確定申告シーズン到来――サラリーマンと個人事業主の税の違いを考える:大増税時代(3/4 ページ)
いよいよ確定申告の受付が始まった。とはいえ、多くのサラリーマンがそもそも確定申告とは何かよく分からないのが本音ではないだろうか。今回は確定申告の基本的な話から、個人事業主とサラリーマンの税金の違いについて触れる。
千代田区の国民健康保険って安いの?
国民健康保険もサラリーマンの健康保険と大きく異なるのだが、それ以前に国民健康保険と呼ぶ割に国民年金のように全国一律ではなく、各自治体ごとに金額が異なっていて住む場所によって3倍以上も保険金額に差があるといわれている。参考程度に計算式の例を見ていただこう。
地域 | 区分 | 所得割 | 均等割 | 世帯割 | 資産割 | 上限額 |
---|---|---|---|---|---|---|
東京都千代田区 | 医療分 | 算定基礎額×6.13% | 人数×3万1200円 | − | − | 51万円 |
支援金分 | 算定基礎額×1.96% | 人数×8700円 | − | − | 14万円 | |
介護分 | 算定基礎額×0.77% | 人数×1万3200円 | − | − | 12万円 | |
愛知県名古屋市 | 医療分 | 住民税×120% | 人数×4万11円 | − | − | 51万円 |
支援金分 | 住民税×32% | 人数×1万926円 | − | − | 14万円 | |
介護分 | 住民税×32% | 人数×1万3257円 | − | − | 12万円 | |
大阪府大阪市 | 医療分 | 算定基礎額×8% | 人数×2万23円 | 3万4514円 | − | 51万円 |
支援金分 | 算定基礎額×2.5% | 人数×5849円 | 1万82円 | − | 14万円 | |
介護分 | 算定基礎額×2.2% | 人数×6780円 | 8423円 | − | 12万円 | |
長野県諏訪市 | 医療分 | 算定基礎額×6.7% | 人数×1万5600円 | 1万8100円 | 固定資産税額×23.5% | 51万円 |
支援金分 | 算定基礎額×2% | 人数×5100円 | 6200円 | 固定資産税額×7.7% | 14万円 | |
介護分 | 算定基礎額×1.12% | 人数×3900円 | 3400円 | 固定資産税額×7.5% | 12万円 | |
静岡県浜松市 | 医療分 | 市民税所得割額×164% | 人数×2万7000円 | 2万3000円 | 固定資産税額×15% | 50万円 |
支援金分 | 市民税所得割額×60% | 人数×1万1800円 | 8100円 | 固定資産税額×10% | 13万円 | |
介護分 | 市民税所得割額×55% | 人数×9800円 | 7000円 | 固定資産税額×5% | 10万円 |
※算定基礎額=総所得金額−基礎控除(33万円)。諏訪市の固定資産税額は都市計画税を除く
国民健康保険は全ての人が納める医療分と後期高齢者支援金分、40歳から64歳の人が納める介護分の合計額となっている。例えば東京都千代田区の例を見ると、売り上げから経費を引いた所得金額から基礎控除の33万円を引いた算定基礎額と人数によって決まる。
名古屋市の場合は所得から各種控除を引いた住民税と人数から計算、大阪市の場合は算定基礎額と人数、さらに世帯に対して一定額を上乗せする。諏訪市は固定資産税も対象なので、家持ちの人は賃貸に住んでいる人より増額となる。浜松市は市民税の所得割額と人数、世帯、固定資産税から算出している。というわけで、細かな掛け率や金額の違いを含めると全ての自治体が異なる計算式で算出しているのだろう。
算定基礎額>住民税>市民税所得割額とはなるが、掛け率が6%、120%、164%などと大きく異なっているので、実際に計算してみないとどこの自治体の国民健康保険が高いかは分からない。少し試算してみよう。
条件は独身、生命保険なし、家なし、所得200万円。東京都千代田区の場合は、
- 医療分=算定基礎額×6.13%+人数×3万1200円
→(200万円−33万円)×6.13%+(1×3万1200円)=13万3571円
- 支援金分=算定基礎額×1.96%+人数×8700円
→(200万円−33万円)×1.96%+(1×8700円)=4万1432円
- 国民健康保険=13万3571円+4万1432円=17万5003円
となる。同等な条件で名古屋市の国民健康保険を計算してみよう。所得200万円から基礎控除(33万円)、国民年金(18万円)、2011年の国民健康保険(24万円)を引いた125万円を課税所得。税率10%、均等割と調整控除を含め住民税を12万6500円として計算すると、
- 医療分=住民税×120%+人数×4万11円
→12万6500円×120%+(1×4万11円)=19万1811円
- 支援金分=住民税×32%+人数×1万926円
→12万6500円×32%+(1×1万926円)=5万1406
- 国民健康保険=24万3217円
独身に加え、40歳未満の夫婦+子供1人+家なしで所得350万円、40歳以上+子供2人+家ありで所得400万円の3条件で各自治体の国民健康保険を試算してみた。
地域\条件 | 独身 所得200万円 |
夫婦・子1 所得350万円 |
40歳以上夫婦・子2・家 所得400万円 |
---|---|---|---|
東京都千代田区 | 17万5000円 | 33万6000円 | 51万1000円 |
愛知県名古屋市 | 24万3000円 | 48万円 | 56万1000円 |
大阪府大阪市 | 24万5000円 | 45万5000円 | 63万6000円 |
長野県諏訪市 | 19万円 | 36万2000円 | 52万5000円 |
静岡県浜松市 | 23万8000円 | 44万円 | 54万8000円 |
このように条件、自治体によりかなりの金額差がある。全国を調べると3倍以上の差があるという話も聞くので、個人事業主で引っ越しを考えている人は事前にチェックした方がいい。
サラリーマンの健康保険を計算すると、給与所得控除後の所得200万円(年収311万円)で健康保険の自己負担は14万4926円、所得300万円(年収442万円)で20万5972円、所得400万円(年収567万円)で26万4222円。人数が増えると増額される国民健康保険の場合、妻子持ちの人は倍以上の金額を負担するこというわけだ。
国民健康保険は少し稼ぐとすぐに上限額に達することが多い。多くの地域で年間77万円だが、年間に支払った医療費が10万円を越える人が少ないことを考えると、77万円を払って3割負担よりも支払を拒否して10割負担の方が実際の支払額は半分以下になる。そんなことも考えてしまうほど国民健康保険の負担は重い。
このように社会保険控除の部分は国民年金、国民健康保険ともにサラリーマンと大きな差がある。全般的には年金はサラリーマンの方が負担が多く、健康保険は個人事業主の方が負担が多い。将来のことを考えるとサラリーマンの方が恵まれていると思われる。
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