法人“構内”市場をめぐる戦いに本格化の兆し:神尾寿の時事日想
かつての構内PHSを携帯電話に統合しようとするモバイルセントレックスが話題になっている。基地局の設置しやすさ、音声定額という2つの武器を持ってウィルコムが参戦することにより、この流れはさらに速まりそうだ。
5月11日、総務省が一部のPHS基地局および2.4GHz帯無線局を「登録対象無線局」とする省令案を作成。6月8日まで意見募集を行っている(5月11日の記事参照)。
昨年後半からモバイルセントレックス(2004年12月18日の記事参照)など企業の“構内向け”コミュニケーションを携帯電話に統合する動きが盛んだが、今回の省令はそれを加速させるものだ。特にPHS基地局の構内設置が容易になることは、ウィルコムの法人市場戦略にとって重要だ。
先月、筆者はウィルコムの八剱洋一郎社長にインタビューしたのだが、その席でも法人市場の重要性は大きな話題だった。同社は小型・低価格のPHS基地局「ナノセル」を構内に設置することで、携帯電話キャリア各社のモバイルセントレックスに対抗しようとしている。
「(ウィルコム端末同士の)音声定額サービスの発表で予想以上だったのが、法人からの問い合わせの多さです。ナノセルの導入が始まれば、(企業の)構内トラフィックをそのままウィルコム端末同士の通話として定額サービスの範囲内に無理なく納めることができます。さらに屋外でも、音声定額は変わらないわけですから、この点は携帯電話に対する競争力になると考えています」(八剱社長)
ウィルコムのナノセルは今夏以降、登場すると言われている。これと音声定額サービスがセットになることで、ウィルコムが法人市場への攻勢を強めるのは間違いない。法人“構内”市場をめぐる攻防戦は、さらに激しくなっていきそうだ。
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