携帯電話も「セキュリティビジネス」の時代:神尾寿の時事日想
携帯電話に感染するウイルスが上陸、携帯電話のセキュリティをいかに守るかは、今後重要な問題になりそうだ。携帯電話ならではという観点で考えると、ウイルス以外にも守るべきセキュリティが思い浮かぶ。
コンピューターウイルスはPCだけのもの、というのは過去の常識になってきた。ここ数日、CabirなどSymbian Series 60搭載機を狙った携帯電話ウイルスの話題が後を絶たない。ボーダフォン「702NK」がCabirに感染したとの報告もあり(3月4日の記事参照)、日本も対岸の火事ではなくなってきたようだ。今後、海外の汎用OSの採用例が増えれば、国産携帯電話も「ウイルスとは無縁」とは言い切れなくなる。
PCの世界では、ウイルス被害や不正アクセスを防ぐためのeセキュリティ市場が着実に成長している。野村総合研究所の資料によると、2009年までに国内のウイルス対策市場は997億円、不正アクセス防止製品市場は305億円まで拡大するという。
携帯電話のウイルス被害は始まったばかりだが、普及台数の多さと高機能化のスピードを鑑みれば、1〜2年で急速に被害事例は増えるだろう。また、携帯電話ならではの被害として、スパイウェアによる情報の抜き取りや、盗難・紛失時の不正利用も考えられる。これらをあわせた携帯電話のeセーフティ市場は決して小さくない。特に携帯電話の法人向け情報サービスが重要度を増す中で、企業向けセキュリティビジネスの可能性は大きい。
一方、コンシューマー市場では、ウイルスや不正利用などの対策とは異なるセキュリティサービスもありそうだ。例えば、子どもやお年寄りなどをワンクリック詐欺や出会い系サイトトラブルから守るサービスが考えられる。この分野では、NTTドコモが公式サイト以外のアクセスを制限する「キッズiモード」というサービスを提供している。
キッズiモードに関しても、極めてセキュリティ効果の高いサービスであるのに、TVや新聞広告などで積極的に宣伝されていないのが実情だ。発信者番号偽装問題(3月8日の記事参照)や、FOMAのTV電話を使ったワン切り対策の時もそうなのだが、キャリアはリスクの公表や周知の徹底には慎重な姿勢であり、それは時として消極的にすら見える。携帯電話関連の犯罪やトラブルは増加している。そこに新たなセキュリティ市場のニーズがないだろうか。
今後も携帯電話はさらに高機能化し、サービス範囲は拡大していく。遠からず、「すべてキャリア任せ」では手に負えないほど、携帯電話のセキュリティ問題が増加する時期が来る。携帯電話向けのセキュリティビジネスは、これから成長していく分野になるだろう。
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