じょうしは“ゴーレム”のじゅもんをとなえた!:そのひとことを言う前に(2/2 ページ)
人には“相手から期待された成果を出しやすい”という性質があります。うまく使えば、相手の成長を促すことができますが、逆のパターンもあるのはご存じでしょうか。
このようなグチは飲み会で出やすい話題ですが、この話を聞いた人がAさんに内容を伝えるかもしれません。同席していた同僚も、無意識のうちにAさんを見る目が(悪い意味で)変わってしまう可能性が高いでしょう。このように上司本人ではなく、周囲から伝わる情報も、自らの信頼を失うきっかけとなります。
ネガティブな思い込みが悪循環を生む
こうして部下がネガティブな思いをなんとなくでも感じ取ってしまったら最後、部下は上司の「自分が育っていないと思っている」言動を見つけ出して、思いを強めてしまうという悪循環が始まります。
例えばタスクの納期について、上司から質問されたとします。仕事では一般的なコミュニケーションですし、きちんと時期を答えればよい場面ですが、上司に対して信頼がなかったり、部下側が卑屈になっていたりすると、受け取り方が変わってしまいます。
上司: このタスク、納期いつだっけ?
部下: (やべ、仕事が遅いって言いに来たのか……)すみません! すぐに取りかかります!
上司: え? いや、別に今すぐじゃなくていいんだけど……。
“育っていないと思われている”という思い込みがあると、このように「仕事が遅いと暗に言われている」「変に急かされている?」「自分にばっかり細かく進捗確認してくる」など、同じ質問でも責められていると感じたり、言葉の裏を探したりするようになってしまいます。これでは上司も仕事を進めにくいでしょう。
部下を育てるときに大切な心構えを1つ挙げるならば、まず“信じる”こと。こいつは必ずやりとげるだろう、こいつならきっとできる――本当に無責任な人であれば、おそらく出社もしません。出社して席にいる、ということは何らかの思いがあるはずなのです。まずは、上司の自分が信じることから始めてみて下さい。
今回のまとめ
Q:4月以降新しいメンバーに対してさまざまな気遣いをしてきたつもりです。ですが、思ったように育ってくれません。
A:育ってくれない、育たないという気持ちが、相手の成長を妨げる呪文となっているかもしれません。まずは「こいつは育つ」とを信じることから始めましょう。ですが、一定の線引きは必要です。会社の産業医など、専門家の助けを要するケースであれば、上司が無理に手を出すことはありません。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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