「年功序列は悪!」ではない:ずっと「安月給」の人の思考法(1/2 ページ)
「年功序列型の給料」と聞くと、古臭いとか、実力が反映されないのでやる気がなくなるというイメージを持つ人が多いでしょう。しかし、本当に右肩上がり給料はいけないのでしょうか? アンケート結果をもとに検証してみましょう。
集中連載「ずっと「安月給」の人の思考法」について
本連載は、木暮太一氏著、書籍『ずっと「安月給」の人の思考法』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。
給料の上がる人と上がらない人は何が違うのか。そもそも給料とはどうやって決まるのか。で、どうすれば給料は上がるのだろうか。
「年功序列は悪!」と考えている、「生産性が上がれば、給料も上がる」と期待している、「チャンスはいつまでもある」と思っている、就業規則を読んだことがない、「会社の経費で落ちるか」をいつも気にしている、「人は見かけが9割」を理解していない。
そんな全国のサラリーマンに贈る本書には、いつまでも薄給の「あの人」みたいにならない思考のヒントが満載です。
ベストセラー『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)の著者である木暮太一が、1年の歳月をかけて完成させた渾身の1冊。
著者プロフィール:
木暮太一(こぐれ・たいち)
経済入門書作家、経済ジャーナリスト。
慶應義塾大学 経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学在学中に自作した経済学の解説本が学内で爆発的にヒット。現在も経済学部の必読書としてロングセラーに。
相手の目線に立った話し方・伝え方が「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学・団体向けに多くの講演活動を行っている。
『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)、『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』(光文社新書)、『カイジ「命より重い!」お金の話』(サンマーク出版)など著書多数、累計80万部。
安月給の思考法3.「年功序列は悪!」と考える
「年功序列型の給料」と聞くと、「古臭い」「実力が反映されないので、やる気がなくなる」というようなイメージを持つ人が多いでしょう。特に自分の能力に自信を持っている若手社員からは評判が悪く、「年功序列型給料じゃない会社に行きたい」という声も聞かれます。
しかし、本当に右肩上がり給料はいけないのでしょうか? というより、本当に若手社員は右肩上がり給料を嫌っているのでしょうか?
経済学者の大竹文雄氏が、報酬の推移に関するアンケートを実施しています。その結果、とても面白いことが分かりました。あなたもどれがいいか、考えてみてください。
Q:今後5年でもらえる給料の総額が同じ場合、どのようにもらいたいですか?
1. 緩やかな右肩上がり
2. 急激な右肩上がり(最初が少ない)
3. 期間中、一定
4. 右肩下がり
この調査での1番人気は「緩やかな右肩上がり」で、何と51.7%の人がこれを選んでいます。次に多いのが「一定」で26.5%、その次が「急激な右肩上がり」で15.3%、「右肩下がり」を選んだ人はわずか6.5%でした。
「緩やかな右肩上がり」を選んだ理由として、多くの回答者は、
「必要な生活費の変化に合わせたい」
「生活水準を年々上げていくことは楽しみ」
「年々収入が減少すると仕事への意欲が維持できない」
を挙げています。
繰り返しですが「この5年間でもらえる総額は同じ」としています。もらえる金額は同じなのです。それでも、あらためて問われると最初は少なく、徐々に上がっていくのがいいと答えているわけですね。
じつは、これは経済学で考える「正解」に反しています。この4つの選択肢を経済学的に考えると、「4.右肩下がり」が正解になります。この期間中にもらえるお金が同じだとすると、最初に多く受け取るべきなんです。受け取ったお金は銀行に預けることができ、利子を稼げるからです。
しかし、感情的にはそう判断しません。人間は比較する動物ですから、前より少なければ「減ってしまった」と考え、ガッカリしてしまうのです。
また、右肩上がりを選ぶ理由に「年々収入が減少すると仕事への意欲が維持できない」を挙げているのも注目すべきです。「給料が下がると、モチベーションを維持できない」と感じているわけです。
少しずつでも右肩上がりで増えていくことで、モチベーションを維持できるとしたら、この制度は決して悪くはありません。
実力や成果に基づく給料体系を望んでいる人は、「自分は能力が高いので、給料がどんどん上がっていく」と暗に感じているのではないでしょうか。
実力主義でも、その間給料が上がっていけば「右肩上がり」になります。しかし、その保証はありません。年功序列を嫌い、もし実力主義の会社に行こうとしているのであれば、仮に仕事がうまくいかなくなったときのことを想定したほうがいいかもしれません。
年功序列的な給料体系にも多くの問題があります。しかし、だからといって安易に「実力主義」を求め、完全歩合の企業などに移ってしまうと、金額面でも精神面でも痛い目を見る可能性もあります。
なぜか仕事で成果が出なくなり、給料が下がったときに自分が耐えられるかどうか、立ち止まって考えてみましょう。
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