時間でこなさなければならないので、単純計算で4倍の生産効率を求められている、と。
それを何とかできるような「仕事術」はないだろうか、というお話でしたが、果たしてこれは「仕事術」でカバーできるような話だろうか、という疑問が浮かびます。仮にそれができたとして、中・長期的には悪い結果をもたらすのではないか、という懸念もありました。
ビジネスパーソンの不安ポイント
本当にこのペースで終わるかどうか不安な仕事があるのですが、その仕事のペースをもっと上げると、ほかの仕事に差し支えないかも不安です。だからといって、全部の仕事を一気に進めてしまって、自分が燃え尽きてしまわないかという不安もつきまといます。
この問題は、すべてが個人的な問題とは言えません。しかし少なくとも個人的に解決できる範囲にしぼった対策を考えましょう。すると次のようになります。
- すべての仕事が間に合うようにスケジュールを組む
- 可能な限り最も多く時間が使えるようにスケジューリングする
- 実際にそのペースで仕事をやってみる
(1)はたいていの人がすでに実行していることです。問題は(2)。これを行うには、ほぼすべての仕事について「締め切りがある」という前提があります。でなければ、すべての仕事について「最大時間を確保する」ことはできません。
ですからまず、期限があいまいな仕事の締め切りを確認する必要があります。その際、「最大限度まで遅らせる」努力をしてみることです。いったん締め切り日を約束されてしまえば、それ以上遅れることの責任が発生してしまうからです。
以上が定まったら、(3)。実際にそのペースで仕事をしてみます。少なくとも1日やってみて、無理がなさそうだと思ったら、そのペースでやってみればよいわけです。とても無理そうだと思ったら、早めに仕事量を減らすべく交渉したり、やらなくて良いことを徹底的に見つけ出す必要があるでしょう。
不安からタスクへ注意を回す
簡単に書いている、と思われるでしょうが、私自身実際に会社勤めをしたことはあるので、以上が簡単でないことは分かっているつもりです。しかし実際、できることはこういうことなのです。
上で述べているのは、「とりあえず敵を目に見える場所において、たたく」ということです。そうした方が安心できます。不安な状態が仕事に悪影響を及ぼすのは、不安の対象に注意を払ってしまうからです。これではタスク管理やタスク実行に注意が回らなくなります。
そうなると仕事が終わらなくなり、ますます不安感が増大してしまうわけです。とても無理なスケジュールであっても組んでみる方が、想像上の巨大なスケジュールをイメージして不安になるよりましです。しかも、目に見えるものがあれば、それをもとに協力を要請したり、SOSを発信することもやりやすくなります。
新刊のご案内
「シゴトハッカーズ」「あなたの不安、見積もります」の筆者、佐々木正悟さんの新刊『残業ゼロの「1日1箱」仕事術』が発売になりました。
次に何をすべきかは分かっている、材料もすべてそろっている、でも、なんとなく取りかかる気がしない……。仕事を前に、こんな状況でダラダラと時間を浪費してしまった経験は誰にでもあるでしょう。
本書のテーマは、どうやって自分の中から「やる気」を引き出すか……といっても、気合いや根性を総動員するような「精神論」ではありません。
ご紹介しているのは、最新の脳科学・心理学の知識に基づいた「正しい」モチベーションの上げ方なのです。
筆者:佐々木正悟
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。
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