情報社会の基盤になる3G通信モジュール:神尾寿の時事日想
KDDIに続き、ドコモも無線通信モジュールを3Gへ移行させようとしている。通信モジュールの機能アップによって、世の中にはどんな変化が訪れるのだろうか。
6月1日、NTTドコモが3Gベースの無線通信モジュール「FOMA ユビキタスモジュール」の開発に着手したと発表した(6月1日の記事参照)。従来からある2Gベースの「DoPaユビキタスモジュール」の後継であり、ドコモがモジュール分野でも本格的に3Gへシフトしようとするものだ。
通信モジュールは様々な機器に組み込まれるものであり、携帯電話ビジネスの中であまり目立つ存在ではない。しかし、社会の情報化・デジタル化を進める上で重要な「縁の下の力持ち」であり、その市場は今後、大きく伸びていく。
例えば、電子マネーやクレジットカードなどキャッシュレス決済の普及だ。現在、Edyなど電子マネーサービスは店舗を中心に浸透しているが、キャッシュレスによるコスト削減や事業効率の改善が大きいのは屋外型のビジネスである。
自販機はその一例だが、そのほかにも、宅配便の代引き着払いサービスや、ピザなどのフードデリバリーサービスといった「玄関決済」などが有望である。すでに佐川急便の代引きクレジットカード決済サービス「eコレクト」では、DoPa通信モジュールの内蔵されたハンディターミナルが使われている。
また、ITS分野でも「通信モジュール」のニーズが高い。
中でも有名なのが車載分野で、KDDIの通信モジュールを使うトヨタ自動車の「G-BOOK ALPHA」(4月14日の記事参照)や、いすゞ自動車の「みまもりくんオンラインサービス」(2月25日の記事参照)などが代表的だ。一方、ドコモのDoPaモジュールも、建機や商用車の動態管理を行うコマツトライリンクの「iruk@navi」や国際興業の「ケータイバスロケ」など、商用車分野では広く使われている。
車載以外でも通信モジュールは使われている。その筆頭がコインパーキング分野だ。例えば、パーク24では電子決済やポイントプログラムの実施、駐車場満車空車情報の取得のため、2005年10月期までに全物件をIT駐車場システム「TONIC(Times Online Network & Infomation Center)」に対応させる予定だ。このバックボーン回線として、主にDoPa通信モジュールが使われている。ITSでは、クルマだけでなく、道路とロードサイドのIT化も想定されており、その中で通信モジュールが活躍する場面は多い。
他にも、近い将来、RFIDの普及が始まれば、トレーサビリティや物流・在庫管理で使うハンディターミナルにも通信モジュールが内蔵されるだろう。この分野の潜在市場も大きい。
様々な機器に組み込まれる通信モジュールは、情報社会の基盤になるものだ。KDDIに続き、ドコモもそれを3G化する事により、インフラとしての基本性能が底上げされる。今後の活用範囲はさらに広がるだろう。
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