借金すると税金が安くなる?:頼られる人になる「経理アタマ」の鍛えかた(2/2 ページ)
売上や経費が変わればその影響が税金にも現われます。会社の損益を検討するときは、支払わなければならない税金がいくらになるかにも着目しましょう。
売上増加分ほどに利益も増えない
経費が増えた場合で説明しましたが、経費がそのままで売上が増えた場合にも同様のことが起こります。
この例で200万円売上が増えた場合を計算すると、税引前利益が5200万円となります。税引前利益に35%の税率をかけて法人税等を計算すると、1820万円になります。
法人税等を引いた後の税引後利益は3380万円となり、先ほどの経費が200万円増えた場合と逆のことが起こりました。法人税等の負担が70万円増えて、税引後利益が130万円増えることになります。
経費が変わらず売上が200万円増えたからといって、単純に利益が200万円増えることにはならないわけです。法人税等は利益に対して課税される税金ですから、会社の利益が増えたり減ったりしたときには必ず増減が発生することを意識しましょう。
借入によって生じる節税効果とは
さて、借入すると税金が安くなるのは本当かどうかについても検証してみたいと思います。
先ほどと同じ事例で、2億円の借入を行い、その条件が利率3%、年間の利息負担が600万円とします。この場合、利息の600万円が会社の負担となりますので、税引前利益は4400万円となります。
税引前利益に35%の税率をかけて法人税等を計算すると、1540万円になり、法人税等を引いた後の税引後利益は2860万円となります。このように、法人税等の負担が210万円減って、税引後利益が390万円減りました。
利息が600万円増えたからといって、単純に利益が600万円減らないのは、先ほどの経費が200万円増えた場合と同じです。借入をしたことで、利息という経費が600万円増えます。
結果として、法人税等は、600万円×35%=210万円減りました。借入利息も経費の一種ですので、節税効果があるのです。節税効果を考慮して考えると、借入利息の実質負担は390万円となります。利率にすると、実質利率は1.95%です。
このように、節税効果まで考慮して考えると、実額の経費負担と実質の経費負担に差があることが分かります。今後、経営者が無駄な経費を使っていると感じたら、35%値引いた金額をベースに、本当に無駄かどうかについて考えるようにしましょう。
節税効果まで考えると、35%引きで購入した場合と会社の負担は一緒である、と言い換えることもできます。節税効果があれば、無駄だと思う気持ちも少しは軽くなるかもしれません。
また、会社の損益計画を作成する際には、売上経費の増減だけでなく、これらの増減に伴う法人税等の増減の影響(節税効果)も織り込むと、より正しい損益が計算できるようになると思います。
著者プロフィール:佐藤昭一
税理士。税理士事務所勤務、リサイクルショップ経営等を経て2006年佐藤税理士事務所を設立。ITを駆使した生産性向上支援、経理業務効率化等支援が得意。2010年にはAll Aboutプロファイルで人気No.1税理士に。
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