何を目指して働くの? イマドキの大学生に聞いてみた:「終身雇用」はお断り?(5/5 ページ)
雇用制度、組織、働き方、キャリア設計が大きく変わろうとする中、今年も2016年度新卒入社の採用がスタートした。デジタルネイティブ世代のイマドキの若者は、“働く”ことを意味をどのようにとらえ、どんな働き方を理想と考えるのか。2人の学生に聞いた。
イマドキの若者像を総括:純粋な「好き・楽しい」が働く動機に
聞き手・吉田氏による総括
今回お話を聞いた2人の学生は、単純に発言だけを追うと対照的に映りますが、その根底には共通する価値観があるなと感じました。
例えば、会社の雇用形態の話題になったときに、徳江くんは「今、終身雇用が約束されている会社ってあるんですか?」と聞いてきました。佐藤さんも「安定した職に就きたい」というスタンスを取りながらも、「最終的にはすべての経験を自分のやりたいこと(バイオサイエンスの分野)に活かしたい」と、将来的の転職が自然に視野に入っています。
「大企業に入って頑張れば一生安泰だ」というマイルストーンが完全に崩壊していることを理解し、それを前提として将来を見すえている若者たちの共通感覚は、現代において真っ当なセンスだと言えるでしょう。彼らに「10年頑張ったら、必ず出世できるぞ」「それまでは歯を食いしばって耐えろ」という一昔前のロジックが通用しないのも当然です。
また、今の若い世代は「目標の捉え方」についても、これまでと違う考えを持っていると思います。
昨年の冬季オリンピックでは、若干15歳にして銀メダルを獲得したスノーボード選手の平野歩夢選手が大きく注目されました。彼は記者にメダルを取れた理由を聞かれた際、力まずにすっと「やりたいことをやっていたら滑れちゃっただけ」と話していましたね。その態度はマスメディアからはそんなに好まれないかもしれませんが、彼自身はきっと自分に正直に答えただけなのだと思います。
これまでは「ある目標に向かって、一途に努力してたどり着こうとする」という姿勢が、人間の正しい生き方のように扱われ、それを忠実に体現したエピソードが“美談”として語られてきました。しかし、実際に人の価値観というものは多様で、誰にとっても“美談”的な生き方が最適なわけではありません。
今回聴講した講演の登壇者たちも、「ある目標を達成するべく、一直線に進んできた」というわけではなく「こっちの方が楽しいし、みんなもハッピーだよね」というようなライトな動機で働いて、その延長線上で起業をしているように見受けられました。そうした純粋な「好き・楽しい」と言ったモチベーションが、「働く・お金を稼ぐ」という行為につなげやすくなっている時代が来ているのでしょう。だからこそ、この「Tokyo Work Design Week」のような“これからの働き方”を考えるイベントに、多くの人が集まるのではないでしょうか。
そして、日本でトップレベルに自由な働き方をしている登壇者たちの価値観を、ごく自然に受け入れられるのが今の若者です。年長者が彼らと分かり合うためには、現代社会における「働き方」がどれほど多様化しているのかを、会社の枠を超えて考えてみる必要があると思います。
聞き手:吉田将英プロフィール
2008年慶應義塾大学法学部卒業後、前職を経て2011年電通入社。電通若者研究部(ワカモン)代表として、若者の生活実態やインサイト研究とそれに基づく顧客体験価値設計に従事。JAAA広告論文・新人賞(2009)、第4回販促会議賞協賛企業賞、他受賞多数。
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