年末調整の節税効果を検証、サラリーマンの税金を考える:知らなきゃ損するサラリーマン節税(2/5 ページ)
2枚の申告書類で節税できる年末調整。どれだけ税金を安くできるかどうかは受けられる税的優遇の有無で変わってくる。
所得税を計算してみよう
では所得税の計算をしてみよう。計算式を再確認すると、
- 給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
- 給与所得−各種所得控除=課税所得
- 課税所得×税率=所得税
となる。
この式の中で給与所得控除と税率は一定式で決まっているので、収入と各種所得控除が分かれば誰でも所得税を計算することが可能だ。まずは45歳独身で年収600万円、扶養する家族なし、生命保険なしという条件の場合、
- 給与所得控除:600万円×20%+54万円=174万円
- 各種所得控除:38万円(基礎控除)+88万円(社会保険控除)=126万円
- 給与所得:600万円−174万円=426万円
- 課税所得:426万円-126万円=300万円
- 所得税:300万円×10%−9万7500円=20万2500円
となる。
次は同じく45歳年収600万円だが、条件を専業主婦の奥さん、高校生と大学生の子どもを養い、旧制度の一般の生命保険に11万円(控除額5万円)、介護医療保険に8万円(控除額4万円)というものに変更してみる。
- 給与所得控除:600万円×20%+54万円=174万円
- 各種所得控除:38万円(基礎控除)+88万円(社会保険控除)+38万円(配偶者控除)+38万円(扶養控除)+63万円(特定扶養)+9万円(生命保険控除)=274万円
- 給与所得:600万円−174万円=426万円
- 課税所得:426万円−274万円=152万円
- 所得税:152万円×5%=7万6000円
上の2つを比較すると、給与所得は426万円で変わらないが、所得税の納税額は独身の人より約13万円少なくなっている。所得税だけでなく住民税も少なくなるので、次は住民税を計算してみたい。
住民税の計算は簡単で複雑
ザックリ計算すると簡単で、細かく計算すると複雑なのが住民税だ。住民税は所得が増えると納税額が増える所得割の部分と、納税対象者全員が同じ額を納める均等割の部分に分かれている。所得割の住民税の税率は基本的に全国一律10%(市民税6%、県民税4%)。これに均等割の4000円(市民税3000円、県民税1000円)を足す。各種控除額が所得税と住民税で異なるが、それでもここまでの計算は非常に簡単だ。
税率が「基本的に」一律と書いたのは一部例外があるからだ。筆者は名古屋に家があり2013年から神奈川県川崎市にオフィス兼住居を借りている。自宅のある名古屋市の市民税は減税され5.7%(−0.3%)、均等割額2800円(−200円)とやや少なめ。県民税も減税されるはずだったが、県議会の反対で実現されなかった。一方、オフィスのある神奈川県は県民税が4.025%(+0.025%)と全国で唯一、税率が高い県となっている。理屈では名古屋市に住んだほうが住民税が減ることになるが、筆者の所得ではそれほど大きな差はない。
ほかにも財政破綻した夕張市は市民税が6.5%(+0.5%)と高い。沖縄県の金武町は町民税の税率が5.4%(−0.6%)、均等割額が2700円(−300円)に減税されている。これらは全国的に見ると例外で基本的には全国一律と考えていいだろう。
「豊田市はトヨタ自動車があるから住民税が安い」といった話を耳にすることがある。サラリーマン時代の筆者は「へぇ、そうなんだ」くらいに思っていたがこれは都市伝説。豊田市の市民税は普通に6%、均等割額3000円となっている。
さらに、独自に県民税に超過課税を上乗せしている県も多い。およそ30県が県民税の均等割に年間400円から1200円を上乗せしている。名称は「あいち森と緑づくり税」「島根水と緑の森づくり税」「とちぎの元気な森づくり県民税」などとなっていて、環境名目の増税が行われている。
ほとんどの県は5年間の期限付きとしているが、過去に期限の切れたすべての県が延長しているので、隠れた恒常的な増税とも考えられる。県民税の均等割額が1000円を超えている人はお住まいの県が「○○森△△税」を上乗せしていると思ってよいだろう。
さらにさらに住民税の計算を複雑にしているが「調整控除」だ。筆者が日本の税金がつぎはぎだらけと感じる1つの理由がこれだ。所得が多めの人で2500円、少なめな人は数万円を差し引く(控除する)仕組みとなっているが、これがやや複雑で理解するのは難しい。ゆえに今回は説明を割愛する。
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