「EZ Book Land!」に見るauコンテンツ戦略の真意:神尾寿の時事日想
音楽配信、ゲームに続き、KDDIが狙ってきたポータルは「電子書籍」だった。電子書籍をトリガーにして書籍業界を活性化させたいというKDDIの、その先の狙いとは?
4月19日、KDDIが「EZ Book Land!」の発表を行った(参考記事1/2)。詳しくはレポート記事に譲るが、これは2年前からKDDIコンテンツ・メディア事業本部長の高橋誠氏が提唱していたマルチポータル、マルチウィンドウ戦略の一環だ。
電子書籍は「音を出さないコンテンツ」であり、携帯電話でのイヤホン利用が発展途上の現在において、映像配信よりも現実的なアプローチだ。auは映像配信サービス「EZチャンネル」の普及に力を入れてきたが、未だ鳴かず飛ばず。音楽、ゲームの次に開拓するステップとして電子書籍を設定したのだろう。
興味深いのは、今回もまた「物販とのシームレスな連携」を打ち出してきたことだ。電子コンテンツから物販につなげるというのは「auRecords」から始まった戦略だが、これが本格化してきた。遠からずゲーム分野も物販に対応するだろうし、将来的には、EZチャンネルのような映像配信とDVD販売を連携させてくる可能性も高い。
auRecords、そして今回のEZ Book Land!を見れば分かるとおり、auはパッケージ販売という物販の上位に、低価格・大量消費型のデジタルコンテンツ販売というレイヤーを被せようとしている。これは新たなプロモーションと販売の連携モデルであり、これまで別々の流通であったデジタルコンテンツと物理パッケージをシームレスに統合するものだ。今どきの言葉を使うなら「通信と物流の融合」である。
ビジネスの革命は流通の革命と同義だ。例えば、ソニーのプレイステーションが任天堂のファミコンを打破できたのは、流通の仕組みを変えて、ここを制したからである。
auのコンテンツメディア戦略は「デジタルの枠組み」を飛び越えようとしている。情報化時代の流通を考える上で、auのコンテンツメディア戦略は重要なケーススタディになる可能性がある。
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