どうする? サラリーマンの節税:「大増税」時代に備えて(1/4 ページ)
サラリーマンにできる節税はそれほど多くはない。多くはないが、やらないよりやったほうがいいに決まっている。今回は申告書の記載方法や節税の具体的な方法を紹介しよう。
前回は今年から書式が大きく変わった「平成24年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」の記載方法を紹介した。変更点は控除枠の拡大で、上手く利用すれば節税につながる大増税時代にうれしい変更だ。
今回は「平成25年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記載方法とサラリーマンの節税について説明したい。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は3年前まではシンプルだったが、平成22年(2010年)から記載方法が難しくなっている。その後は書式の変更はなく現在に至っている。3年前、平成21年の年末に記載した「平成22年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と今年記載する「平成25年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を見比べて見よう。
Bの欄を比べてみると3年前までの書式は年齢の制限はなく「扶養親族」とだけ書かれていた。現在は「控除対象扶養親族(16歳以上)(平10.1.1以前生)」という表記となった。以前は子供や面倒をみている親などを全て記載すればよかったが、現在は来年(平成25年)の年末の段階で16歳未満の子供はこの欄には記載していはいけない。16歳未満の子供がいる場合は最下段の「住民税に関する事項」に記載することになっている。
3年前に何が起きたのか思い出してみよう。平成21年(2009年)8月の衆議院議員総選挙で政権交代があり、その選挙で勝利した民主党のマニフェストの目玉の1つが「子ども手当」の支給だった。子ども手当はそれまでの児童手当を廃止し、子供1人あたり月額2万6000円(年額31万2000円)を支給するもので、平成22年(2010年)は半額、平成23年(2011年)からは満額が支給されるはずだった。だが平成23年も半額支給となり今年(平成24年)3月で廃止となった。
子ども手当の財源の一部となったのが、16歳未満の扶養控除の廃止だ。扶養控除は子供や親の面倒をみる人の税負担を軽くするためにあり、廃止=増税となる。口の悪い筆者がサラリーマン時代の自分に分かるように翻訳すると、「子ども手当を支給する代わりに、子供のいる家庭から金を巻き上げて財源とする」ということだ。増税額よりも支給額の方が、よほどの高収入でなければ多いのでマイナスになることはないが、大きな声で「1万3000円あげる」と言って、聞こえないような声で「でも6000円払ってね」というのは少々悪意も感じられる。
子ども手当? 児童手当?
子ども手当と16歳未満の扶養控除の廃止(=増税)を時間軸でみてみよう。平成21年の選挙で勝利した民主党は翌年の春、平成22年(2010年)の4月から子ども手当をスタートさせた。それにともない、平成22年の年末調整で提出した「平成23年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」から書式が変更され、平成23年(2011年)の1月から16歳未満の扶養控除の廃止という形で増税が始まっている。約1年半の時差がある住民税は、今年平成24年(2012年)の6月から増税となった。
時間軸を見て疑問を感じた人がいるだろう。子ども手当は2年で終了したが、増税は3年目となる来年も継続されるようだ。筆者は昨年の年末調整の記事で「来年は生命保険料控除の仕組みが変わり、子ども手当の廃止で従来の児童手当に戻れば扶養控除も復活するはずだ。となれば来年の年末調整の2枚の申告書も記入方法が変わると思われる」と書いた。
実際には生命保険に関する部分は変更されたが、扶養控除廃止による増税は継続され書式の変更はなかった。平成22年(2010年)3月までの児童手当が子ども手当に変更され増税となり、平成24年(2012年)4月から新たな児童手当となったが増税はそのまま継続となっている。
以前の児童手当は3歳未満の手当が月額1万円、新しい児童手当は1万5000円に、3歳から小学校修了前は5000円が1万円増額されているので、増税分を差し引きすると課税所得により得する人と損する人がいる。児童手当は所得制限があったり子供の人数により増額があったりと複雑な仕組みだが、子供1人の場合を例に簡単な表にしてみたので参考程度に見ていただきたい。
手当 | 児童手当 | 子ども手当 | 児童手当 | |
---|---|---|---|---|
時期 | 〜2010/3 | 2010/4〜2012/3 | 2012/4〜 | |
月額 | 0〜3歳未満 | 1万円 | 1万3000円 | 1万5000円 |
3歳〜小学校修了前 | 5000円 | 1万円 | ||
中学生 | 0円 | |||
16歳未満の扶養控除 | あり | なし=増税 | なし=増税 | |
所得制限 | あり | なし | あり |
ちなみに子ども手当の見直し(廃止)が決まったときのニュースにはこう書かれている。
野田佳彦財務相は会見で、子ども手当が与野党の政策協議で見直し対象になったことを受け、「扶養控除の見直しとセットで進めてきた経緯があり、それを踏まえた対応をする」と述べ、扶養控除を復活させる可能性を示唆した。
嘘つきではないとのことだが、忘れっぽいのかもしれない。
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