経費を“増やす”方法――個人事業主向けの節税対策を考える:「大増税」時代に備えて(5/6 ページ)
前回まではサラリーマンの人に向けて年末調整の書き方を紹介したが、今回は個人事業主として独立したばかりの人、あるいは近いうちに独立を考えている人に向けて節税方法を紹介したい。ポイントは経費を増やすことだ。
節税の本命、小規模企業共済等掛金控除
これまで説明した控除はサラリーマンと同じ控除だったが、次は個人事業主ならではの節税方法を紹介しよう。個人事業主の節税の本命とも考えられる「小規模企業共済」だ。小規模企業共済は経営者の退職金制度と呼ばれるもので、月額1000円から7万円を掛金として納めると、その年に納めた全額が小規模企業共済等掛金控除として控除の対象となる。
限度額の7万円を掛金として納めれば12カ月で84万円となるので節税効果は高い。掛けたお金は廃業するときに一括や分割で受け取ることができ、個人事業主のための年金や定期預金といった感じだ。税制の優遇が大きいので金利の低い預金よりはメリットは大きい。
課税所得が500万円の人が84万円を納めた場合、所得税の20%、住民税の10%を合わせて30%=25万2千円の節税効果がある。1000円刻みで月額1000円から7万円まで70段階から掛金を選択できるのでもうかり具合によって調整もできる。増額、減額も可能なので業績の変化にも対応しやすい。
実際に、筆者は12月の年払いで掛金を納めている。その年のもうかり具合によって掛金を上げ下げするためだ。12月に年払いをすれば、納めたのは12月から翌年の11月分だが、納めた年に全額を控除できるので節税には最適となっている。
税金にも興味はないし年金にも興味のない人は多いだろう。個人事業主が納める国民年金はサラリーマンが納める厚生年金と比べると極めて少ない。当然、将来のリターンも少なくなる。現在、国民年金は月額1万4980円。年額は約18万円。これは20歳を過ぎた大学生も年収1000万円の個人事業主も同額だ。
サラリーマンが納める厚生年金は収入によって変化する。会社が半額を負担するので個人負担は現在8.383%。会社負担分も含めると16.766%となる。年収500万円の人なら個人負担は年額約42万円、会社負担分も含めると約84万円となり、国民年金の約18万円とは大きな差がある。将来受け取る年金も大きな差となる。
引退後のことを考えるとサラリーマン以上にお金を残しておく必要がある。節税効果だけでなく、年金対策なども考えて小規模企業共済について調べておいた方がいいだろう。
国民年金には任意で上乗せができる国民年金基金がある。国民年金基金も納めた全額が控除の対象となるので節税対策と将来のためになる。
青色申告をしたほうがいい理由
青色申告という言葉は聞いたことがあるだろう。個人事業主は青色申告と白色申告を選択することができる。ザックリ比較すると青色申告はしっかり記帳する見返りとして青色申告控除などの特典が得られるが、白色申告は簡易な記帳で済ませられるが特典が得られないという違いがある。
たいして稼いでいない、複式簿記とか無理、税理士さんにお願いするお金がない――といった場合は白色申告で済ませている人が多いかもしれない。しかし、白色申告に関しては状況が変わろうとしている。
従来は前々年分あるいは前年分の所得が300万円以下であれば記帳義務はなかったが、平成26年(2014年)から所得300万円以下の人も含め全ての白色申告をする人に記帳義務が課せられる。これにより売り上げげ、経費などの年月日、取引先、金額などを記載し残す義務が発生する。
筆者が疑問に感じるのは所得=売り上げ−経費なので、所得300万円以下を把握するためには売り上げと経費を知ることが必要なはず。本来であれば「だいたい経費はこれくらい」では所得が300万円以下なのかは分からないと思われる。ようするに従来は、たいして稼いでいない=どうせ納税額は少ない=だったらどんぶり勘定でいいです、ということだったのが、これからは少し厳しくしますよ、という姿勢の表れだろう。平成26年、消費税の増税と同じタイミングで変更されるのが、さらなる大増税時代の予兆と勘ぐるのは筆者だけだろうか。
おそらく節税を考える規模で事業をしている人、ある程度の規模の事業を目指してこれから起業する人は青色申告を選択するのではないか。青色申告の記帳は簡易簿記と複式簿記に分かれる。簡易簿記の場合は青色申告控除が10万円。複式簿記の場合は65万円となる。ようするに難しい帳簿が記入できたら税金が減るということだ。
PCがない時代には帳簿を作成すること自体が高いハードルだったはず。現在は青色申告ソフトを使えば、筆者のようにまったく簿記を理解していない人でも複式簿記による帳簿の記入、貸借対照表、損益計算書などを作成できる。何も知らず、勉強もせずにできるわけではないが、今回の連載記事が理解できる程度であれば、青色申告ソフトが助けてくれるはずだ。
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